第18話「魔王へのリベンジをそんな気軽に思い立つな」

文字数 1,740文字

(バターン)魔王! リベンジに来たぞ!!
えっ勇者!? リベンジ早くね!!?
4日ぶりだな魔王。今日こそはお前を倒してみせる
い、いや待て! 異様にリベンジが早い理由を説明しろ!

あとどうやってここまで警備を突破してきた!?

警備なら「通りまーっす」と言ったら\うーっす/で通してくれた。

異様にリベンジが早いのは、まあ思い立ったが吉日というやつだ。

朝起きて、パン食べて、「今日はリベンジでもするか~」みたいな

魔王へのリベンジをそんな気軽に思い立つな。

そんな気軽な挑戦を成功させるウチの警備もどうかしてるが

まあそう身構えるな。

リベンジとは言うものの、今日は戦いに来たわけじゃない

戦いに来たわけじゃない?

はっ……まさか金に物を言わせて魔王城の敷地を買い取り、

「我々の敷地だ、おまえらは出て行け!」とか言う気か!?

そんな事はさせんぞ!

いや、魔王の日常を観察して情報収集をする気だったんだが……。

そうか、そういう手もあるな

あっクソ! 深読みして余計な作戦流してもたー!!
ま、今日はそういう目的じゃない。

魔王の生活を観察して攻略法を見つけるという趣旨だ

いやいや、何言ってんだよ。

敵がそう宣言してんのにわざわざ見せるわけないだろ?

とっとと帰れっつーの!

おいおい。魔王ともあろうものが日常生活を見られるのが怖いのか?

そこは「観察なぞ好きにしろ! どうせ俺に弱点なぞないわ!」と

魔王らしくどっしり構えるほうが強者感が出るぞ

む……た、たしかに!
それに、魔王を倒そうと試行錯誤する勇者の挑戦を

無下にするなんてお強い魔王様らしくないんじゃないか~?

そ、それもそうだな!

仕方ねえ、俺がウチワがデカいから観察させてやるよ!

デカいのはうちわじゃなくて器で、

うちわがデカくても涼しいだけだと思うが……

さすが魔王だ! お言葉に甘えて観察させてもらおう!

よし、今日は特別に俺のトレーニングを見せてやろう。

この10kgのダンベルを持ち上げる!

ほほう
せーの……ふんっ!
……
……
……
……
……
……~~ッ! いちっ!!

重い!!(ドスンッ)

まだ1回しか持ち上げてないぞ!

というか落とすな! 危ない!

ふーっ、ふーっ、こういうのは日々の積み重ねだ!

毎日何回も持ちあげる必要はない! 休憩だ!

いや、まだ1回しか……うん、そうだな
よし勇者、ゲームやろうぜ! 好きなゲームを選ばせてやるよ
ん? そうか?

じゃあこの赤い兄緑の弟と愉快な仲間たちがレースするゲームで

ほほう王道だな。

勇者よ、もちろんゲームでもお前に負ける気はないからな?

ふっ、言うじゃないか。俺だって同じさ。

俺にゲームを選ばせたことを後悔させてやろう!



~30分後~



よっしゃー! また俺が1位だ!
くっ、また負けた……!
ふふん、コース取り、アイテムの使い方、ドリフトテクニック……。

全て甘い、甘すぎるぞ勇者よ! フハハハ!

なぜだ、なぜ緑甲羅をああも上手く当てられるんだ!?

百発百中じゃないか!

動きが直線だから、遠くの敵に当てようとしても無駄だ。

相手と距離が近い時に使うもんさ

な、なるほど……。くっ、それにしても年季が違いすぎるぞ!
そこまで言うなら、次はスタートから3秒間待ってやろうか?

まあハンデをつけても結果は同じ……

(ガラッ)おっいたいた
ちゃーっす
どもっす!
ん? どうした何人も引き連れて
なんだ獣王か
ええと。お2人は今何を?
ああ、勇者と某レースゲームをやってたんだ。

いま格の違いを分からせてるトコだよ

なるほど。魔王様はあと数日かかってやっと終わる書類が

手元に残ってるはずですが?

う゛っ……
ぷぷっ。仕事もせずにゲームしてたのか
そういう勇者さんは普通に追い出す準備が出来てますが?

警備がザルだったとはいえ、入城許可は出してませんからね

う゛っ……
そんな訳で、どうします? お二方?

警備さんもアップを始めましたよ

殴りまっせ~
蹴りまっせ~
……勇者よ、いいことを教えてやろう。

こういう時俺がとる行動は常に1つだ

……オチが読めてるが、言ってみろ
逃げるんだよォ! 勇者ーーーーッ!!(パリーン)
わあ~ッ!! なんだこの男ーッ(パリーン)
あっ窓から! 待てやコラーッ!!
なぜか勇者と一緒になって逃げまわる魔王だった。

結局勇者は追い出され、魔王は手ひどく叱られたそうな。

次回、何もかもが起これ!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色