第24話「おうどうした。俺の顔写真プリントTシャツが完成したか?」 後編

文字数 3,706文字

~前回までのあらすじ~

今回は魔王が誕生日にサプライズを受けることを知った翌日のところから。

細かい部分は前回を読んでいただいて、あとは流れでお願いしまーす。

では本番3秒前。3、2、1、Cue!





~翌日~



(ガチャッ)魔王様、ちょっと良いですか?
おうどうした。俺の顔写真プリントTシャツが完成したか?
ありませんよそんなもの。ちょっと大広間に来ていただけますか?
おっ、やっと……
じゃなくて……なんだ事件でも起きたか?

また勇者の野郎がノコノコ現れたのか

ええ、そうなんです。勇者が魔王城付近をうろついているので、

対策の会議を開きます

よし分かった。行こう
(よしよし、ちゃんと知らないフリをしてやらんとな)




~大広間~




おう。皆集まってるな
おせーぞ
待ちましたよ~
ご機嫌麗しゅう
本日の主役!
桃鬼さん、まだ早いです!
今から何するんでしたっけ? 鍋パーティーでしたぁ?
きーちゃん、今日の趣旨をまだ理解してないぞ
いつものことだろ
何か抜け落ちてるのがきーちゃんの魅力だから問題なし
おっ、今日は珍しく数が多いな。モブまで雁首揃えやがって
モブは一言多いっすよ
魔王様、実は皆さんに集まってもらったのは会議のためじゃないんです
え? どういうことだ?
今日は……魔王様の誕生日です! おめでとうー!!
わー!
おめでとーっ!
おめでとうございますっ!
えっ! 今日って俺の誕生日だったっけ? 完全に忘れてたわー!

うわーびっくりしたよー嬉しいなー!

サプライズプレゼントもありますよ。なんとVRです
VRだと? うおー今欲しかったんだよなーコレ!

めっちゃ嬉しいわーありがとなみんな!

びっくりしました?
いやーすげーびっくりした。普通に会議だと思ってたぜ魔王超ハッピー
魔王様
おうなんだ獣王。褒めて遣わされたいならいくらでも褒めてやるぞっ!
ここまでテンプレです
……
……
へっ??
魔王様、落ち着いて聞いてくださいね
お、おう
妖黄さんからサプライズの計画が漏れたのは、予定通りです
はぁ?
嘘をつくのが苦手なお三方に行かせたらバレるのは分かりきってます
ほ、ほお……
本気でサプライズする気があるなら、

まぁ、まずこの3人は最初の段階で外しますよね?

普通にやるなら、俺か獣王がそれとなく聞き出すだろ
た、確かに獣王らしからぬ人選ミスだとは思ったが
そうです。しかし「欲しいものをそれとなく聞き出す」のって、

案外むずかしいんですよね。なのであえて肉を切らせて骨を断ちました

えっと、つまり……?
我々全員、魔王様がサプライズを知っているということを知ってます。

その上で魔王様がサプライズに騙されたフリをするのを見てました

……
……
……
……






☆★☆サプラーイズ☆★☆
もっと真正面から祝ってくれよ
サプライズにはなったでしょう? 驚いたフリの演技面白かったですよ
すごく頑張ってました!
ドヘタクソでしたね
何で誕生日に敗北感を受けにゃならんのだ、俺は
海王ちゃんの裏表のない賞賛と、きーちゃんの裏表のない罵倒

夢のコラボだな

これでどっちも悪気がないのがすごいと思う
まあそう怒らないでくださいよ魔王様。

あえてサプライズをバラしたのは、その先を隠すためなんですから

その先? ということはまだ……
ええ、ここからが本当のサプライズです。まずはこちらをご覧ください
おうおう、さすが獣王俺の右腕! どれどれ何を見るんだ?
俺だ
お前かい!! 何ならちょっと読めてたわ!

おい獣王、何でこいつがここにいるんだよ!?

魔王の誕生日会に招待し忘れたようなので、こっちから来てやった。

礼には及ばんぞ

前と同じこと言ってるぞコイツ。何でお前は俺の誕生日を知ってんだよ
お前の身近に個人情報流出のスペシャリストがいるじゃろ?
竜王ゴルアァァーッ!!
てへぺろ☆
言ったじゃないですか。勇者が魔王城付近に現れたのでその会議だって
アレはマジかよ!! いらんわそんな伏線回収!! 帰れ勇者!
まあそう言わないでやってくださいよ魔王様。

ちゃんとプレゼントを用意してきたそうなので特別に入れたんです

ほう、プレゼント?
俺の父親が大富豪だという事は知ってるだろう?

お前のために高級なプレゼントを持ってきてやったぞ。感謝しろ

おいおい、勇者にしてはやるじゃねぇか! どんなプレゼントだ
このオダマキの花だ。10万円かけて用意させたものだぞ。

季節外れだから用意するのに苦労したよ

ほうほう。良い色じゃねえか。で、なんでコレを?
花言葉が「愚か」
シバくぞ!! 手の込んだ嫌がらせじゃねーか!!

なんでそんなくだらん事に金使ってんだお前は!

金持ちだから
なんてムカつく野郎だよ! このバカを追い出せ!
はい勇者くん行きましょうね~
お疲れさまでーす
ああちょっと待て! ついでに魔王にリベンジを……
懲りないやつだなあのバカも
で、獣王! サプライズはこれで終わりか?
とんでもない。あの程度で終わりだったらこの獣王の名が折れます
勇者を平然と城に入れる時点でなんかおかしいって気づけ
次がこのサプライズの本命です。竜王さんのご協力の下、

魔王様が1番喜ぶと思うプレゼントをご用意させて頂きました

竜王が関わってる時点で地雷原だろ、分かってんだぞ
あと勇者もちょっと関わってる
じゃあもう信管むき出しみたいなもんだな
いえいえ、きっとお眼鏡にかなうと思いますよ。

モブさん、例のものを

獣王さんまでモブ呼ばわりするのやめてもらえません?

……はい、これっすね。よいしょっと(ドサッ)

えー、箱めっちゃデカいじゃん?

何入ってるかマジで予想つかないんだけど

まあ予想されては困りますからね。開けてみてのお楽しみと――
ガタガタゴトッ
あっヤバイ
おい箱動いたぞ!! 中身生き物だろ絶対!!
そう言わずに。さあオープンザ・ボックス☆
絶対やだ!! ワニとか入ってそう!!
今のはしょうがねえよ。獣王、仕方ないからお前が開けちまえ
~~仕方ないですねぇ、じゃあ開けますよ?
いったい何が出てくるってんだ……
ビリビリ、ビリビリ……
……おおっ!?






……ふぅ、とてもお暑うございました。危うく倒れるところです
……
あ。お初にお目にかかります魔王様。お会い出来て光栄ですわ(ペコリ)
あっ、ご丁寧にどうも……
……
……





えっ誰……?
もしかして説明役こと獣王をお呼びですか?
超お呼びだ。この人間のかわい子ちゃんはいったい誰だよ?

サプライズってどういうことだ?

まあ。可愛いだなんてお言葉、身に余る光栄でございます
めっちゃお上品だし……
実はその方はですね
おう
あなたの彼女候補です
えぇっ!?
そ、そんなバカな!?
妖黄さんはこの話聞いてたはずですよね……?
数週間前に竜王さんのTwitterで「魔王様の彼女マジで募集中!」と

ツイートしたんですが……

本人の断りもなく何やってんだ
数多くの冷やかしDMが届いた中、唯一本気だったのがこの人です。

元々知り合いだった勇者さん経由で竜王さんのアカウントを知り、

竜王さんのツイートから魔王様を知り、恋に落ちたとか

マ、マジにマジ?
マジにマジです。

プロフィールとしては、勇者家と繋がりがある名家の一人娘。

小さい頃から英才教育を受け、その美貌は社交界で注目の的。

……だそうです。家柄その他も文句なしですね

おお……
まあそのお嬢様が何の因果か魔王様に恋してしまったようですが……。

本当に魔王様の事が好きなんですか?

はい。魔王様は私が理想とする男性像そのものですわ
本当に!?
あの女の人は目が腐ってるんですかね?
言いすぎだと思うぞー、きいろー
魔族の王たるそのカリスマ性、にも関わらず民と触れ合う寛大なお心、

ユーモア溢れる仕草、配下から愛される人徳。

良い所をあげればキリがありませんもの

おいおい、めっちゃ俺の良さ分かってんじゃん!

本当に俺の彼女になりたいのか?

ええ、魔王様さえよろしければ、ぜひ

よっしゃ俺にも春が来たぞ!

おまえら喜べ! 俺に彼女が出来る!

ここからさらにサプライズっていうパターンだろ?
ああ、これがドッキリというオチですか
フッ、今は罵声すら耳に入らねえなあ?

……おっと、そういえば君の名前は?

それは魔王様に決めていただきたいんです
へ?
私、親に貰った名前など興味ありませんの。差し出がましいお願いではありますが、それより魔王様に決めて頂く方が嬉しいんです
魔王様の名付けた名前ならたとえどんな名前でも喜んで名乗らせて頂きますわ。魔王様のお側にいさせて頂けるのなら何でもします
私の全てはあなたの物ですわ。朝も昼も夜もあなただけを見ております
魔王様は私を愛して頂く必要はありません。何ならペット扱いでも構いませんわ。それでも魔王様に対する私の愛は不変です
……
さあ魔王様、どうとでもお名付けになってくださいませ。私は――
ヤバい子だった! 俺は逃げるぞ!!
ああ、追いかけっこをするのですか?

分かりました、必ずやご期待に添えるような走りを見せますわ!






……
……
……
……
……
……
……
まぁいいか
お前がさじを投げるなら俺も知らん
こんな娘だとは獣王も予想していなかった模様。でもまあ、いいか。(投げやり)

そんな訳で次回からシーズン2。特にやることは変わらない。

次回……のやつはなぜか応募が0件だったのでランダムで決まります。

なぜ0件だったんだろう。謎は深まるばかりだ……。

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登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

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