第16話「華々しい称号のケツに「彼女募集中」を並べるな」 中編

文字数 4,399文字

~前回までのあらすじ~

魔王と勇者の一騎打ちがいよいよ始まる、と思いきや勇者はケガで出られず。

代わりで出てきたのは以前名前だけ出てきたマーク・ハントだった。

プロの格闘家相手に魔王は勝てるのか!

さぁ、なんやかんやで舞台は整いました!

戦うお二人に意気込みを聞いてみましょー! まずは魔王様!

勇者と戦えなかったのは残念だが、相手にとって不足はねえ。

大人しく降参するなら今のうちだぜハント?

ハントに挑発ー! これに対してハントはどう返すのか!

あ、スタッフさんマイク

ahh...○×△□※◎,?&%$#*.@¥>♪♭∀.
あっダメだ思った以上に聞き取れねえ!

ご都合主義で言語統一されるかと思ったが全然そんな事はなかった!

あ、自分通訳できますよ。やりましょうか?
おお、モブのくせにやるじゃねぇか。よし通訳頼む
モブは一言多いっすよ。

えーと、ペラペーラ、ペラペーラ?

Oh! ペラペーラ、ペラペーラ!
「降参する気はないよ。正当なギャラをもらって仕事で来てるからね」

って言ってますね

なるほど、さてはあの金持ち勇者が積めるものを積んだか。

しかし俺は魔族、お前は人間。勝ち目はないと思うが?

ペラペラ―、ペララ―、ペロリアーノ?
ペラペラペラー、ペラッペラペラー、ペペロンチーノ
「勝つ自信は半々かな。でも人外と戦う機会は今後ないだろうし、

 自分の全力を出せたらいいと思う」って言ってますね

途中ペペロンチーノとか言ってなかったか?

……なるほどな、謙虚なやつだがやる気は十分らしい

ハントのコメントはいつも謙虚ですからねえ。

相手が魔王様ということもありますし、尚更じゃないですか?

そうか、俺って魔王だったのか……。

ないがしろにされすぎてて危うく忘れかけてたわ、この地位の高さ

一応「全魔族の頂点」ってこと忘れないで下さいね
まあ、やる気があるなら受けて立つぜ。

そろそろ試合を始めようじゃねーか

――はい、お話も終わったようなので、始めちゃいましょー!

皆さん盛り上がる準備は出来てますかー!?


ワアァアァァァーーーーー!!!


おっと獣王、ルールだけもう一度確認させてくれ

全3ラウンド、1ラウンドにつき3分です。延長はなし。

急所攻撃のほか、投げ技・寝技も禁止です。

「パンチ・キック・膝蹴りのみ」と覚えて頂ければ分かりやすいかと。


ダウンを3つ取られると負けなので、倒れないでくださいよ?

※ルール参考はK-1

要するに殴り倒すか、蹴り倒せばいいんだろ?
んっ……まあ、そういうことです! それでOK!
よっしゃ! やってやるぜ!
長らくお待たせいたしました!

これより「魔王 vs マーク・ハント」を開始いたします!

審判は私、兵士Aが務めます。

準備はよろしいですか?

いつでも来い!
OK!
それでは……レディー、ファイッ!


ワアァアァァァーーーーー!!!


シィッッ(シュッ)
(ドゴォッ)ぐえっ(ドサッ)
え?
え?
え?
あーっと魔王様、いきなりダウンーーー!!!
わ、1! 2! 3! 4...
うををををををいっでえ……し、死ぬ……
ま、魔王様落ち着いて立ち上がってください!

ボディーに一発もらっただけです! 死にません!

6! 7! 8...
はっ! や、やべえ!(ガバッ)
9...っと
魔王様、ギリギリ10カウント以内に立ち上がりました!

あやうく開始1秒で勝負が決まりそうでした!

やっぱこうなるか。

魔王もトレーニングはしたらしいが、元々が弱すぎる。

これじゃ立ち上がったところで……だな

だそうです! 結局魔王様のピンチは依然として続いています!

さあ試合再開!

……
(や、やべえ、なんださっきのパンチは!?

 人があんなパンチを打てんのかよ!? あわわわ……)

フンッッ(シュッ)
(サッ)うわっぶねえ!!
ハントが距離を詰める! 魔王様は運よくかわした!

しかし、すっかり逃げ腰だー!

あーこりゃダメだ。戦意もねえ
魔王様! 気合で受けてみてください!

来ることが分かっていればそこまで痛くないはずです!

気合でどうにかなるか!!

あっやべ、コーナーに追い詰められ……

(シュッ)
ギャー!!(ゴッ)……あれっ?
っ!?
んっ!?
おっと魔王様今度は倒れません!

むしろハントが驚いて距離を取っているー!

(な、なんだ? さっきよりそんなに痛くない……。

 さっきのは良いトコに貰っただけで、実は大したことないのか?)

(何だ? さっきと違って、まるで鋼のような筋肉が俺のパンチを弾き返しやがった。これが魔族の肉体だってのか?)
(よし、痛くないなら余裕だ!)おりゃー!
魔王様がここで反撃ー!

しっかり避けられてますが、どうやら勝負にはなるようです!

面白くなってきましたー!


……うおおおおおーーー!!




(……どういうことだ? 魔王にあんな硬さはなかったはず。

 おい獣王、まさかお前が何かやったのか?)

!……
……(チラッ)
(客席の方に目配せ? 客席には……)
……
……
……寝てる??

 ……いや待て、翠魔はこんな時に寝ないはず。ということは)

(翠魔、あいつ……詠唱なしで魔法を唱えてやがる!

 そうか、防御魔法を魔王にかけてんのか)

(詠唱なしで魔法を使うのがそもそも厳しい。

 しかも魔王のぺらぺら紙耐久をあそこまで底上げしてると来た。

 それを試合中ずっとやり続けるつもりか……どんなMP量だよ。

 真面目だけが取り柄かと思いきや、獣王の側近なだけあるな)

(詠唱中に邪魔されないよう、翠魔の隣には海王のかーちゃんか。

 指摘されてもバレないし、邪魔もできねえ。こりゃ鉄壁だな)

(ハントさんには悪いですが、こっちも国がかかってるんですよ。

 ここまで御膳立てしたらあとは魔王様次第ですね)




カァーン!!


1R目が終了ー!

魔王様がダウンを取られたものの、

それ以降は特に見どころもなくまずは1R目を終えました!

特に面白くなかったのでカットされてます!

ここまで周りに配慮しない実況初めて見たわ
うーむ、パンチ力ではハントが圧倒的に上。しかし魔王が想像をはるかに上回る防御力で対抗しているな。防御力のおかげで相手の打撃が怖くないから、その分強いカウンターが打てる。この強さは勇者サイドとしても想定外といったところだ
テメーも何さらっと解説陣に加わってんだ。

ハントのセコンドじゃなかったのかオメーはよ

暇なんだ
帰れもう
ハァーッ、ハァーッ、どうだ獣王、俺打ち合えてるか!?
ええ。打ち合えてますよ。

ちょっとYoutube見てたんでチラッとしか見てないですけど

何さらっと試合中にYoutube見てんだ!!

俺のセコンドじゃなかったのかオメーはよ!!

暇だったんで
帰れもう!!
で、敵のパンチはどうですか?
ああ、なんかあんまり痛くないし、身体も軽いんだ。

トレーニングの成果かな?

そうだと思いますよ。

ダウンを取られて不利ですから、次は積極的に攻めていきましょう

よっしゃ! 行ってくるぜ!
いってらっしゃーい
……
(身体を軽くする効果はないんだけど……脳がバカなのかな?
(獣王のやつ、バカを見る目で魔王を見てやがる)



カァーン!!


さぁ第2ラウン……おっと、魔王様がいきなり攻めていったー!

連続でパンチを浴びせるー!

オラオラオラー!
(ササッ)
うーん全部かわされてますねー!
今日のハントは冷静だな。

殴ってもダメージが少ないからまずは打ち疲れさせようって魂胆か

逆に、魔王のほうはダウンを取られていて不利だからとにかく有効打を増やしておきたいというところだな。今のところ全部空振りだが
お二方マジメすぎて面白くないので黙っててもらっていいですかー?
おい、こいつを選んだ責任者出てこい
解説を黙らせる実況とかアリなのか?
おりゃー!(シュッ)
(ベチッ)……フンッ(シュッ)
(ゴッ)いでっ! にゃろっ!(シュッ)
足を止めての打ち合いになってきました!

が、魔王様の攻撃、あまり効いていない模様!

魔王の猫パンチを受けるのが打たれ強いハントだからな。

ただ、ああ見えてカウンターはしっかり打ってるから、あるいは

フッッ(シュッシュッ)
(ズゴッゴッ)うおっ!?
おーっとここでハントが踏み込んで打っていった!

すごく重そうな連打! 魔王様防戦一方!

このっ……うおりゃっ!(シュッ)
(ゴッ)!?


うおおおおおーーーっ!!!


魔王様もやり返したー! あれだけ打たれてなぜ打ち返せるのかー!

あ、スタッフさんコーヒーください

すげえ打たれ強さだ。

ハントもいまカウンターされると思ってなかっただろうな

竜王が言わなかったから言うが、コーヒーを頼むな。カフェかここは
ありがとうございまーす
用意するなスタッフ
まずっ! あげます
なら最初から注文するな




(……魔王は弱いと聞いていたが、ここまで打たれ強いとはの)
(人間の国の王としてハントを応援するべきじゃが、

 ここまで来ると純粋に試合が面白いわい!)

シィッッ(シュッ)
(メコォ)ぎょわーっ!!
ハントのヒザー! 顔面に炸裂!
うおお! そこじゃハントー! やってしまえー!(ガタッ)
お、王様、あの
ええい黙っとれ兵士B! 今良いトコなんじゃ!
は、はぁ……




さぁ第2ラウンドも残り10秒!

ここまで激しい打ち合いが続いていますがまだ両者ピンピンしている!

はーっ、はーっ……(残り少ないな、仕掛けるか?)
フンッ(バッ)
! (ガシッ)ぐっ……よっし!
!?
魔王様、ハントの足を脇腹に挟んで捕まえたー!
フンッッ(ガバッ)
(ガクッ)(ズオッ)おわっ!?
ズシーン!!
おっと両者同時に倒れこんだ! これはどうか!?
ざわっ
ノーダウン! ノーダウン!
んーお互いダウンではなく滑っただけという判定!

ダウンは取られません!

ハントの足を魔王が掴んだけどハントがもう片方の足でハイキック。

でもハントの体重が重くて、キックが当たる前に魔王が腰を落とした

その結果魔王の頭に蹴りが当たらず、バランスを崩した2人が倒れた。

ハントはあの体重でよくあのキックが打てたな

ま、地に足つけてない蹴りだし当たったところで威力はないけどな
(あっぶねー……足を捕まえて、その間に殴ってやろうと思ったのに)


カァーン!!


うおおおおぉぉーーー!!!
ここでゴング! さぁここまで振り返っていかがでしょうお二方!
激しく打ち合ってはいるが、両方ダメージがない。

このまま行くと1度ダウンを取られてる魔王の負け

右に同じ。客は楽しそうだが、勝負自体は膠着してて動いてない
なるほど! あ、スタッフさんアイスください
「なるほど!」って何も分かってねーだろお前
そしてアイスを頼むな。対局中に昼食を食べるプロ棋士かお前は
ありがとうございまーす
用意するなスタッフ
まずっ! あげます
だからなぜ頼む??
さあいよいよ勝負は運命の第3ラウンドへ!

国を懸けた勝負はいったいどうなってしまうのでしょうか~!

実況が何やらやりたい放題だが、試合自体は真面目に進んでいる模様。

いよいよ第3ラウンド、果たして試合はどちらが制するのか!

次回、予想外の何かが起こらない!

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登場人物紹介

魔王

魔界を束ねる、全ての魔族の頂点。

すぐに諦めちゃう性格。竜王から熱い個人情報の漏洩を受けている。

獣王

獣の王。獣の定義が広いので勢力が最も大きい。

真面目なので魔王の行動に振り回されがちだが、腹黒い一面も。

竜王

竜族の王。空も飛べる(はず)。

何事も面倒くさがり、他人に押し付ける性格。魔王とは古くからの親友である。Twitterではけっこうな数のフォロワーを持つ。

海王

海にいる魔族の王。女……メス。

半スライム的な肉体で、水に溶けたりできる。海で戦ったら勝てない。

素直な性格だが、しょうもない事や下ネタを言ったりすると冷たい目で見られる。一部魔物に好評なまなざし。

桃鬼

鬼。ピンク色の髪をしているので桃鬼と呼ばれている。
通称桃ちゃん。すごい力持ちだが、あんまり頭はよくない。
桃鬼なのにあんまり桃が好きじゃないことを気にしている。

勇者

人間の国が経済破綻したので、代替案として送られた勇者。

その割に、SNSを活用して魔王を追い詰めたりとデキる奴。

海王母

海王の母。氷王という名前を考えているが披露する機会がなさそうな上にこれ肩書き。封印が長かったためか、元々の性格なのか、意思疎通できない時がある。厳かな物言いだが、言ってる内容がズレているのはやはり海王の母といったところか。

翠魔

生真面目なサキュバスという、特徴を最大限相殺していく子。

真面目すぎてボケに回るタイプ。下ネタにも弱いが、海王みたく武力行使はしない。読み方は「すいま」だが睡魔とは一切関わりがない。

妖黄

エルフ。ようきと読み、本人はきーちゃんと呼んでほしいらしい。

笑顔が持ち味。頭が空っぽで、しばしばやってはいけないことを平然とやる。

お嬢様

人間。まだ名無しなのでとりあえずお嬢様という肩書に。

その肩書に恥じない名家の出身で、お上品な性格と言葉遣いの美人。

しかし、ある一点においてのみ他キャラをぶっちぎる狂気性を持つ。

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