第6話(夢のようなデート)

文字数 473文字

 夢のようなデート。
 紀子は時々母親と一緒に上京するたびに胸を躍らせ心の中で幸せを嚙みしめていた。
 舟木さんはものすごく忙しい。その合間をぬって紀子のために時間を割いて会ってくれた。ほんの1時間か2時間。
 そんな短いデートもあった。いつもと変わらぬ優しい笑顔で子どもの頃のことやデビューの頃の話、映画の話などを話してくれた。
 紀子はおとなしく真面目な女の子だ。世間の汚れも知らない純真な子だった。
 舟木さんは今まで芸能界のいろんな女の人も知っているはずなのに、どうして自分のようなこんな女学生を好いてくれたのだろう。それは紀子にとっては一抹の疑問ではあった。
 本当はあの噂の女優さんの方が好きなんだろうのに・・・。
 週刊誌に書かれていた舟木さんのゴシップ記事。
 まさかそんなことを口に出して尋ねることなどできはしない。でもきっとあんなのは嘘だ、嘘に決まっている、と紀子は思う。
 ややもするとふと不安でやるせない思いが湧いてくる。疑心暗鬼も生まれるがその後ですぐその思いをすぐにかき消す紀子だった。
 舟木さんを信じる。その思いしか紀子にはなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み