触れあう距離

文字数 1,632文字

    私の貞操観念は、どこに行ってしまったのであろうか。

    今言えることを言うと……私の身分は見知らぬモブキャラみたいな存在なのに、アリストシア公国の王子様と同じベッドで寝ていいのか……という事だ。

    私の隣でモゾモゾと寝返りをうつギルバードさんの手が私の手に触れたこともあり、一瞬ドキッとしてしまう。

    な……何でこんなにもドキドキしないといけないの?!

ご……ごめんね。驚かせちゃったかな?
驚くも何もいきなりすぎませんか?
でも、僕はこうでもしないと父上に申し訳ないんだ。恋人がいないとか言ってられないし。もう24歳だし……
何故、私に恋人役を演じて欲しいのですか?    理由がないのに一緒のベッドで寝るのは不純行為すぎません?
えっ……そうかな?
そうですよ!!    付き合ってもない男女が一緒のベッドで寝るなんて言語道断なんですよ!!
でも、この間の夜はもっと凄いことしたよね?    それも思い出せないのかな?
    うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!    やめてください!!!!    それは、私の黒歴史なんです!!!!    

    私は、出会った初っぱなにギルバードさんとエッチな事をしているのだ。それは、もうとてつもなくエロかった。

    されるがままの私なんてもう最後の方は、全く覚えていないし……。

    私が頭を抱えて、記憶を抹消しようとしていると、私の背後から寝息が聞こえてきた。

もう寝てる……。相当疲れてたのかしら……
    無防備で隣で眠っているギルバードさんを見ると少しあの日の事は、考えられない事なんだと思ってしまう。
まさか……この人は、可愛い顔をした狼なのかしら……。いやいや、男の人は皆狼だし……。私は、どうしたら良いのかしら……
    まぁ、寝ているんだし私を襲ってくるような事はないだろう。多分だが……。

    二人で寝ると温かさを感じる。

    昔、妹の茜や弟の和馬と一緒に寝ていた頃の温かさとは違う温かさがある。

    どうしてか分からない。

    あの日の災害で私は友人を失い、家族とは離れ離れになってしまったけど、この世界でも私は、幸せを手に入れるために頑張っているような気がする。幸せとは程遠いが……。

    何か考えていると頬が熱くなってきた。決して、私が痴女とかそんなことではない。

    もうどうでもいいことを考えるのは止めよう。

    明日に備えて、私は眠りについたのであった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
    私は、ふと目を覚ました。

    部屋はまだ暗い。時計を確認するとまだ一時間程しか経っていなかった。

全然眠れないんですけど……
    さっき不意にギルバードさんの手が私の手と触れあったのもあり、ドキドキして眠れない。

    このドキドキは何なんだろうか……。いけない事を繰り返しているドキドキ感なのか……。

    その時だった。

    私の隣で眠っていたギルバードさんが寝返りをうった際に、手が私の脇腹に当たった。

ひゃぁ!!
    変な大きな声が出てしまった。流石にギルバードさんもこの声には起きるだろう。

    私は、少し寝返りをうち、ギルバードさんを見つめる。ぐっすり眠っているのか全く聞こえていなかったみたいだ。良かった……。それにしても綺麗な顔立ちだなぁ……。イケメンは、良いよね。みんな、容姿端麗だし。

    でも、この体勢は今にでもキスしてしまえそうな体勢だ。流石にまずいと思った私は寝返りをうち、ギルバードさんに背中を見せるような感じで悶絶する。

(こ……この変態王子!!    出会った時から変わらないです!!    イケメンは、何やっても許されるのはマンガの世界だけです!!)
    私は、やっぱりおかしくなってしまった。この世界に来てから心臓がドキドキして、苦しくなる。

    もしかして、これが……。これ以上考えるのは止めよう。私は、再び眠りにつくのであった。

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登場人物紹介

支倉 詩乃

    20歳のピチピチの音大生。フルートを専攻しており、世界のコンクールで入賞するなどの快挙を見せる新星のフルート奏者。

    ある日の大学からの帰り道、神の悪戯による災害により異世界に飛ばされることになる。音楽しか出来ない詩乃は、異世界で生き残ることが出来るのか。

ギルバード・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第2王子。24歳。詩乃が異世界に飛ばされて初めて出会う男性。←(しかもベッド上で……)王様や女王様から相手にされない日々を送ってきており、内緒で魔法使いになった青年。兄のジルベルトとは仲が良いみたいで……

ジルベルト・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第1王子。27歳。自警団を設立し、国を守っている青年。魔法の素質もあり、度々魔法を使っている。やんちゃな性格のため、弟たちを困らせる事もある。

ナタリー・フォン・アリストシア

    アリストシア公国のお姫様。25歳。身体が弱いためあまり魔法を使えない。詩乃の事を大切に思い、サポートしてくれる。

詩乃の友人

神の悪戯による災害により死亡する。

神様

    詩乃を異世界に飛ばす気紛れな神。

ハチミツ

    詩乃を手助けするにゃんこ。口がとても悪い。一応、メス。

ロバート・フランツ

    22歳の戯曲家。詩乃の音楽魔法でデイドリーム・シンドロームから目覚める。後の有名な戯曲家。

マイケル・フォン・アリストシア

アリストシア公国の国王

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