第14話 生贄
文字数 9,276文字
「お前達は、軽症な奴を探しておいておくれ!できれば、受け答えができる奴を。」
そう僕らに指示を出すと、
「お、おい!」
盗賊達の症状は、どれも同じ様なものだろうと思っていましたが、人によってバラバラでした。
既に、足が黒く変色し始めている者もいれば、まだ赤く腫れているだけの者も。その差は、町の中心地から正門に続く表通りにいた人ほど症状が酷く、表通りから離れた場所にいた人ほど症状が軽い様でした。
「きっと、これをやった怪異は、正門から表通りを通りながら術を発動したのかもしれないな。」
『だとすると、この怪異は、わざわざ近寄らなくても、広範囲にわたって術をかけられるという事ですね。つまり、こうしている間にも、呪術がかけられてしまう危険がある……。』
「ヤベェな……。
けど、そんなヤベェ奴、姿を目にしなくても、邪気がヤベェはずだ。気配に注意しておこうぜ!」
僕らは、正門から一番離れた位置にある民家で、僕らの呼びかけに反応できる中年の盗賊を見つけました。
その中年男性は、箪笥の中を物色している最中に固まってしまった様で、右手にはネックレス、左手には指輪を持っていました。
「俺の声が聞こえてる?」
「うぅ……。」
「痛みは?」
「うぅうぅうぅ……。」
「全く?何も感じない?」
「うぅ……。」
僕は少し安心したものの、直ぐに考えを改めました。だってそれは、痛みで気絶する事ができないという事。意識があるままずっとこの状態で、腐っていく自分の姿を見つめながら死んでいくのです。
「そうか……。……こうなった時、何か見た?」
「うぅうぅ……。…………うぅ、ううううぅ!」
何か訴えたそうですが、何を仰っているのか全くわかりません。
「こうなった時は見てないけど、その前に、怪しい奴を見たって事?」
「うぅ!」
「そいつは、化け物?」
「…………ううぅ…………。うぅ……。」
「え?どっち?」
『化け物に見えなかったけど、今思えば、怪しかったって事でしょうか?』
「うぅ!」
「よし、つまりその化け物は、人の姿をしてたって事か?」
「うぅ!」
「因みに、あんたに霊感は?」
「うぅうぅうぅ……。」
「誰にでも見える、人の姿をした化け物か……。」
「うぅ!」
「男?」
「………う………うぅ……。」
ハイかイイエで答えられる質問を細かく繰り返して分かったのは、この事件を起こした怪異の正体は、人の姿をした20代の男性である事。そして、午前3時に彼はその男性を見かけた。
その後、この家で物色していたら急に動けなくなっていた……。っという事らしいです。多分。
僕らは、
色々と聞きたい所ですが、僕らは、先ほどの得た情報を、村長に報告しました。
「誰にでも見える人の姿の怪異って事は、大物妖怪か、悪鬼だろう。やはり私達の手には負えないね。」
大物妖怪や悪鬼など、力が強い怪異は、霊感がない人にでも見える姿に化ける事ができます。
第六感が鋭ければ、それは人ではないと判断できますが、普通の人では、全く見分けがつかなく、知らないうちに怪異に惑わされている場合が多いので、非常に厄介です。
ほら、よく聞く怪談に、とんでもない美男美女と結婚したものの、実はその正体は怪異で、日増しに精気を吸い取られ、程なくして死んでしまうという話。
「とにかく、大物って分かったんだ。総本山に報告すれば、直ぐに上級以上の妖術士を派遣してくれるんじゃね?」
『そうですね。急いで戻りましょう!』
「って言うかさ、さっきの役人、なんでこの町の人達が腐ってきてるって事言わなかったんだよ?分かってれば、もっと早く調査を終わらせられたのに!」
「建物の中に町の人を移動させてから、一度も中を確かめてないんだろう。ある意味、良い判断だね。」
「何でだよ⁉︎無責任だろ?」
「原因が分からないんだ。下手に、町の中に長居すれば、盗賊達の様に、ミイラ取りがミイラになっちまうかもしれないだろ?
おっしゃる通りです。僕らが安全なんて保証はどこにもありません。こうしている今も。
僕らの足は、自然と足早になりました。
裏路地から、表通りに出た所で、突然、高所に立った様な、下半身がゾワっとする感覚が起こり、一瞬体が硬直してしまいました。
急いで辺りを見渡しましたが、何も視えません。邪気も感じません。ですが、明らかに異様な気配があります。
「あ、あれ……。」
僕もその視線の先を見ますが、その先には噴水広場が見えるだけ。祭りの会場でもあったのか、特に祭りの装飾が派手に施され、屋台がずらりと並んでいます。怪異が起こってなければ、今頃、人がわんさかいて、さぞかし胸踊る光景だった事でしょう。
じっと目を凝らしていると、その噴水広場から、誰かがこちらへ歩いてくるのが見えました。
お役人……でしょうか?
一瞬そう思いましたが、そうでないという事が、直ぐに分かりました。
その人が近づくにつれ、先ほどから感じていた下半身がゾワッとくる感覚が強くなり、全身の鳥肌が逆立ち、嘔吐してしまいそうなぐらいです。
あんなのが人であるはずがありません。あれが、この町を悲劇にした大物怪異でしょう!
『は、は、早く……逃げ……ない……と……。』
「ミツチ、どうしたんだい?!」
恐怖で足がすくみ、腰を抜かしてしまった僕に気づいた
『あ……あの人が、怪異の正体です!に、に逃げないと!』
「え?!」
その人は、普通の人間に見えます。華奢な感じの……中性的な顔立ちの美青年で、変わっているのは、見た事もないような異国風の服に、異国風の顔立ち。
「怪異って……、普通の人に見えるぜ?邪気もねぇし……。」
「そんなのどっちだっていい。とにかく逃げるよ!」
戸惑いながらも
既に、あの怪異の術にかかってしまったのでしょうか?!
「ほらっ!!」
一番近い門は、僕らが入ってきた正門。集中して走りたいのに、背後から怪異が迫ってくるのを、鳥肌が全力で反応してしまい、集中できません。しかも、鳥肌が立てば立つほど脳の司令塔がパニックを起こし、何度も足がもつれそうになってしまうので、上手く走れません。
痛いほど早く脈を打つ心臓が、もう限界だと悲鳴を上げ始めた頃、やっと正門があと100mの所に。
ですが、焦っているせいか、その100mが恐ろしく長く感じます。腹立つ事に、さっき若い役人が、立ち去るついでに、倒していった盗賊達の体が転がっているので、余計走りにくいです。
『わぁぁ!!ご、ごめんなさい!』
なんとか盗賊達を飛び越えたり避けたり、つまづきながら門まで辿り着いた僕らでしたが、なぜか潜り戸が開きません。
押しても引いても無駄でした。どうやら外側から鍵をかけられてしまったようです。
『そんな!』
「開けろ!開けてくれっ!」
「ちょっと誰かいないのかい?開けておくれ!」
僕らは、ドンドンと一生懸命潜り戸を叩きますが、扉が開く気配はありません。
「絶対開けるな!」
「なんかあったんだ!」
扉の向こう側から、そう喚く人々の声が聞こえます。なんと、僕達を見捨てるつもりのようです。この人手なしっ!
背後を振り返ると、人の姿をした怪異が、もう直ぐそこまで。
「村長!なんとかできないのかよ!?」
「坐禅を組むんだ!」
非常に簡単な指示です。訳が分かりませんが。
「神頼みかよ」等と文句を垂れる
僕の中の邪神が現れ、助けてくれないのかな?とも期待しましたが、そんな気配は微塵も無く、 もうダメ!だと覚悟した
所が、人の姿をした怪異は、僕らの直ぐ近くにいるはずなのに、何もしてきません。
指を少し動かしてみますが、まだ動きます。
恐る恐る、目を開け、顔を怪異の方に向けると、怪異は、穏やかな微笑みで僕らを見つめていました。
「ほぉ……。確か其方は、
その怪異は、優しげに
「其方には、恩がある。……
其方だけ
は見逃してしんぜよう。」「え?」
「其方のおかげで、我らは力をつける事ができたのだ。」
怪異は、クククと笑いましたが、
「なんの話でしょう?」
「我らの輩を大事に封印しておいてくれただろ?」
輩?封印?それは、
じゃあ、逃したのは、この人?!だとすると、この人も悪鬼!!
「安心せよ。ここにいるのは我だけだ。」
僕らの考えを読んだ悪鬼は、クスクスと笑うと、自分のお腹を指でさしました。
「ニルフは、我らが大事に食した。」
えっ?!
僕らは、美しい悪鬼の顔を見上げました。
「仲間を喰ったのか?」
「力をつける為には、糧が必要であろう?其方らが、生き物を喰らうように。」
怪異が、他の怪異を喰らうのは知っていましたが、悪鬼は同族を喰らうなんて……。
「まさか、最近、各地で悪鬼や大物怪異の姿が消えてるのって……。」
「我らが食した。崇高な目的の為に。」
「目的?」
「こ、子供達も、見逃して下さい。」
「それは、なりません。崇高な目的を達成するには、大量の生贄が必要なのです。」
「生……贄?」
「それなら、代わりに私の命を奪って下さい。」
「わかりました。なら、一人だけ見逃しましょう。さあ、選んで下さい。」
「そんな!」
『なら、僕の命を奪って下さい。』
「「ミツチ!?」」
僕は、
『大丈夫です。邪神がなんとかしてくれます。』
嘘でしたが、可能性としては賭けてみるしかありません。僕との契約もありますし。
「よかろう。」
悪鬼は、口から紫色の煙を吐くと、僕と
僕は、目を閉じ、姿勢を正して座り直しました。その直後、たちまち体が石化した様に動かなくなり、感覚も消えたかの様に何も感じなくなりました。
頭の中で、邪神に助けを乞いましたが、ピンチなのに何もしてくれません。
「おっおい!ミツチ!」
ごめんなさい。どうやら作戦は失敗です。
悪鬼は、用は済んだとばかりに、スーッと気配を消しました。
「き、消えた!門の扉の中に消えた!」
「何?なんだ?なにがっ⁈わーっ!!!」
「助けて!なんなの⁈きゃーーーーーーーーっ!!!」
「何が起こってる⁈逃げろ!!!」
「ぎゃーーーーーーー!!!」
悪鬼は、門の外にいる大勢を狙った様でした。
「ミツチ、村長!今直ぐ寺へ戻って、助けを呼んでくるからな!
ぜってぇ、腐るなよ!」
塀をガリガリとよじ登る様な音がした後、「直ぐ戻ってくるからな!」っと頭上の方で又
無事に、戻れると良いのですが……。
坐禅をする事で、悪鬼の術を回避する事ができるのかと期待もしていましたが、そんな事もなかった様です。まぁ、坐禅しておけば、安定して、倒される事もないでしょうし、目を閉じてるから、目にゴミや虫が入ってくる心配も無いでしょう。
とはいえ死ぬんですから、そんな心配をしても仕方がないですね……。
“馬鹿者!!“
頭の中で邪神の声がしました。
『あぁ。良かった。早く助けて下さい。』
“無理だ!“
『え?』
“飛天にやられたら、助けられんと言っただろ?だから、早く遠くへ逃げろと忠告したのだ!“
『飛天?悪鬼じゃなくて?』
“飛天も悪鬼も同じだろ?“
『え?いえいえ、悪鬼とは、天人が闇堕ちてなった者の事ですよね?』
“誰がそんな事言った?“
『一般常識?』
“そんなの、人間が勝手に言い出して、勝手に信じてる事だ。
ワシだって、邪神なんかにも水神になんかにも、そもそも神なんかになった覚えはない。人間が勝手にそう呼んでるだけだ。“
『えっ⁈そうなんですか?
……え〜……。じゃあ、神様っていないんですか?』
“それは知らん。言える事は、ワシの種族は、貴様らが思っている様な”神”という存在ではない。
ワシらや飛天は、肉体を持たない生命体なだけで、肉体がないから死なず、ちょっと地上の生物より、強いだけだ。
アリにとっての、人間が飛天で、象がワシらのようなもんだろうな。
という訳で、ワシらに祈っても無駄という事だ。“
『そんな……。
じゃあ、この状況どうしたら良いんですか?』
“自分で考えろ!ワシは、お主が死んだら、お前の魂を取り込み、他の生命体に寄生するか、昔の様に、山に宿ればいいのだから、別に困りはしない。
お主に宿ってやったのは、人間の食い物に興味があったってだけだ。まぁ飲酒とやらを体験せずに死ぬのは無念だが……。“
『そんなのが目的で、僕の体に?』
“それ以外に何が?
初めは、興味などなかったんだが、ワシの憎悪が剣に封印された後、和尚がワシに塩大福をくれてな。それの美味い事美味い事。感動した!!
貴様に宿り、病を治しつつ生かせば、もっと美味い物が食えるぞっそう聞いたから、契約をし、宿ってやったんだ。“
『嘘ですよね?食べ物に釣られて、僕に宿ったんですか?』
“山は、沢山の生き物達を愛でるにも、昼寝にも最高の場所だが、食事ができんのだ。ほら、山には口も舌もないだろ?
山の生き物達が、寿命で亡くなった時、魂を頂く事はあるが、魂には味がないしな。“
『…………魂を頂くって、死んだ魂は、天国に行かないのですか?』
“天国?人が想像して作った土地か?人間とは、想像力豊かだな。
ワシの腹の中が、その天国だと良いな。ワハハハハハハ!!“
色々幻滅しました。
その後も、よほど喋りたかったのか邪神は、持論をあれこれ語っていましたが、後もう少しで死ぬのかと思うと、何も頭に入ってきませんでした。
せめて、死ぬ前に、母方の祖父母に会っておきたかったです。
“あぁ?なるほど、アレがまた生えたから、生贄が大量に必要なのか……。“
突然、邪神が妙な事を言い出しいました。
『え?』
“ほら、見てみろ。アレを。“
そう言われても、目を閉じてるので何も見えません。
『見えませんが……。』
“おぉそうだった。ハハハハ!
いいか、元飛天の国があった場所に、今、巨大な木が生えておる。“
『飛天の国?……それってシャルですか?!大昔に滅んだ?』
“そんな名だったか?人が名付けた名など覚えておらん。“
『いえいえ、ずっと僕の中にいたのなら、それぐらい授業で習ったでしょ?』
“授業?知らん。食う時以外は寝ておったからな。“
『本当に、食べ物にしか興味ないんですね。』
“う、うるさい!とにかくだ、あの巨大な木が現れ、天に届くまで成長し、空を覆い尽くすほどの枝や葉が生い茂り、大輪の花が咲くと、飛天達の母、”聖母”が復活する。そして、聖母によって、この国に天変地異が起きるのだ。“
信じられません。雷梛《らいな》の町で起きている事こそ、既に天変地異に近いのに、更に酷い事が、この国全体を襲うなんて……。
『なぜ、飛天達は、この国に天変地異を起こさせたいのですか?』
“もちろん、飛天の国が滅ぼされたからだろ。その復讐だ。以前にもその話はしただろ!“
『つまり、飛天達は、天変地異をこの国に起こさせたいから、その”聖母”を復活をさせたいと?』
“違う。飛天達は聖母の駒に過ぎん。聖母がこの国に復讐したいから、駒である飛天達が動き回っておるんだ。“
『じゃあ、聖母の意思で、復活していると?』
“そうだ。普段は何をしてんのかは知らんが、ふと復讐を思い出し、気まぐれであの巨木が現れんだろうな。
で、その合図を視た飛天達が、聖母が復活できる様、せっせと生贄を集めておるんだろう。“
『ですが、なぜ、今更復讐を?』
“今更?ワシの話を聞いておらんかったのか?”アレが
また
生えた”と言っただろ?飛天の国が滅ぼされてから、14回はあの巨木が現れておったな。“
『えぇっ!?14回も?』
“気まぐれだと思うのは、定期的ではないからだ。
とにかく、復活し、天変地異が起これば、飛天の国を滅ぼした7つの王家の末裔である長が全て死ぬまで続く。地震や、竜巻やら、洪水やらがな。“
『死ぬまで?7人全員って事ですか?』
“そうだ。“
『その復讐を止める方法は、ないのですか?』
“復讐を止める方法はないが、聖母による天変地異を回避する方法はある。
それと、人間達は、その回避方をとうに解明し、4回目以降からは実行し、回避できておる。“
僕は、胸を撫で下ろしました。なんだ、もう解明されてたんですね。良かった。
『因みに、それはどうやって?』
“7つの王家の末裔である長達を、聖母復活の前に、生贄として捧げる事だ。
聖母の目的は、7つの王家の血筋を根絶やしにする事だからな。“
『えっ?!』
“貴様の親父も、連れて行かれただろ?“
『は?!えっ?!
父が連行されたのは、貴族達の大規模汚職事件を隠蔽する為に、
“フン!それは表向きだろ?
きっとその裁判には、なんやかんや理由をつけて、他の6人も喚ばれてるんじゃないか?
宴会や何かなら、欠席する者もおるだろうが、人生や一族の名誉なんかがかかっておれば、這ってでも出席するだろう。“
『嘘ですよね?!
で、でも、あんな巨大な木が現れたら、裁判だろうが一歩も外から出ないんじゃないですか?まして、国王なんて。』
“あれが視えるのは、第六感が優れた者だけだ。
今頃、あの巨木が視える妖術士や祈祷師共が、大慌てで生贄の儀式の準備をしておるだろう。
現に、和尚もずーっと寺には戻っておらんだろ?“
邪神は、ガハハハっと大笑いをしました。
信じられませんが、そうかもしれません。父だって、裁判さえなければ、刑務所から出る事などなかったでしょう。しかも、暗殺容疑を言い出したのは、確か祈祷師……。
それに、和尚様が、理由も言わず長期出張なんて……、今までなかった事です。
『でも、なぜ、こんな離れた町の人達を生贄に?これから巨木の所へ運ぶのでしょうか?』
“運ぶ必要はないし、場所も関係ない。
原理は、普通の植物と一緒。大量の生贄が朽ちる事で、腐葉土となり、あの木を成長させるのだ。“
『じゃ、じゃあ、
“その通り。もう400年近くも経っておるから、根は、もう全土に広がっておるのではないか?“
『それって、ここ以外でも、町の人達が生贄に?』
“さあな。
おぉ!貴様や、この町の者達が助かる方法を思い出したぞ!“
『なんですか?!』
“ふふん。貴様らの命が尽きる前に、7つの王家の末裔である長達が生贄に捧げられる事だ。“
そんな……。
最後に見た父の姿を思い出してしまいました。この世に絶望し、諦め切った姿を。
祖父の駒として利用され、祖父の罪を背負いずっと投獄され、その挙句、祖先が犯した罪のせいで、生贄にされるなんて……。
『そういえば、僕に、父と一緒に国外へ逃げるように言いましたよね?
それって、どういう意味ですか?
もしかして、生贄が国外へ逃げれば、生贄にならなくてもいいって事ですか?』
“正確にいえば、あの巨木の根が届かない場所だ。
気配が分からなければ、血族が耐えたと判断するだろう。“
『じゃあ、生贄なんか捧げないで、さっさと国外へ逃げさせればいいじゃないですか?!』
“はぁ?何言ってんだ。
人間共は、それを知らぬから、律儀に生贄を捧げておるんだが?“
『なぜ、それを早く教えて下さらなかったんですかっ?!!』
“言っただろ?親父を連れて逃げろって。
詳しく話してやろうと思っていたのに、貴様が話の腰をボキボキ折りまくったから、時間切れとなってしまったんだ!
ったく、これだから反抗期のガキは嫌いなのだ。人の言う事は聞かない、悪い事は全て人の所為。信じらんな〜い。“
むむっ……。
色々反論したい所ですが、言われた通りでもあります。あの時、黙って最後まで話を聞いていたら、生贄の必要はないと伝えられたのに!
早くその事を知らせないと!でも、どうやって知らせたら……?
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