第17話「華々しい称号のケツに「彼女募集中」を並べるな」 後編
文字数 5,010文字
~前回までのあらすじ~魔王vsマーク・ハントはなんやかんや試合として成立。
しかし竜王いわく両者ダメージがないので、判定にもつれこむと魔王が不利。
魔王はこの状況をどう覆すのか!
さぁ第3ラウンド! 延長はないので泣いても笑ってもこれが最後!
不利な魔王様はここからどう進め
おっとラウンド開始早々に仕掛けたー!
が、あっさり回避!そして綺麗なカウンター、この試合親の顔より見た光景ですねー!
だな。魔王が勝つにはもう一発逆転のKOしかないだろう。
その秘策があればの話だが……
(くそっ、認めたくないがテクニックは向こうが上だ。
一発でひっくり返せるような技がないと絶対に負ける)
(俺にそんな技は思いつかねえ……。でも獣王は違う。
あいつならこの状況を打開する作戦を知っているはずだ!)
(さぁ獣王教えてくれ。お前なら……
ここまで凌いだ俺にとっておきの作戦を用意しているはずだ!)
\ブンブン ハローユーチューブ ドウモ ヒカキンデース!/
(まだYoutube見てるううううううぅぅ!!! クソッ! スマホ取り上げるんだった!!)
(りゅ、竜王! 格闘技に詳しいお前なら何か作戦が)
(あるわけないよなぁ!! お前に期待した俺がバカだったわなんかごめんな!!!)
(こうなったら自分でどうにかするしかねぇ!
奴らの知恵を借りなくても勝てるってトコを見せてやる!)
うおりゃー!
膝は皆相応に硬い。しっかり当てればハントだろうと効くはず
悪くない選択だ。だがまあ、それで当たれば苦労はない
魔王様、コーナーに追い詰められ、逆に膝蹴りを喰らったー!
追い詰めて魔王が守りに入ったところを膝で打ち砕いたな。
「お手本を見せてやる」と言わんばかりの攻撃展開だ
おっと! 魔王様のカウンターが綺麗に顔面を捉えたー!
……なぜあのパンチを喰らってやり返せる?? すごい防御力だ
ハントもやり返したー! またもや足を止めての打ち合い!
ハントの頭蓋骨は並の大きさではないらしいからな。
しかし、またこの展開か。やはりこの展開では……
手詰まりだな。激しく打ち合ってはいるが勝負アリだ。
両方堅すぎるからずっとこの状態なら無限ループで試合終了
お二人の解説、盛り上げる気がみじんもなくてつまらないですねー!あ、スタッフさんデラックスパフェください
パフェを頼むな。この会場はパティシエでも控えてるのか?
そしてここから魔王は自分の知っている技を出せるだけ出した!
かかと落とし、後ろ回し蹴り…………(他には何も思いつかなかった)。
しかしプロ相手に通用するはずもなく、結局殴り合いで時間は過ぎた。
状況が変わらぬまま、残り30秒を迎える頃……。
(くっそ、ここまで来たら殴り続けてダウンするのを祈るしかねぇ!
次のパンチを受けると同時にカウンターしてやる!)
あーっと魔王様、効いている! 効いているー!
今までとは打って変わって明らかに効いた素振りだー!
ハントはこの機会を逃さない!
魔王様、リング上を逃げまわる! ダサい! ダサすぎるー!
(こ、ここでMPが尽きたか! 残り時間もあと少しという時に!)
何で逃げろって言ってるのにコーナーに追い込まれますかね!!?
ハントの連打が止まらないー!! 魔王様打ち返せない!!
沈むか! このまま沈んでしまうのかー!!
最後に魔王様が一矢報いて試合が終わりました!
勝敗決定は審査員による判定となります!
ラストで打ち返せたのは良かったな。
アレでハントがひるまなければダウンしてたかも
だが、ハントの優勢には変わりない。判定になろうと結果は同じだな
ハァーッ、ハァーッ……。
あぶねえ~、美女の声援がなかったらダウンしてたぜ……
うるせえな。ハァ、ハァ……。
っつーかコレ、どう判定されても負けじゃね?
明日からどうしよっかな……
さあ会場の皆様! ただいま審査員による判定が出ました!
私、妖黄より発表いたしま~す!
おお、ついに勝利が決定するわい!
ジジィもう踊っちゃう!(フリフリ)
では発表します!
審判の兵士Aさん、両選手を並ばせてくださーい!
(ふっふっふっ。正攻法でもなんでもなかったが、
これで魔王は倒した。これなら俺も……)
その落ち着きよう、獣王、お前まさか何かしたのか……?
明らかにおかしいジャッジだろ!
そもそも審査員の顔ぶれが……
魔物が2名、人間が1名! ジャッジが偏っているだろう!
どうなってるんだこれは!!
私はそんな難しいこと知りまっせ~ん!えらい人に聞いてくーださいっ!
桃ちゃんと海王ちゃん、なんかいないなと思ったらあんなトコに
とぼけるな! ルールには
「ジャッジの人数は魔物・人間を公平に割り振る」としたはず。
この振り分けでは人間サイドが不利だろうが!
ええええ何言ってんのお前全然公平じゃないでしょおおお(小声)
「ジャッジの人数は公平に」ですよね? いるじゃあないですか。
人間サイドのジャッジ、4人目がそこに――
審判の
兵士Aさんですよ。当然
審判も「ジャッジ」ですからね。
そうなると審査員と審判、合わせれば綺麗に2:2じゃないですか。
ほら、公平でしょう?
そ、そんなバカなことがあってたまるか!
その提案があっても、我々がその割り振りを受け入れるはずがない!
はあ。と仰っても、特に指摘がなかったのでこれでいいものかと。
ルール元の通りなら審査員は3人ですし
バカなことを、王様!
王様がそんなヘマをするはずがありませんよね!?
ええい、貸せい!
――勇者よ! この件はお主に全て委ねたはずじゃが!?
えっ!? そんなバカな! 俺はハントを連れてくるから
ルール調整をお願いしますと伝えたはず……!
いやー連絡に手違いでもあったんですかねえー。
何事も「ほう・れん・そう」、報告・連絡・相談が大事ですね!
覚えましたか、魔王様?
そ、それよりもじゃ!
将軍よ、お主はこの状況に気づいておったはず!
なぜ何も言ってこなかった?
か、かたじけない。
――王様! 先ほど兵士Bに報告させているはずですが!?
何もなかったのでこのまま進めていいものかと……!
さ、先ほどから申し上げようとしていたのですが、
王様が後にしろと何度も仰るものですから……
――異議は終わりですか?じゃ、続けてもいいですかね……。
(ピンチなのに獣王が冷静な時は、大抵何か企んでんだよな……。
あの時も、あの時もあいつは終始冷静だったし)
なんか解決したっぽいんで、続けま~す!
ジャッジ将軍、勝者マーク・ハント!
試合は惜しくも引き分け! 勝者はつけられませんでした!
しかしそれも当然です。それほど激しい戦いだったのですから!
この試合に勝者をつけようだなんてとんでもない。両方が勝者です!
皆様、素晴らしい戦いを見せた両選手に大きな拍手を!
…………ワアァアァァァーーーーー!!! パチパチパチパチパチパチ!!!
よかったぞ魔王ー! ハントもかっこよかったぞー! 魔王ー! ハントー!
……ふっ。そうだな。お前もナイスゲームだったぜ、ハント!(ガシッ)
お互いが健闘を称え合っています! 今一度大きな拍手をー!
ま、まあ確かに良い試合であったわい!
負けずに済んだしの!
――なわけないでしょう。
今回もコレをダシに貰うもの貰うつもりだったんですよ?
計算外もいいトコです
みんなー! みんなありがとうー!
あっそこの綺麗なお姉さんあとで俺とお茶しない!?
わっ!? 持ち上げるなハント! 興奮してんのは分かったから!!
――ま、これでいいでしょう。魔王様も嬉しそうですし
誰が負け犬だ。今回は引き分け判定だろうが。……が、実質負けなのは事実だ。次は必ず魔王を倒す。覚悟しろよ?
ええ、いつでも挑戦は受け付けてますよ。
それが魔王様のポリシーみたいなので。
次は芝居なんか打たずに正攻法で来ていただけるとありがたいですが
フッ、そこまで知っていたか。察しの通り、足のケガはウソだ
最初から自分自身でリングに立つ気はなかったさ。
ケガしたと偽り、不意打ちでハントを出して動揺させるつもりだった。
ハントの強さなら魔王に十分勝てるはずだったんだがな……
(翠魔に魔法をかけさせてた事は完全な不正だから言わねーのか。
ずるい奴だぜまったく)
いだだだ! ハント、それハグの領域じゃねえ!
……えっ、なに勇者!?
? ああ、いつでもかかってこい! 返り討ちにしてやるよ!
こうして、激しく争った両陣営の試合は幕を下ろしたのだった。
ちなみに、あの実況(妖黄)がバカみたいな発言をしてたのは、
「名勝負だった!」と盛り上げて、ルール問題をうやむやにする流れに不意打ちで持っていく賢さを隠すためのフェイクだったのか?
何の打算もなく実況中にデラックスパフェを頼んでいたきーちゃんだった。
なぜかまた最終回っぽくなってしまったが、特に終わる予定はない。
次回、だが何も起こらない!
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