世界の内規に夢は従う

夢はやさしいから好き
会えない人に会えるから

今日は誰に会ったっけ
もう忘れてしまったけれど

名前も知らないあなたの残滓が背中に残って少しのあいだだけ寄り添ってくれる


逸れてしまった人にはもう会えないということ

世界の内規に夢は従う

目が醒めて、あなたはこの世界からいなくなる

夢の逢瀬を散らかしながら


背中に残る熱はすぐに消えて
あなたの名前を思い出せなくなる
たしかにわたしはあの夢のなかにあなたといた、世界に秘匿された夢のなかに

でも、秘匿は秘匿のままでいい

あなたの名前を思い出したとして
カモメの間を縫って地平線に向かって投げてみたとして
世界は黙ったままだから


「わたしとあなたと世界」

じゃなくて

「わたしとあなた、または世界」

世界はもうわたしと関係なく形を変えていくから

縦軸は世界
横軸は時間

そのグラフ
横から縦から斜から

しゅー
　　　しゅー
　　　　　　しゅー
　　　　　　　　　しゅー
　　　　　　　　　　　　しゅー
　　　　　　　　　　　　　　　
あなたを擦って
わたしという線を

世界と時間にしかられちゃうくらい

自由に気高くどこまでも

引っかきたい