第11話「レコード会社に負けたのかよ俺」 後編
文字数 3,295文字
~前回までのあらすじ~
魔王と獣王を残して魔王軍が全員裏切るという事態。
しかも、裏切った理由はアマゾンギフト券1万円分。
果たして2人はこの状況をどう切り抜けるのか!?
魔王様、ここは彼らの良心に訴えかけてみましょう。
信頼関係ならこちらに一日の長があるはずです
魔王軍のみんな、聞いてくれ!
俺たちは長いあいだ仲間だったじゃないか!
お前たちは忠誠より金を取るようなやつじゃないだろ?
では逆に、勇者より金を渡すことで懐の深さをアピールしてみては
おいおまえら! 俺たちの側についたらアマギフ券2万円分だぞ!
なんたって俺はおまえらを大事にしてるからな!
勇者なんかより金を出すぜ!
なんだと、じゃあこっちは1人あたり5万円分だ!
VRとか買えるぞ! VR!
どうなってんだあいつの資金源は!!何千人いると思ってんだよ!!!
そういえば勇者は裕福な貴族の出身だとか。
情報が定かではないんですが、もし本当なら資金源はそこですかね
くっ……
金持ち強い!そういえば人間の国から受け取った2000億ドルはどこ行った!?
なにぶん大金ですからねぇ。
ドル→円へと換算する作業に思いのほか時間がかかってまして
何でドルで請求したんだよ!!もう打つ手無しじゃねーか!!!
もう万事休すですね。
どっちがより綺麗な土下座を決められるか勝負してみます?
やらねぇよ!ええい、こうなったら力づくだ! やいおまえら!
逆らったら俺のアッパーが火を噴くぞ!
お前のアッパーよりマーク・ハントが打つアッパーの方が10万倍こえーんだよ! 脅したいならお前なんかよりマーク・ハントを連れて来い!
……???なんかよく分からん例えで反論されたぞオイ!
魔王様知らないんですか?
マーク・ハントと言えばK-1のチャンピオンにも輝いている総合格闘家で、43歳となった今もUFCの第一線で活躍し続けるファイターですよ。優勝候補ジェロム・レ・バンナを失神KOさせた一戦やノーガードで打ち合ったレイ・セフォーとの一戦はもはや伝説と
聞いてねえよ! なんで詳しいんだよお前も!えっ知らないの俺だけ!?
とにかく……どうします? もう降参しちゃいますか?
い、いや待て。何か解決法が……あっ! あの手があった!
お、おい勇者! 海王をこっちに引き入れろ!
アレはマーク・ハントに匹敵するくらい怖いぞ!
何、そうなのか? よし……。
海王よ! こっちの陣営に入れば望みの物をなんでもやるぞ!
そうなんですか?
いま桃鬼ちゃんのアルバムが欲しいんですよねー
そ、そんなんで良いのか……桃鬼はレコード会社と契約させる見通しだ、こちらが勝利すればアルバムを売れるぞ!
勇者が勝ったらアルバムだぞ!かいおーもこっちにこい!
海王さん、どうにかこちら側についてやってくれませんかね。
魔王様もこれから真面目にやるので
そう! これからは真面目にやるから! 頼むよ海王ちゃん!
……仕方がないですね、これからは真面目にやってくれますね?
じゃあ成功するかは分からないんですけど、私から説得してみます
裏切った皆さん、よく聞いてください。
私たちは魔王さんに大きな恩があるはずです。
私たちは長年人間との戦いに苦しんできましたが、今代の魔王さんは先代までと違い、無理に戦えとは言いませんでした。その結果、人間の反撃を許してはしまいましたが、私たちは魔王さんのゆる~い態度から「無理に頑張らなくてもいいんだ」という姿勢を学び、すっと気持ちが楽になったはずです
さらに、魔王さんは人望もあります。魔王さんがどういう性格かを知らない人はいないでしょう。つまり、それだけ魔王さんが皆さんと接し、自分がどういう人物かを皆さんに知らせたからです。タメ口で接しても、悪口を言っても本当には怒らない寛容さを持ち合わせている事はよくご存じだと思います
魔王さんが本当に怒ってたら、竜王さんは魔王さんの動画を撮ってツイッターにアップするなんて出来ないはずですよ?
あなたたちは勇者側につくそうですが、人間が私たちの生活を保証してくれますか? 彼らは魔王さんを倒した途端に、私たち魔物を追い出してしまうかもしれません。お金で結ばれた関係なんてそんなものです。私たち魔物を守ってくれるのは、魔族の長たる魔王さんだけなのです。私たちを守ってくれる魔王さんを、他でもない私たちが守るんです。それが本当の信頼関係です
海王さん、素晴らしいお言葉です。
魔王様もしっかり聞いてくださいよ!
今回は魔王さんのゆる~い姿勢が仇となってあなたたちの裏切りを招いてしまいましたが、魔王さんも反省しているそうなので、裏切った自分を許し、心を改めてこちらに戻ってきてください。魔王さんもあなたたちを許してくれるでしょう
私が全員まとめて相手します。死にたい人からかかってきなさい
なっ……お前たちまた裏切るつもりか!?
金ならいくらでも出すんだぞ!
アホか! 魔王城は海に囲まれてんだぞ!
海上の海王を相手にするなんて命がいくつあっても足りねーよ!
金より命! 命は金より重いの!
くっ、完全に想定外だった……。
いや、しかしまだこいつがいるぞ!
うーん、レコード会社……まおー……レコード会社……まおー……
ここで勇者を選んだら、僕たちと敵同士になっちゃいますよ?
よしよし! よく戻ってきた桃ちゃん!
アルバムに俺もゲストとしてフィーチャリングしてやるからな!
ぐっ、相変わらず良いパンチくれるじゃねぇか……っ!
――というわけです。
悪いですが勇者さんにはお引取りいただきましょうかね。
訳あって仲間がここにいないあなたではこの人数は無理でしょう
そういえば勇者、仲間がいないな。
愛想でも尽かされたか? ププッ
むむむ、仕方ない、今回は引き下がろう。
だが覚えていろ魔王! 俺は必ずお前を倒すぞ!
フン、いつでもかかってくるがいい。
挑戦を待つのも魔王の役目だからな!
次はSNSでお前の悪口を広めてやる!
覚悟していろ!
何とかなりましたね。
これからはこんなことのないよう、多少は真面目に頼みますよ?
なんだかんだで見事どうにかした魔王たち。
良い話っぽくなってしまったが、別に最終回じゃないです。
次回、まだ何かが起こらない!
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