第6話「海王ちゃんの優しさが俺を甘やかしてる気がする」

文字数 2,200文字

おーい
竜王ー?
りゅーうーおーうー??
……
んん?
……
海王ちゃーん?
はぁーい(ガチャッ)
なんで毎度トイレの水から出てくるんだ。不潔だとか思わないのか?
だって私水に乗り移って移動してるのに、ここ水場がトイレしかないんですよ
俺がこの場所で呼ぶから悪いのか。なんかそれは申し訳ないな
それで、どうしたんですかー?
うむ。竜王がどこに行ったか知らないか?
さぁ?
ううむ、俺が知らないのを海王ちゃんが知ってる訳ないか。
俺の持っているドラゴンボール全42巻のカバーが全て
外されている件について問い詰めようと思ったんだが
さすが竜王さん! 並々ならぬ努力を感じますね!
海王ちゃん。
奴のクッソくだらん努力を評価する必要は塵ほどもない
ところで、獣王さんが
「もうすぐ勇者が現れるかも」って言ってたけど本当なんですか?
ああ、そうなんだよ。まあ勇者ごとき俺の相手じゃないけどな!
わあ、さすが魔王さんです! 勇者が相手でも物怖じしません!
あったりまえよぉ! 勇者なんてな、軽く2,3発ジャブを入れて、
やつの反撃を華麗にかわしてカウンターの右フック。
よろめいたところに俺の左アッパーがアゴを直撃! これでKOよ!
イメージトレーニングは完璧ですね!
そして意識を失った勇者に俺が回復魔法をかける……
「魔王、なぜ敵である俺に回復魔法を?」
そこで俺がクールに言うのさ。
「フッ、俺は勇気ある挑戦に敬意を払う。
 まだ挑戦する勇気があるならいつでも相手をしてやろう」
敵にも尊敬の念を忘れない魔王さん、かっこいい!
そう。そして魔王は静かに勇者の挑戦を待っている……
だから魔王は働いたりしない。勇者を静かに待つことが仕事なのだ
たしかに!
だが黙って待っていたら暇だ!
だから竜王と喋ったり漫画を読んだりゲームしたり
おやつを食べたりして暇を潰しているのだ!
時間の有効活用もできる男なのさ!
たしかにそうですね。常に働き詰めだと疲れてしまいます!
はっはっは。そうだろう?
ええ!
……
海王ちゃんの優しさが俺を甘やかしてる気がする
そうですか?
ああ、うん、今日確信に至った。間違いねえわ……
それで、勇者一行ってどんな感じなんでしょうね?
うーん、まさか1人で行動したりはしないだろうな。
オーソドックスに4人連れくらいで行動するかなあ
4人連れですか。魔法使いさんとかいたら厄介そうですね
どうせなら胸の大きい女戦士とか連れてきてくんねーかな。
だったら戦闘中も楽しいのによ
はい?
すみません。何も言ってません。本当です。命だけは助けて下さい
……それにしても、勇者一行と私が戦うことってあるんでしょうか
さあ。奴らが海を渡るならそうなるかもな
う~ん、緊張してきました。人間さんを相手にするのは苦手なんですよね
そうなのか?
手加減できなくて……
こ、怖え……可愛いなりして海戦最強だもんな、海王ちゃん
いえいえ、そんなことないですよ。私なんて全然です。
私より強い魔物さんいっぱいいます!
ふーん? じゃあ誰が強いんだ?
…………んん??
海王ちゃんしっかりしろ!! 自分で言い出したんだぞ!?
えーっと、あ、そうだ。
タコのクラーケンさんはすっごく強いですよ!
クラーケン、あの老いぼれか。
たしかにデカいけどそんなに強かったっけ?
ええ。表情が読めないからいつもジョーカーを引かされて……
ババ抜きの強さかよ! 純粋な強さについて聞いてんだよ!
あ、純粋な強さですか。じゃあウンディーネさんとか
ああ、あの女ね。俺やっぱりああいう女と
はい?
言ってない! まだ何も言ってない!
本当です! 下ネタの気配感じ取るのやめて!?
次はないですよ?
はい! 肝に銘じます!
それで、ウンディーネってそんなにだったっけ?
ええ。この前も悪い男に騙されてました
…………
って、「純粋さの強さ」について聞いてるわけじゃねーよ!
「単純な戦闘力の高さ」について聞いてんの!
つーかピュアさに関しても海王ちゃんは負けてないと思うぞ!?
あ、あれ?
単純な戦闘力ですか。いや、もちろん私より強い人いますよ!
……例えば?
…………んん??
まずい、これループするやつだ!
うう~。みんな私のこと強い強いって言いますけど、
そんな実感はぜんぜん沸かないんですよ~……
てっぺん取った奴なんてそんなもんだ。はじめから強くなかった奴なんて特にな。自分が弱かったころに散々負けてるから、まさか今自分が1番強いとは思わなかったりする
まあ、海王ちゃんは元々べらぼうに強かったが
そういうものですかね?
ああ。
とあるゲームで世界一を勝ち取った俺が言うんだから間違いない
さすが魔王さん。言うことが違いますね!
当たり前だろ? 俺は魔王なんだからな。
まぁ、海王ちゃんの胸も下手すれば世界一待ってくれ、口が滑っただけなんだ
はぁ……。
私、そういう下品な人が世界で1番嫌いなんですよ(ゴゴゴゴゴ)
殺気が! 今世界で1番殺気が漏れてるよ!
仕方がないですね、魔王さんにも、
竜王さんと同じ所で頭を冷やしてもらいましょうか(ゴゴゴゴゴ)
えっ!? その口ぶりだと竜王も余計なこと言って海王ちゃんに葬られた感じ!? ここに犯人がいるぞぉー!!
少し、頭冷やそうか
ギャーーーーーーーーーーーー!!!!!

その後、魔王と竜王はトイレに仲良く頭を突っ込んだ状態で発見された。
海王ちゃんにちょっとでもセクハラとか、下ネタな話をしてはいけない。
2人はそう思った。

次回、やはり何も起こらない。乞うご期待!
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登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

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