終戦前夜

文字数 239文字

何気ない挨拶は弾丸の交錯

塹壕のなかで足は青白く湿って腐る

塩素ガスを吸い込むと失明するから

地下鉄ではいつも息ができない


私は兵站部 着任より三年目

この世界にとどまるための言葉を探す

物語の一節 一編の詩 哲学者の弁明

死屍累々を駆け抜けて

届けられた言葉で朝を迎える


もう戦争は懲り懲りだ

眠れない夜をやり過ごすのにも疲れた

智慧を捨て 本棚を空っぽにしよう

貴方の言葉で一杯にするために


「消えろ」もしくは「生きろ」

私を作った貴方の言葉で

この戦争が嘘のようにあっけなく

おそろしい勢いで終わっていく

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