第５話（紀子の両親）

　紀子の両親は困惑と不安の日々を過ごした。
　会社勤めのサラリーマンである父親は自分の娘をゆくゆくは学歴もあり安定した収入の、人物もしっかりしたサラリーマン男性と結婚させたかった。
　浮き沈みのある芸能人との結婚には反対だった。ましてこのような突然の話。
　娘を交えた家族会議が毎晩のように開かれた。
　だが、紀子はどうしても舟木さんが好きだという。泣きながらそう言う。無理やりにこの話を引きはがそうとすれば娘の気持ちを大きく傷つけかえって大変なことになると両親は考えた。
　最終的には舟木さんとの交際を条件付きで認めざるを得なかった。
　舟木さんの公演の合間をぬってのデートには必ず母親が付き添うという条件だった。
　東京でのデートがほとんどだったが、その際には必ず母親も娘と一緒に上京することにしたのだった。