第５話「ふっ、そんな子供だましには騙されませんよ」
文字数 1,491文字
最近ようやく激寒じゃなくなってきたな
寒さに弱いもんな、お前
は？ 弱くねーし！ 苦手なだけだし！
そんなことよりよー魔王、1つ聞いていいか？
あ？ なんだよ
俺思うんだけどさぁ、
「魔王」がいるからにはお約束として「勇者」もいるべきだと思うんだよ
ほー、まあそれはそうだな。つっても勇者いないけどな
そう、それなんだよ。なんでこの世界には勇者がいないんだ？
フッ、そりゃオメー、「勇気ある者」と書いて「勇者」だろ？
俺に勝つ自信と勇気を持った勇者がいないのさ
？ おい、しっかりしろ
ん？ なんだよ
寝言を言い出すからまだ寝てるのかと思った
寝言じゃねーよ！
寝言にしちゃ返事がしっかりしすぎてるだろうが！
俺は本気で言ってんだよ！
はぁ？ 寝言じゃねーってお前、人間の将軍のパンチ一発で沈んでたじゃねーか
あれはまぐれ当たりだ。次やったら俺が余裕で勝つ
本当に実力差があったらどこ殴られても一発じゃやられねぇよ
うるせー！ じゃあ次はお前がやれよ！
ハッ！ 分かったぞ。
魔王が弱すぎるからわざわざ倒そうって気にもならないんじゃ？
んなわけ……ないといいなぁ！
魔王なんか倒したら勇者の名前が汚れるってか。
やつらもなかなか利口だな
んだとコラ！ さっきからケンカばっかり売りやがって！
上等だテメー表出ｒ……
（ｶﾞﾁｬｯ）仕事しろって言ってもやらないの分かってるので、
こっちから仕事持ってきましたー
強行手段！？
書類ここに置いておきますね。やらなかったら晩ご飯抜きです
強行手段だコレ！！
ここまで言い逃れできないともはや清々しいな
待て竜王、まだ諦めるには早い！
そうだ獣王。晩メシを作るのはお前じゃなくシェフの仕事！
そしてそいつらに命令できる立場の最高位は俺だ！
俺が作れと言えば作らざるをえないはず！
魔王様が仕事サボッてるんで、実質仕事を代行している僕の方がみんな命令を聞くと思いますよ
クソッ！
サボるためにこいつに命令権を握らせたのが裏目に出たか！！
たぶん僕が魔王になるって言ったらみんな従いますよ
マジかよ！！？
僕が変な気を起こさない内に仕事をするんですね！
先に終わらせたほうの夕食をカレーにしますよ
（ｼｭﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ）
竜王、クッソはええ！！
本当こういう時は抜け目ないよなお前！？
あ、そういえばさっき話した件、獣王に聞いてみたらどうだ？
ん？ ああそうだな
何ですか？
さっき竜王と話してたんだけどさー、
いわゆる勇者とかっていないのか？
いなくても困らないけどよ
勇者ですか。魔王様は弱すぎるから勇者なんかいらないだろうというのが世論らしいですよ
マジでそれが原因か！！
もうやだ首吊りたい！！
でも最近になって勇者を派遣する動きがあるらしいですね
ほう？
マジか
偵察班が調べていますが、まだ詳しいことは分かっていません。
恐らく経済破綻して軍隊を動かせなくなったので、
代わりに勇者を出そうという事でしょうね
ははあ、勇者なら支度金を渡せば後は勝手に動くから
お財布に優しいってことか。
なるほどな、人間の考えそうなことだぜ
それにしても、
そんなに重要な情報をロクに掴めないとか偵察班は何やってんだよ
偵察は空戦勢の管轄ですが
……
ププッ、また自滅してる
ま、それも今は関係のないことです。
さあ魔王様も仕事してください
ちっ、仕方ないか……
あっ！ あんなところにＵＦＯ……
ふっ、そんな子供だましには騙されませんよ
……の残骸ッ！？
墜落だとっ！？（くるっ）
今だ逃げろーっ！！
あっ！ しまった！！
ついでに俺も逃げろ～っ
結局お前もかい！！ 待てーっ！！
人類への抵抗を投げたというより、単に仕事をサボりたいだけに見える魔王たち。
しかし次回、そんな魔王に試練が訪れ……ないです。
