第16話(紀子と両親)

文字数 434文字

 紀子と両親は東京に着いたあと翌日早朝の新幹線で京都の病院に見舞いにいった。
 廊下はマスコミとおぼしき関係者でごったがえしていた。
 婚約発表はしたが紀子の顔はマスコミにはまだ知られてはいない。
 面会謝絶の札が下がっている。
遠い親戚だと告げて病室に入ると点滴につながれて眠っている舟木さんがいた。首や顔に包帯がまかれていた。痛々しい姿だった。
その姿を見るとまた涙があふれてきた。
「舟木さん、紀子です。わかりますか」
そっと声をかけてみた。
父親の栄吉さんが
「今、注射で眠らせておるんです、しばらくそっと・・・」
ほかの事務所関係者も何人かベッドの周りを囲んでいる。誰もが舟木さんのその顔を心配そうに見守るだけだった。
「この度は申し訳ありません。もうなんと言っていいかわかりません。言葉もありません」
父親の栄吉さんは紀子にも紀子の両親にもそう言って何度も頭を下げた。
くしゃくしゃの悲哀に満ちた舟木さんの父親の姿を見て
紀子も母親もまた涙を流した。
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