第29話 ジョイの気持ち

文字数 725文字

「創一郎、心配しないで。私は大丈夫。居場所は言えないけど安全な場所にいるわ」
 シャロンはプリペイド携帯から連絡を入れた。
「わかったよ。そこはどこなんだい?今すぐに会いに行きたい」
 創一郎はシャロンの声を聴いて安心したが会って確かめたいことがある。
「それは無理。ごめん」
 創一郎は不安を募らせ、最近、繰り返す頭痛とめまいで考えがまとまらないでいた。
「どうも記憶が蘇りそうなんだ。親父との一件も……シャロンとのことも」
「そ、そうなの?でも、創一郎、今は待つしかないの。ごめん切るわ。じゃぁ」
 シャロンは創一郎を巻き込みたくはなかった。このままではレイチェルのようにみんなが標的になることだけは避けたかった。

「何かいるものある?」
 ジョイがシャロンの様子を見に来た。
「ええ。そうね、何か食べ物が欲しいわ。なんでもいいわ」
「オッケー!俺が店で何か作るよ。イタリアン?それとも日本食?フレンチ?」
「そんなもの、作れるの?」
 疑いの目でシャロンがにやけた。
「こう見えても、シェフ歴は長いんだぜ。レイチェルも食べられるものがいいね」
 レイチェルは今も奥の部屋のベッドの中だ。
「ありがとう。お願い」
 シャロンは痛む肩を押さえた。
「ラジャー。ところでシャロンは彼氏いるの?」
「えっ、なぜ?」
「その反応ってことは支えてくれる大切な人がいるってことだよね」
 なーんだと言ってジョイは扉を閉め、両手を上げ降参ポーズをしながら、とても残念な口ぶりで部屋を後にした。
 彼はどこかミラーに似ているところが、シャロンには心地よかった。シャロンが幼きころ、ミラー先生のそばにいつもくっついていた男の子がジョイかしらと思い返していた。
 でも、もうひとり男の子がいたような気がしていた。
 


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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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