第7話「ほう、ついに動き出したか」

文字数 1,544文字

魔王様、速報です!
偵察班からの情報によると、ついに勇者が動き出しました!
ほう、ついに動き出したか
ええ、人間の王が命令を出し……いや誰???
獣王、何を言っている? 私の顔を忘れたのか?
いや、バーコード頭のおじさんが上司だった記憶はないですけど。

そんなに強烈な個性だったら忘れるはずないんですけどね

平和ボケして私の顔まで忘れてしまったようだな。

思い出させてやろう。私は先代の魔王

えっ! 先代の魔王様!
思い出したか?
そもそもお会いしたことないですけど
そういえばそうだった気もする
(……面倒くさっ、この人……)
その顔は私を疑っているな。

私が先代魔王ではなくただの不審者だと。そう疑っている顔だ

いや、その……はい
私が先代魔王という証拠はいくらでもある。

例えばこの魔力を見ろ(ズゴゴゴゴゴ)

おおっ!?
そこにいるだけで溢れだす、なんと高い魔力……!
そして現在の魔王、つまり私の息子の事もよく知っている。

例えばあいつはとあるゲームで世界一になったことがあるが、

わずか2日で陥落した

確かに。

あの後ショックで一週間寝込んでたのでよく覚えています。

その事は一生のお願いだから内緒にしててくれ!(特に竜王に)と

頼まれたので、知っている人はごく僅かなはず

そうだろう。

それとあいつは角が2つ生えているが、あれは飾りだ

ええ確かに。100均のおもちゃを買ってきて、

「威厳あるっぽくね? っぽくね?」とか言ってつけてました

さらにあいつは「さすがに強くならないとマズイ」と言って

ダンベルを2つ買ったが、2日どころか1日で飽きた

結局あのダンベル、僕の部屋に置いてるんですよねぇ。

せめて自分の部屋に置いてほしいです

あとあいつは女好きだが、

1度も女性と付き合ったことがないのを気にしているようだ

まああの性格じゃあ……ねえ?
どうだ。これだけ証拠があれば十分だろう
ええ、ごく一部の身内しか知らないことばかりです。
たしかに先代魔王様みたいですね。疑って申し訳ありません。
それで勇者が動いたと言っていたな。その詳細を報告しろ
はい。勇者は先日人間の国を出発し、近くの山に向かっています。

どういうルートを辿ってくるかは不明ですが、

今のところ真っすぐこちらへ向かってきているようですね

なるほど。順調に進めば魔王城まで1~2ヶ月といったところか
そのようですね。

それで、パーティーは戦士、魔法使い、僧侶です。

この辺は無難な構成できましたね

王道だな。それ以外を選ぶ特別な理由がなかったのだろう。

どういう対策を取るつもりでいる?

それを魔王様と詳しくお話するつもりで来たんですが、

今はいらっしゃらないみたいですね

そうだな。今はいないようだ。

フッ、勇者か。百年前の大戦争を思い出して血が騒ぐではないか。

あの時は残虐の限りを尽くし、人間たちを恐怖のどん底に陥れたものよ

先代様、みごとなまでに顔と言動が一致してませんね。

見た目はサエない部長って感じなんですけどね

そうだな。

私を甘く見て挑発し、死んでいった者など星の数ほどいる

甘く見るとか、そういうジャンルの話じゃないんですけどね
(ガチャッ)ういーっす、たらいまーっと
あ、魔王様おかえりなさい。
ええっと、こちらの方って先代魔王様で合ってますよね?
久しぶりだな。もちろん私の顔を忘れたりはしないだろう
ああもう当然当然。忘れるわけないない。当たり前じゃーん!
……
 
 
 
え、誰???
あれっ!?
チッ! バレたか!(ガシャーン)
あ! 窓から逃げた!!
衛兵、えいへーい!!
(シュタタタタタタッ)
すげぇ逃げ足だ
何者だったんですか、あの人……
結局あのおじさんは何者だったのか。再び姿を現す日が来るのだろうか。(たぶんこない)
そしてついに現れた勇者。いったいこの先に何が待ち受けているのだろうか!
次回、それでも何も起こらない。
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登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

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