第7話「ほう、ついに動き出したか」
文字数 1,544文字
魔王様、速報です!
偵察班からの情報によると、ついに勇者が動き出しました!
いや、バーコード頭のおじさんが上司だった記憶はないですけど。そんなに強烈な個性だったら忘れるはずないんですけどね
平和ボケして私の顔まで忘れてしまったようだな。
思い出させてやろう。私は先代の魔王だ
その顔は私を疑っているな。
私が先代魔王ではなくただの不審者だと。そう疑っている顔だ
私が先代魔王という証拠はいくらでもある。
例えばこの魔力を見ろ(ズゴゴゴゴゴ)
おおっ!?
そこにいるだけで溢れだす、なんと高い魔力……!
そして現在の魔王、つまり私の息子の事もよく知っている。
例えばあいつはとあるゲームで世界一になったことがあるが、
わずか2日で陥落した
確かに。
あの後ショックで一週間寝込んでたのでよく覚えています。
その事は一生のお願いだから内緒にしててくれ!(特に竜王に)と
頼まれたので、知っている人はごく僅かなはず
そうだろう。
それとあいつは角が2つ生えているが、あれは飾りだ
ええ確かに。100均のおもちゃを買ってきて、
「威厳あるっぽくね? っぽくね?」とか言ってつけてました
さらにあいつは「さすがに強くならないとマズイ」と言って
ダンベルを2つ買ったが、2日どころか1日で飽きた
結局あのダンベル、僕の部屋に置いてるんですよねぇ。
せめて自分の部屋に置いてほしいです
あとあいつは女好きだが、
1度も女性と付き合ったことがないのを気にしているようだ
ええ、ごく一部の身内しか知らないことばかりです。
たしかに先代魔王様みたいですね。疑って申し訳ありません。
それで勇者が動いたと言っていたな。その詳細を報告しろ
はい。勇者は先日人間の国を出発し、近くの山に向かっています。
どういうルートを辿ってくるかは不明ですが、
今のところ真っすぐこちらへ向かってきているようですね
なるほど。順調に進めば魔王城まで1~2ヶ月といったところか
そのようですね。
それで、パーティーは戦士、魔法使い、僧侶です。
この辺は無難な構成できましたね
王道だな。それ以外を選ぶ特別な理由がなかったのだろう。
どういう対策を取るつもりでいる?
それを魔王様と詳しくお話するつもりで来たんですが、
今はいらっしゃらないみたいですね
そうだな。今はいないようだ。
フッ、勇者か。百年前の大戦争を思い出して血が騒ぐではないか。
あの時は残虐の限りを尽くし、人間たちを恐怖のどん底に陥れたものよ
先代様、
みごとなまでに顔と言動が一致してませんね。見た目はサエない部長って感じなんですけどね
そうだな。
私を甘く見て挑発し、死んでいった者など星の数ほどいる
甘く見るとか、そういうジャンルの話じゃないんですけどね
あ、魔王様おかえりなさい。
ええっと、こちらの方って先代魔王様で合ってますよね?
久しぶりだな。もちろん私の顔を忘れたりはしないだろう
ああもう当然当然。忘れるわけないない。当たり前じゃーん!
結局あのおじさんは何者だったのか。再び姿を現す日が来るのだろうか。(たぶんこない)
そしてついに現れた勇者。いったいこの先に何が待ち受けているのだろうか!
次回、それでも何も起こらない。
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