第8話「ボイパまで出来んのかよ!!?」

文字数 1,959文字

魔王ー!!
元気だったかー!!
うわぁびっくりしたぁ!!
桃鬼(ももおに)じゃねぇか、なんでここに!
それがさー!
聞いてくれよ魔王ー!!
つーかうるせーよ!
静かに話せ! 耳が聞こえなくなる!
あ……そうだよな、ごめんな。うるさいよな。
ここはでっかいから大丈夫かと思って……ごめんな
しまった、コイツこういうメンタルの奴だった!
そこまで気に病むならいっそうるさくしてくれ! 俺が悪かった!
ほんとか!?
じゃあ思いっきりはしゃいでいいのか!
可能な限り抑える方向で頼む
んん……? これくらい?
そうそう。それくらいでいいぞ。
で、なんでここにいるんだよ桃ちゃん
それがさー、勇者と会ったんだよ!
勇者? そういえば鬼が住む場所の近くに向かってたな。
じゃあ勇者たちと戦ったのか?
そう!
そりゃあ勇者たちも運が無かったな。
あいつら、魔族でもトップクラスの腕力を持つ鬼に挑むにはまだ弱すぎたろ?
弱かった!
やはりな。つまり桃ちゃんがここに来た理由は、
勇者をボコボコにしたぞっていう勝利報告だな!
フッ、今日も俺の勘が冴え渡ってるぜ
まけた
そうかやはり負けたかって負けたぁ!!?
ふっとばされた
吹っ飛ばされた!?!!?!?
あはは! 魔王のほうがうるさいぞ!
待て待て待て! 勇者パーティーにはマイク・タイソンでもいるのか!?
どうやったら鬼が吹っ飛ばされんだよ!?
えっとなー、まず勇者たちが来てー
勇者たちが来て?
戦いを挑んでー
鬼どもは喧嘩っ早いな、相変わらず
あたしが殴りかかった!
殴りかかった。それで?
ふっとばされた!
何が起こったか全く分からん
あたしもわからない!
いやいや、間の出来事が重要に違いない。
桃ちゃん、「殴る→吹っ飛ばされる」の間に勇者たちは何かやってたか?
そーいえば、魔法使いが魔法を使ってた
魔法か。そりゃあ桃ちゃんが腕力差で吹っ飛ばされる訳ないだろうしな。何かしらの魔法で吹っ飛ばされたならまだ納得だけども……どんな魔法だった?
うみょーんってなってたー
ははは、わっかんねー。
桃ちゃんは魔法を見てどうしたんだ?
よくわかんないから、殴った!
でもふっとんだ!
ん? 殴りに行って、吹っ飛んで……。
もしかして……反射魔法じゃないか?
桃ちゃんが全力で殴る力を跳ね返されて、それで桃ちゃんが吹っ飛んだんじゃね?
??
ああうん、わかんないよな。ごめんな。
とすると桃ちゃんは自分が打ったパンチの威力でここまで吹っ飛んできたって訳か。どんな威力だよ。
空飛ぶの、たのしかった!
うん……桃ちゃんが楽しかったならもうそれでいいんじゃね?
それより桃ちゃん、これからどうするんだ? 皆の所に戻るのか?
せっかく来たし、ここで遊んでから帰る!
おーそうか。ゆっくりしていけよ。
俺は忙しい身だが、たまには遊びに来てもいいんだぜ
うそつけー! 魔王いつもゲームしてるだろ!
くっ……この容赦無いツッコミに海王ちゃんとの違いを感じる!
でも、生活費はいらない! 自分でかせぐ!
ん? そうか?
メシくらいコックに作らせるんだけどな
HIPHOPで食っていくことにした!
HIPHOP???
ヒップホップ!! YO! YO!
いや、その……「父さん、今日から会社やめてHIPHOPで食っていこうと思うんだ」みたい発言を桃ちゃんから聞くとは思わなかったぞ。桃ちゃんラップなんか出来るのか?
やったことない
…………やめといた方がいいんじゃないかなー??
そんなに言うなら、あたしの実力みせる!
お、おう……
いくぞー? すぅー……
うん
YOYO!
あたしの名前こそ桃鬼!
ライムを届けるぜ心に!
ビートかかったなら音乗り!
どこまでも響かすこの世に!
あれ!? なんか思ってたより上手い!?
ドゥードゥーパカチコパカチコ(プシープシー)
ブンワパ(プシープシー)ブンワパ(プシープシー)
ボイパまで出来んのかよ!!?
YOYO! 来たぜ魔王城!
レペゼンO.N.I 玄人!
桃色が織りなすこの人が飛び出す!
桃鬼 on the microphone! Hey YO!
(間奏)
もういい分かった!
Aメロ入らなくていい! 実力は分かった!
えー、ここからがイイトコなのに
初めてにしてはガッツリ韻踏みすぎだろ……なんだよ「桃色が織りなすこの人が飛び出す」って。たぶんHIPHOPで食っていけるわ桃ちゃん。CD出たら買うからがんばれよ。
ほんとうか?
じゃあさっそくレコーディングしてくるぞ!
またなー!
またなー。

……さて、静かになったことだし、ゲームでもするか。
そろそろ積んでたゲームを消化しないとな
(ガチャッ)魔王様ー、持ってきたんで
「積みゲー」より「積み書類」を消化してくださーい
……俺もHIPHOPで食っていこうかな
はい?
戦争とか起こってなさそうなくらい平和な魔王城!
この空気から一転して、次回こそ一騒動あるのか?
次回、何かが起こらない。
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登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

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