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文字数 2,304文字
「っていうか、わざわざ聖女を召喚するほどのことだったのか?」
デイヤの村に帰るとオレたちをナルーさんと村人が宴で迎えてくれる。だけど、わざわざ聖女なんて存在、必要だったのだろうか?
「この世界には『アルミ箔』なんて存在や5Gの都市伝説なんてないだろ?」
「そりゃそうだけど……」
オレと高坂は今日は壇上に座らされている。そして、5人のエルフたちは今日もクネクネ踊っている……。
「聖女のお姉ちゃんのおかげで、ボクらの魔法がまた使えたから感謝だね」
「本当に感謝してるよ、お嬢さん」
「まっ、これでデイヤの村の平和は守られたってことだ!」
「……ありがと」
「ほーんと感謝よねぇ!」
「……と、いいつつ、お前らの持っている武器はなんだ?」
高坂は後ろを見ずにそう言った。オレは急いで振り向く。マジだ。こいつら、恩人に刃を向けてる!?
「おいっ、何してんだよ! オレたちは村を救った救世主だろ!?」
「その救世主たちを殺さないと☆だって、ボクらの魔法が使えない相手だよ? この村を乗っ取ろうとするかもしれないし~」
「……人間だしね」
「シュンはともかくヴィーナまで!? お前らっ……」
呆れてものが言えなくなるが、エルフたちを前に高坂は動じない。
「……サキ、やるぞ」
「やるって!? オレ、魔法が……」
「んなもん関係ねぇよ! もう1回ボコらねぇとわからんみたいだからなぁ!」
「マジかっ!」
オレはさっと頭を下げる。ディディの槍が頭を突いてきた。くっそ、こいつら本気かよ!
「ナルーさん! 止めてよ!」
「ですが、あなた方は最悪を呼び寄せる……かもしれない」
「『かもしれない』で殺そうとするな!」
「せいっ!!」
ウィンのナックルが頬をかすめる。あーもう、こいつらはぁっ!!
一度寝転がって、そこから腹筋を使い立ち上がると、すぐにファイティングポーズを取る。
なぁに、こいつらには一度勝ってるんだから。
「油断するな、サキ。今度は魔法使ってくるぞ!?」
「空を舞う風の精よ!」
ヴィーナが詠唱を始める。ヤバい。
「また拘束される!?」
「魔法はこっちに任せろ!」
「高坂!」
「うぐっ!!」
呪文詠唱の前に、高坂が例の静電気パンチをお見舞いする。魔法の詠唱を邪魔してくれるなら――。
「おりゃああああっ!!」
「!!」
シュンの持っていた青龍刀を足で蹴落とす。こいつら、やっぱり魔法がなければ弱い。
「ふんっ、聖女によくも牙ぁ剥いたなぁ!? こっちは村ごと破壊してもいいんだからな!?」
「きゃんっ!!」
そう言ってパンチで地面に大穴を開ける。その衝撃で、魔法を詠唱しようとしていたネオが弾かれる。
「……ったく、手ごたえねぇのに歯向かってくるんじゃねぇよ!」
「マジそれな。オレだって、魔法さえなければこんなやつら……」
「……くっ、5戦士たちが次々にやられるとは……まぁこうなることは最初からわかっていたことですが」
「「わかってたなら襲わせるな!!」」
オレと高坂は思わずナルーさんに突っ込む。
「もういい。この世界にいてもろくなことがない。さっさと元の世界に戻らせてくれないか?」
高坂がナルーさんに告げると、ナルーさんも静かにうなずく。最初からおとなしくそうしてくれよ……。
「しょうがないね。一度くらいボクらも勝ちたかったけど」
「仕方ないよ、おじちゃん。お嬢さんたちも急にこの村に呼び寄せられただけだったんだから」
「ホントそれな」
真顔でディディの言葉に同意するオレ。
ボロボロになった5戦士たちは立ち上がると、クネクネと踊りながら服を脱ぎだす。
「だから、それはなんだ?」
「召喚のときにやった儀式だっ! この舞を踊ってからじゃないと、魔法の詠唱ができねぇんだよ」
「踊りながら足で魔法陣を書く……」
「まぁまぁ、あたしたちの美しい舞を見収めてちょうだい」
オレと高坂の周りで、エルフたちが踊りながら足で魔法陣を引いていく。
そしてナルーさんが、呪文を詠唱し始める。
「聖なるエルフの華麗なる舞を天空へ捧げる!」
「いや、天空も『いらねぇよ』って言うわ」
「サキ、しっ」
高坂に口を押えられる。くそ……最初から最後まで一体なんだったんだよ。変なところへ召喚されて、川の精に襲われて、ナルシストエルフたちに取っつかまって、絡まれて……。
こんな変な踊りで本当に無事、元の世界に戻れるのか?
「……なんだかんだ、楽しかったな」
「はぁ!? 高坂、お前はバグってんのか? この状況のどこが楽しかったんだよ!」
「久々に派手に暴れた気がする」
「おめぇはそうかもしれねぇけど、おめぇにマジックキャンセル能力……その帯電体質がなかったら、オレたちぶっ殺されてたんだからな?」
「それじゃ、やっぱりお前は私に感謝しないとダメだな?」
高坂が珍しく、にっこり笑う。え、こいつ笑うと結構かわいい? っていうか、踊り子の服のままってこともあるかもしれねぇけど……。
いつもの高坂なのに、今までよく見てなかったからかもしれんが……。
マジか、これがまさか吊り橋効果……。急に心臓がドキドキしてきやがるっ! 嘘だろ!?
「っ……! それとこれとは話が違うっ!」
顔が熱ぃ……。
そんなオレの状況は一切無視で、ナルーさんは呪文を唱え続ける。
「空を舞う幻想鳥よ、空を踊る風たちよ! 聖女と下僕を元の世界へと戻し、この世界に再び平安を! 来るべき朝日を今呼びよせよ!天日来光 !!」
「!!」
光がオレたちを包む。エルフたちの声が聞こえる。
「お姉ちゃんたち、たのしかったよ☆」
「本当にありがとう」
「もう二度と呼ばねぇからな!」
「……さよなら」
「元気でねん!」
ホワイトアウトーー。目の前が真っ白になり、オレは気を失った。
デイヤの村に帰るとオレたちをナルーさんと村人が宴で迎えてくれる。だけど、わざわざ聖女なんて存在、必要だったのだろうか?
「この世界には『アルミ箔』なんて存在や5Gの都市伝説なんてないだろ?」
「そりゃそうだけど……」
オレと高坂は今日は壇上に座らされている。そして、5人のエルフたちは今日もクネクネ踊っている……。
「聖女のお姉ちゃんのおかげで、ボクらの魔法がまた使えたから感謝だね」
「本当に感謝してるよ、お嬢さん」
「まっ、これでデイヤの村の平和は守られたってことだ!」
「……ありがと」
「ほーんと感謝よねぇ!」
「……と、いいつつ、お前らの持っている武器はなんだ?」
高坂は後ろを見ずにそう言った。オレは急いで振り向く。マジだ。こいつら、恩人に刃を向けてる!?
「おいっ、何してんだよ! オレたちは村を救った救世主だろ!?」
「その救世主たちを殺さないと☆だって、ボクらの魔法が使えない相手だよ? この村を乗っ取ろうとするかもしれないし~」
「……人間だしね」
「シュンはともかくヴィーナまで!? お前らっ……」
呆れてものが言えなくなるが、エルフたちを前に高坂は動じない。
「……サキ、やるぞ」
「やるって!? オレ、魔法が……」
「んなもん関係ねぇよ! もう1回ボコらねぇとわからんみたいだからなぁ!」
「マジかっ!」
オレはさっと頭を下げる。ディディの槍が頭を突いてきた。くっそ、こいつら本気かよ!
「ナルーさん! 止めてよ!」
「ですが、あなた方は最悪を呼び寄せる……かもしれない」
「『かもしれない』で殺そうとするな!」
「せいっ!!」
ウィンのナックルが頬をかすめる。あーもう、こいつらはぁっ!!
一度寝転がって、そこから腹筋を使い立ち上がると、すぐにファイティングポーズを取る。
なぁに、こいつらには一度勝ってるんだから。
「油断するな、サキ。今度は魔法使ってくるぞ!?」
「空を舞う風の精よ!」
ヴィーナが詠唱を始める。ヤバい。
「また拘束される!?」
「魔法はこっちに任せろ!」
「高坂!」
「うぐっ!!」
呪文詠唱の前に、高坂が例の静電気パンチをお見舞いする。魔法の詠唱を邪魔してくれるなら――。
「おりゃああああっ!!」
「!!」
シュンの持っていた青龍刀を足で蹴落とす。こいつら、やっぱり魔法がなければ弱い。
「ふんっ、聖女によくも牙ぁ剥いたなぁ!? こっちは村ごと破壊してもいいんだからな!?」
「きゃんっ!!」
そう言ってパンチで地面に大穴を開ける。その衝撃で、魔法を詠唱しようとしていたネオが弾かれる。
「……ったく、手ごたえねぇのに歯向かってくるんじゃねぇよ!」
「マジそれな。オレだって、魔法さえなければこんなやつら……」
「……くっ、5戦士たちが次々にやられるとは……まぁこうなることは最初からわかっていたことですが」
「「わかってたなら襲わせるな!!」」
オレと高坂は思わずナルーさんに突っ込む。
「もういい。この世界にいてもろくなことがない。さっさと元の世界に戻らせてくれないか?」
高坂がナルーさんに告げると、ナルーさんも静かにうなずく。最初からおとなしくそうしてくれよ……。
「しょうがないね。一度くらいボクらも勝ちたかったけど」
「仕方ないよ、おじちゃん。お嬢さんたちも急にこの村に呼び寄せられただけだったんだから」
「ホントそれな」
真顔でディディの言葉に同意するオレ。
ボロボロになった5戦士たちは立ち上がると、クネクネと踊りながら服を脱ぎだす。
「だから、それはなんだ?」
「召喚のときにやった儀式だっ! この舞を踊ってからじゃないと、魔法の詠唱ができねぇんだよ」
「踊りながら足で魔法陣を書く……」
「まぁまぁ、あたしたちの美しい舞を見収めてちょうだい」
オレと高坂の周りで、エルフたちが踊りながら足で魔法陣を引いていく。
そしてナルーさんが、呪文を詠唱し始める。
「聖なるエルフの華麗なる舞を天空へ捧げる!」
「いや、天空も『いらねぇよ』って言うわ」
「サキ、しっ」
高坂に口を押えられる。くそ……最初から最後まで一体なんだったんだよ。変なところへ召喚されて、川の精に襲われて、ナルシストエルフたちに取っつかまって、絡まれて……。
こんな変な踊りで本当に無事、元の世界に戻れるのか?
「……なんだかんだ、楽しかったな」
「はぁ!? 高坂、お前はバグってんのか? この状況のどこが楽しかったんだよ!」
「久々に派手に暴れた気がする」
「おめぇはそうかもしれねぇけど、おめぇにマジックキャンセル能力……その帯電体質がなかったら、オレたちぶっ殺されてたんだからな?」
「それじゃ、やっぱりお前は私に感謝しないとダメだな?」
高坂が珍しく、にっこり笑う。え、こいつ笑うと結構かわいい? っていうか、踊り子の服のままってこともあるかもしれねぇけど……。
いつもの高坂なのに、今までよく見てなかったからかもしれんが……。
マジか、これがまさか吊り橋効果……。急に心臓がドキドキしてきやがるっ! 嘘だろ!?
「っ……! それとこれとは話が違うっ!」
顔が熱ぃ……。
そんなオレの状況は一切無視で、ナルーさんは呪文を唱え続ける。
「空を舞う幻想鳥よ、空を踊る風たちよ! 聖女と下僕を元の世界へと戻し、この世界に再び平安を! 来るべき朝日を今呼びよせよ!
「!!」
光がオレたちを包む。エルフたちの声が聞こえる。
「お姉ちゃんたち、たのしかったよ☆」
「本当にありがとう」
「もう二度と呼ばねぇからな!」
「……さよなら」
「元気でねん!」
ホワイトアウトーー。目の前が真っ白になり、オレは気を失った。