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文字数 1,336文字

 村からコフィン国は……。

「徒歩15分ってところか」
「はっ!? 近っ!!」

 時計は持っていないが、高坂がつぶやき、オレがツッコむ。こんな近い場所にあるのに、敵対関係って……。

「コフィン国はどうしてもデイヤの村の鏡石を手に入れたいんだよ。だけどそうはさせねぇ!」
「……そうだよ。この間偵察隊が来たとき、はじめて魔法が効かない防具を手に入れたことを知ったんだ。だからって、鏡石を取られちゃ……ダメだ」

 ウインとヴィーナが熱弁するが、その鏡石が奪われたくない理由ってのが「自分たちの美しさを見られなくなるから」って理由だからなぁ。
 これって、普通ファンタジーの世界だったら、何らかの強力な魔力があって、それで村を守っている……とかそういう設定が付きそうなもんなのに、全然そんな話聞かねぇもんな。
 エルフたちが秘密にしてるとか? いや、そうとも思えないんだよなぁ。実際、鏡石見てなにやってたかっていうと、自分たちの姿を映してクネクネしてるだけだったもんな。

「さ、ここが国の入り口で、一応検問があるから気を引き締めてねっ!」

 シュンが言うと、みんなは上に羽織っていた布をかぶる。一応エルフたちは帽子みたいなものもかぶっているが、耳でバレてしまうからな。そう思っていたのだが。

「みんな! 顔! 顔は特に隠して!! 美しさでデイヤの村の人間だってバレちゃう!」
「あん、それは困っちゃうわね。あっ、聖女ちゃんと下僕くんはそのままで大丈夫よ?」
「こいつら……」
「そういうとこだぞ」

 呆れるオレと、ツッコむ高坂。本当にな。ナルシスト、いい加減にしろ。

 オレたちは旅芸人一行として、検問を通る。だが、オレだけ学生服って……なんか浮かない? 多分この学生服っていうのも、この国のものなんだろうけど、なんでデイヤの村にこの国の学生服なんてあったんだ。まさか……! ハッとする。エルフたちはナルシストだ。だからきっと、コスプレにも興味が……って、そんなことを考えている場合じゃない。

 そうこうしているうちに、大きな門の前に着いた。検問所だ。

 ガタイのいい門番が、オレたちを足止めする。

「お前たち、見かけないが……どこかからの旅人か?」
「はっ、旅芸人一座でございます」

 人間的に見て、一番年上に見えるディディが答える。

「旅芸人か。この国には何のために?」
「ボクたち、この国の芝居を見てみたくって! あと、『ごうかけんらん』なお城も!」

 ショウがわざとらしく子どもっぽく振る舞う。

「ここの国のファッションも気になるのよねぇ。あたしたち、そこそこ服装には気遣うのよ。ねっ?」
「あ、ああ……」

 ネオに振られた高坂も咄嗟に返事をする。

「そうでしたか。では……」

 門番の髭面のおじさんに、これで通してもらえる。そう思ったのは甘かった。

「そちらの我が国の学生は?」
「えっ、オレ!?」

 ヤバい。変に学生服なんて着てるから!! ってか、高坂「お前、何しでかしてんだ」みたいな顔でこっち見んな! エルフのやつらが選んだ服だろっ!!

「彼はこの国の学校の留学生ですよ。制服だけ先に届いたんで」

 ナイス、ディディ! 最年少とは思えないフォローだ。この言葉に門番は納得したようで、オレたちはなんとかコフィン国の入国を許可された。

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