映画館

文字数 646文字

 おじいさんとおばあさんが海辺の崖から飛びおりる映画を観ました。

 おばあさんが先に飛びおりて、地面にある大きな岩の角っこに顔をぶつけました。おばあさんの顔は三角錐型に凹んでしまいました。おばあさんは苦しまずに死ねたと思います。

 次におじいさんが飛びおりました。おじいさんは足から岩にささっていきましたが、岩のほうが強かったので、腓骨と脛骨が最後のお別れをして離ればなれになりました。でもおじいさんは生きています。内臓もぶくぶくです。介錯人が槌をおじいさんの頭に振り下し、おじいさんはやっとこさ死ねました。

 わたしはお母さんが寝室で読んでいた本を思い出しました。こっそり読んだことがあるのです。7~8階のマンションから飛びおりれば確実に死ねると書いてありました。でも、お母さんは13階から飛びおりました。はて?なんででしょう?その本には7〜8階から飛びおりると1秒から2秒のあいだ空に浮くとも書いてありました。13階だからおおめに勘定して3秒から4秒……かな。はて?なんででしょう?こわい時間がおおくなるだけなのに。

 でも、映画館って不思議。人が死ぬときは一瞬こわいのに、映画は90分こわい。なんでみんな死なないで観てられるか。こわいってことと死ぬってことは全然関係ないことなのかもしれませんね。こわいだけじゃ死なないから、お母さんは13階まで態々登ったんかな?ってことは映画館は絶対安全ってことですね。映画館で死ぬことは絶対ありません。映画館にくる人は絶対死にません。何があっても死にません。
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