彼の器、僕の器

文字数 314文字

彼の一生を思うと不憫でならない
彼はこの世界のどこかにある彼の器を探している

でも、それはもう見つからないし
見つけても意味がない

彼の器には僕が入っているから
彼の器は僕のものだから

僕は彼の器を作り替える
彼はそのたびに悲鳴をあげ、泣き叫び、生きることが嫌になるだろう
生まれてきたことを後悔するだろう

それでも僕は作り替える
勝手に勝手に作り替える
もう諦めてしまったから
世界のどこかにある彼女の器を探すこと

返してもらう、26年間
彼女として生きられた26年間
彼女として生きられないのなら
好き勝手に傷つけてやる
これは僕の器だ
彼の器じゃない

器がどんなに彼のもとに帰ろうとしても許さない
これは僕の器だ
僕という一人称のために
それだけのために生きてもらう
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み