絶対安全剃刀

文字数 415文字

 洗面所で鏡を見ていると隣にレクター博士がいた。この剃刀で顔の皮を剥いで、はい、云われるがままこめかみのところに水平に切れ目を入れてそのまま下にベリベリと剥がした。

 わたしはメイスンのようにレクター博士の良き患者ではなかったから、綺麗に剥がせなくて、剃刀が肉に引っ掛かった。ベリベリ…ベリベリ…。その都度顔から引き剥がしてを繰り返したので、細かい皮と肉の断片がいくつもシンクにたまった。

 これは犬も食わない。

 メイスンの剃刀技術に驚嘆するとともに、メイスンの顔を食べた犬はレクター博士の犬なのかメイスンが飼っていた犬なのか疑問に思った。

 わたしはメイスンの犬だと思う。彼は自分の豚に生きたまま喰われて死んだから。

 わたしはたぶんそんな死に方をする。ろくな死に方じゃない。

 それにしても顔の皮が無くなるのは気分がいい。化粧水も美容液も下地もファンデもお粉もアイライナーもマスカラもアイシャドウも何もしなくてもいい。

 あーあ、汚い顔。
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