朝の微睡み
文字数 1,179文字
翌朝、私はとある部屋のベッドの上で目を覚ました。着ているのは、何故か薄ピンクのネグリジェ。
多分、あの男の人が貸してくれたのだろう。昨日着ていたブラウスとカーディガン、スカートは豪華なソファーの上に畳まれて置かれている。
私は、昨日着ていた洋服に着替える為にベッドから降りようとしたが、降りたと同時に腰が抜けてしまい、ベッド下に敷かれたカーペットの上に座りこんでしまった。
昨夜は凄かった。「最後までヤらない」と思っていたはずが、「最後までヤられた」からだ。私が許可してないにも関わらず……。
ベッド横のゴミ箱を覗きこんでみたら分かると思うが、昨夜の残骸が私の身に起きたことを物語っている。
イケメンは、エッチが上手というルールがあるのか?!
私が付き合っていた元カレより上手だった記憶がある。さすがに一夜の悦びというだけある。それに何回も快楽の果てを見させられた。こんなことは、初めてのことだった。
とにかく、今は帰る方法を探さなきゃ!! ここで諦める程、私は弱くないわ!!
私は、着ていたネグリジェを脱ぎ、ブラウスを着て、カーディガンを羽織る。黒のチェックのスカート、黒のパンプスを履いた。豪華な机の上に置いていたフルートの入ったケースを持ち、部屋を出た。
私がどこにいるかなんて分からなかった。昨夜は、いきなりイケメンの男の人に押し倒されて行為に及ばれてしまったのだから仕方がないことだが……。それにしても、この家は広すぎる。いつまで経っても出口が見えてこないし、人は誰一人見かけない。
何かおかしい、と私は思ってしまう。
しかし、鳥のさえずりなどはリアルでこれが現実なんだと思ってしまう。
私は、出口を探すため一つの部屋の扉を開けた。
私が扉を開けた先は、暗闇が広がっていた。誰もいない暗闇の世界が広がっていた。
私は、先に進もうとする。
その時、誰かの声が聞こえてきた。
誰?! 私は帰りたいの!! 元の世界には災害で困っている人がいるの!! だから、私は帰らないといけないの!!
その先は、危険だ。家に帰りたい気持ちは分かる。しかし、この世界も危機に瀕している
その時だった。
ゴゴゴゴ、と大地を揺らすかのような音が聞こえる。
私は、その音と最後のあの時の記憶が一致する。
私は、声の主の言うとおり、その人に向かって手を伸ばした。私は、その人に手を引かれ暗闇から抜け出す為に……。後ろからは獣の唸り声が響いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)