第6話「海王ちゃんの優しさが俺を甘やかしてる気がする」
文字数 2,200文字
なんで毎度トイレの水から出てくるんだ。不潔だとか思わないのか?
だって私水に乗り移って移動してるのに、ここ水場がトイレしかないんですよ
俺がこの場所で呼ぶから悪いのか。なんかそれは申し訳ないな
ううむ、俺が知らないのを海王ちゃんが知ってる訳ないか。
俺の持っているドラゴンボール全42巻のカバーが全て
外されている件について問い詰めようと思ったんだが
海王ちゃん。
奴のクッソくだらん努力を評価する必要は塵ほどもないぞ
ところで、獣王さんが
「もうすぐ勇者が現れるかも」って言ってたけど本当なんですか?
ああ、そうなんだよ。まあ勇者ごとき俺の相手じゃないけどな!
わあ、さすが魔王さんです! 勇者が相手でも物怖じしません!
あったりまえよぉ! 勇者なんてな、軽く2,3発ジャブを入れて、
やつの反撃を華麗にかわしてカウンターの右フック。
よろめいたところに俺の左アッパーがアゴを直撃! これでKOよ!
そして意識を失った勇者に俺が回復魔法をかける……
「魔王、なぜ敵である俺に回復魔法を?」
そこで俺がクールに言うのさ。
「フッ、俺は勇気ある挑戦に敬意を払う。
まだ挑戦する勇気があるならいつでも相手をしてやろう」
そう。そして魔王は静かに勇者の挑戦を待っている……
だから魔王は働いたりしない。勇者を静かに待つことが仕事なのだ
だが黙って待っていたら暇だ!
だから竜王と喋ったり漫画を読んだりゲームしたり
おやつを食べたりして暇を潰しているのだ!
時間の有効活用もできる男なのさ!
たしかにそうですね。常に働き詰めだと疲れてしまいます!
うーん、まさか1人で行動したりはしないだろうな。
オーソドックスに4人連れくらいで行動するかなあ
4人連れですか。魔法使いさんとかいたら厄介そうですね
どうせなら胸の大きい女戦士とか連れてきてくんねーかな。
だったら戦闘中も楽しいのによ
すみません。何も言ってません。本当です。命だけは助けて下さい
……それにしても、勇者一行と私が戦うことってあるんでしょうか
う~ん、緊張してきました。人間さんを相手にするのは苦手なんですよね
こ、怖え……可愛いなりして海戦最強だもんな、海王ちゃん
いえいえ、そんなことないですよ。私なんて全然です。
私より強い魔物さんいっぱいいます!
海王ちゃんしっかりしろ!! 自分で言い出したんだぞ!?
えーっと、あ、そうだ。
タコのクラーケンさんはすっごく強いですよ!
クラーケン、あの老いぼれか。
たしかにデカいけどそんなに強かったっけ?
ええ。表情が読めないからいつもジョーカーを引かされて……
ババ抜きの強さかよ! 純粋な強さについて聞いてんだよ!
言ってない! まだ何も言ってない!本当です! 下ネタの気配感じ取るのやめて!?
はい! 肝に銘じます!それで、ウンディーネってそんなにだったっけ?
って、「純粋さの強さ」について聞いてるわけじゃねーよ!
「単純な戦闘力の高さ」について聞いてんの!
つーかピュアさに関しても海王ちゃんは負けてないと思うぞ!?
あ、あれ?
単純な戦闘力ですか。いや、もちろん私より強い人いますよ!
うう~。みんな私のこと強い強いって言いますけど、
そんな実感はぜんぜん沸かないんですよ~……
てっぺん取った奴なんてそんなもんだ。はじめから強くなかった奴なんて特にな。自分が弱かったころに散々負けてるから、まさか今自分が1番強いとは思わなかったりする
ああ。
とあるゲームで世界一を勝ち取った俺が言うんだから間違いない
当たり前だろ? 俺は魔王なんだからな。
まぁ、海王ちゃんの胸も下手すれば世界一待ってくれ、口が滑っただけなんだ
はぁ……。
私、そういう下品な人が世界で1番嫌いなんですよ(ゴゴゴゴゴ)
仕方がないですね、魔王さんにも、
竜王さんと同じ所で頭を冷やしてもらいましょうか(ゴゴゴゴゴ)
えっ!? その口ぶりだと竜王も余計なこと言って海王ちゃんに葬られた感じ!? ここに犯人がいるぞぉー!!
その後、魔王と竜王はトイレに仲良く頭を突っ込んだ状態で発見された。
海王ちゃんにちょっとでもセクハラとか、下ネタな話をしてはいけない。
2人はそう思った。
次回、やはり何も起こらない。乞うご期待!
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