第１４話「良い歌詞だと褒めてやりたいがこれレシートだ」
文字数 1,533文字
魔王ー！ 歌詞書けたぞ―！
うおっびっくりした……なんだ桃ちゃんか。やっと歌詞書けたのか？
書けた！ 完ぺきだぞ！
ほほう。「最初の歌詞に納得がいかないから、HIPHOPを一ヶ月聴き漁ってから書く！」って言った時はおいおい大丈夫かと思ったが、その自信だと期待できそうだな
そう！ 一ヶ月前よりかなりスキル磨いた！
これがそれだぞ！（ﾋﾟﾗｯ）
どれどれ、
「卵×20 3720円
ハンドグリップ×2 1980円
バヤリース マスカット 1000ml 108円
合計 5748円」
なるほど。良い歌詞だと褒めてやりたいがこれレシートだ
あ。ついうっかり
しかもこんなに卵を買い占めてどうするつもりだ？
「ロッキー」みたく生で一気飲みしてトレーニングに励むつもりか？
さすが魔王！ よくわかったな！
マ、マジでやるのか……。
しかし桃ちゃん、それ以上強くなってどうするんだ？
ん？ ちがうぞ？
これはMVの撮影に使うやつだ！
ああ、そういうことか。
誰かがトレーニングする風景をMVで使うんだな。
じゃあこのハンドグリップもそういう目的で？
そう！ あたしと魔王が使う分！
なるほど……って、ちょっと待て。
それ俺もトレーニングするってことか？
その流れだと……俺も生卵一気飲みすることになってねぇ？
そうだぞ！
マ、マジか……勘弁してほしいんだけど……。
ちなみにこのバヤリース マスカット味ってのは……？
それはあたしが飲みたかっただけ
飲みたかっただけかい。
まあその件は後でじっくり話すとして、歌詞の方を見せてくれよ
ええと、こっちかな？（ｶﾞｻｺﾞｿ）
「まずはあたしの声聞きな」の方はやめて～
高速ラップを取り入れようと思って～
高速ラップって……どんどん俺のハードル上がってないか？
あんまりスキルの差があると空気になりそうだな
大丈夫だ！ 魔王ならできるぞ！（ｶﾞｻｺﾞｿ）
その謎の信頼が怖いよホント
……（ｶﾞｻｺﾞｿ）
……おい、どうした？
まさか忘れたのか？
……（ｶﾞｻｺﾞｿ）
おい桃ちゃん、マジで忘れてたら
俺は「何しに来たんだよ！ レシート見せに来ただけかい！」って
容赦なくツッコむぜ？
……
……
……
……
……
……
……ご、ごめんね？
うーん、かわいいから許す！
ええと、次は持ってくるからな！
期待するんだぞ！
フッ、期待して待っててやろう。
せっかくだしゲームでもやってくか？
魔王！
お、何だ？
働け
うぐっ、本当ツッコミが容赦ねぇよな……？
よくないぞ～サボってゲームするのは～
くっ……じゃあゲームやらないのかよ？
やる
やるのか
あのう……
あれ？ 翠ちゃんいつの間に
いえ、結構前からいたんですけど、お邪魔しても悪いかなと
ああ、そりゃ待たせて悪かったな。で、どうかしたか？
獣王様、今日帰ってきますよ
早く言えよ！！
やべー今日の仕事終わってねーよ！！
あの、申し訳ありませんがお手伝いとかは出来なくて……
いや、うん、そうだよね分かってる。分かってるけどキツいなこれサボってるのバレたら獣王に何を言われるか
手伝わないぞ
期待してないし分かってるから口に出して言わないでー！
クソ！ ツイッターで調子こいて「お前がいなくても余裕だから
あと1年は帰ってくるな」とか言うんじゃなかった！
魔王様、頑張ってください！
手伝えはしませんが精一杯応援させていただきます！
ありがとう！！ でも気が散るから気持ちだけ受け取るぞ！！
がんばれー！！！
気が散るどころじゃねぇ！ 翠ちゃんこの子どっか連れてって！！
フレー！ フレー！ 魔王様ー！
便乗するなー！！
ああもう仕事が進まねえー！！
誰か助けてー！！
（もう少し待ってから入るか……）
結局この後、獣王が助太刀してどうにか仕事が終わったそうな。
終わった途端にゲーム機を起動する様子に獣王は呆れ顔だったという。
次回、何かが何かして何か！！
