3-4
文字数 1,807文字
「彼女には魔法が通用しないようですね」
「は?」
ナルーと言ったパツキンロン毛エルフ野郎は、不思議そうにあごに手をやった。隣でメシを食っている高坂に、魔法が使えない?
「どういうことだ? ナルーさん」
一応年上っぽいので、敬称を使うオレ。一応年功序列には従いたい。高坂は別だが。メシも恵んでもらっているからな。
「先ほどあなたの動きを止める魔法……アレを彼女にもかけたのですが、まったく通用しなくて。どういうことでしょうか」
「どういうことって、オレに聞かれても……。でも、コトバはわかるようになっただろ? 翻訳の魔法だっけ。高坂にそのまま聞いてみれば?」
「それが……翻訳の魔法も効いていないみたいで」
「そーなの?」
何故だろう? 異世界人だからとか? いや、だとしたらオレだけ魔法が効いているのはおかしい。異世界人だから魔法が通用しないというならば、オレも魔法は効かないはずだ。なんで高坂だけ……。本当に魔法、聞いてないのか?
「なぁ、高坂」
「ん?」
果物がなくなり、隣で固い石のようなパンをかじっている高坂に声をかける。こいつは腹が満たされればなんだっていいのか。
「ナルーさんのコトバ、さっきから聞いてるだろうけど理解してるか?」
「は? 相変わらず何言ってんのかわかんねぇじゃん」
「おめぇ、わかんねぇのに勝手にメシだけ食わせてもらってたのかよ!」
「え? このままだと村を壊されると思って私に降参したんじゃねーの?」
なんだ、こいつ。女王様かよ。まぁ女王様と言えばそうなんだろうけどな。元いた世界でも、こいつに殴られることに快感を求める変態もいたことだし。
「やっぱり魔法効いてねぇのか?」
「おかしいですね……。こうなったら、試させていただきたい」
「試させてって……は?」
ナルーさんは構えると、また何か呪文を唱えだした。
「万物の光となる空に住む身を傷つける風の精たちよ……」
ナルーさんの周りに、小さい竜巻のようなものが現れる。
「おっ、なんだなんだ」
高坂はそれを珍しそうに眺めている。お前、今魔法をかけられようとしてるのに、のんきだな。高坂はオレとナルーさんの会話を聞いていないから、試されることに気づいていない。
オレはナルーさんを止めようとはしなかった。純粋に、高坂は本当に魔法が効かないかどうか、知りたい。物理が強くて、異世界で魔法が通用しないってことは、もしかしたら最強なんじゃないか?
「わが手に集まるかまいたちよ、眼下の敵を捕縛せよ――!!」
ナルーさんが手を高坂のほうへと振ると、イタチのような風の精たちが高坂の周りをぐるぐると回る。
高坂はというと……。
「おい、果物おかわり!」
ダメだ、本当に魔法は効かない。その上ずうずうしいことにおかわりを要求している。
「魔法が効かない人間……困りましたね。こうなったら!」
村人とオレが見守る中、ナルーさんは大きく息を吸った。
「すうっっ……シュォォォォ……」
あっ、なんか見たことある。武術家が本気を出すときの呼吸法だ。マンガで読んだことがある。
「お、おい、何する気だ?」
「魔法が効かない人間……非常に興味深い! 彼女を倒せたら、コフィン国を倒すヒントが得られるかもしれない。彼女には二人分の一食の恩を返すという意味で、死んでもらいます!」
「はぁっ!? ちょ、ちょっと待てよ!」
「コホォォォ……行きますよ」
い、いや、マジで待て! メシをゴチったからひとり殺してもいいなんて、どんな部族だよこいつら!
「高坂、臨戦態勢取れ! 攻撃されっぞ!」
「……あ? っていうか肉はねぇのかよ。まっじぃ野菜の煮物とか、そんなもんしかねぇじゃねぇか」
「お前、わがままばっか言ってるから――」
「火の神よ、焔を司る黒龍の吐息を我と契約し、目前の敵に火球を降らせ! 食らえっ、闇夜の炎魂烈弾 !!」
「高坂ぁぁぁ!!」
空が光り、大きな火球が高坂の真上に落ちてくる。しかし、その火球は高坂に当たる前にパアンッ!! と大きくはじけ飛んでしまった。
高坂はと言うと、平然と何もなかったかのようにメシを食らい続ける。
「……あん? なんか光ったか? ま、いいや。だからさぁ、果物! 若しくはまずくないメシ! サキ、言ってやってよ」
「き、効いてない……? 最高位の魔法が……弾かれた?」
ナルーさんが膝から崩れ落ちる。今のを見ていた村人たちは、余計に騒ぎ出す。
『西東京の魔女』――本当に魔女だった、とか?
「は?」
ナルーと言ったパツキンロン毛エルフ野郎は、不思議そうにあごに手をやった。隣でメシを食っている高坂に、魔法が使えない?
「どういうことだ? ナルーさん」
一応年上っぽいので、敬称を使うオレ。一応年功序列には従いたい。高坂は別だが。メシも恵んでもらっているからな。
「先ほどあなたの動きを止める魔法……アレを彼女にもかけたのですが、まったく通用しなくて。どういうことでしょうか」
「どういうことって、オレに聞かれても……。でも、コトバはわかるようになっただろ? 翻訳の魔法だっけ。高坂にそのまま聞いてみれば?」
「それが……翻訳の魔法も効いていないみたいで」
「そーなの?」
何故だろう? 異世界人だからとか? いや、だとしたらオレだけ魔法が効いているのはおかしい。異世界人だから魔法が通用しないというならば、オレも魔法は効かないはずだ。なんで高坂だけ……。本当に魔法、聞いてないのか?
「なぁ、高坂」
「ん?」
果物がなくなり、隣で固い石のようなパンをかじっている高坂に声をかける。こいつは腹が満たされればなんだっていいのか。
「ナルーさんのコトバ、さっきから聞いてるだろうけど理解してるか?」
「は? 相変わらず何言ってんのかわかんねぇじゃん」
「おめぇ、わかんねぇのに勝手にメシだけ食わせてもらってたのかよ!」
「え? このままだと村を壊されると思って私に降参したんじゃねーの?」
なんだ、こいつ。女王様かよ。まぁ女王様と言えばそうなんだろうけどな。元いた世界でも、こいつに殴られることに快感を求める変態もいたことだし。
「やっぱり魔法効いてねぇのか?」
「おかしいですね……。こうなったら、試させていただきたい」
「試させてって……は?」
ナルーさんは構えると、また何か呪文を唱えだした。
「万物の光となる空に住む身を傷つける風の精たちよ……」
ナルーさんの周りに、小さい竜巻のようなものが現れる。
「おっ、なんだなんだ」
高坂はそれを珍しそうに眺めている。お前、今魔法をかけられようとしてるのに、のんきだな。高坂はオレとナルーさんの会話を聞いていないから、試されることに気づいていない。
オレはナルーさんを止めようとはしなかった。純粋に、高坂は本当に魔法が効かないかどうか、知りたい。物理が強くて、異世界で魔法が通用しないってことは、もしかしたら最強なんじゃないか?
「わが手に集まるかまいたちよ、眼下の敵を捕縛せよ――!!」
ナルーさんが手を高坂のほうへと振ると、イタチのような風の精たちが高坂の周りをぐるぐると回る。
高坂はというと……。
「おい、果物おかわり!」
ダメだ、本当に魔法は効かない。その上ずうずうしいことにおかわりを要求している。
「魔法が効かない人間……困りましたね。こうなったら!」
村人とオレが見守る中、ナルーさんは大きく息を吸った。
「すうっっ……シュォォォォ……」
あっ、なんか見たことある。武術家が本気を出すときの呼吸法だ。マンガで読んだことがある。
「お、おい、何する気だ?」
「魔法が効かない人間……非常に興味深い! 彼女を倒せたら、コフィン国を倒すヒントが得られるかもしれない。彼女には二人分の一食の恩を返すという意味で、死んでもらいます!」
「はぁっ!? ちょ、ちょっと待てよ!」
「コホォォォ……行きますよ」
い、いや、マジで待て! メシをゴチったからひとり殺してもいいなんて、どんな部族だよこいつら!
「高坂、臨戦態勢取れ! 攻撃されっぞ!」
「……あ? っていうか肉はねぇのかよ。まっじぃ野菜の煮物とか、そんなもんしかねぇじゃねぇか」
「お前、わがままばっか言ってるから――」
「火の神よ、焔を司る黒龍の吐息を我と契約し、目前の敵に火球を降らせ! 食らえっ、
「高坂ぁぁぁ!!」
空が光り、大きな火球が高坂の真上に落ちてくる。しかし、その火球は高坂に当たる前にパアンッ!! と大きくはじけ飛んでしまった。
高坂はと言うと、平然と何もなかったかのようにメシを食らい続ける。
「……あん? なんか光ったか? ま、いいや。だからさぁ、果物! 若しくはまずくないメシ! サキ、言ってやってよ」
「き、効いてない……? 最高位の魔法が……弾かれた?」
ナルーさんが膝から崩れ落ちる。今のを見ていた村人たちは、余計に騒ぎ出す。
『西東京の魔女』――本当に魔女だった、とか?