最初の夢から覚める

文字数 1,453文字

    私が、目を覚ますと最初にいた噴水広場でフルートを持ち、ベンチに腰をかけていた。

    その時、肩にふわりとした感覚を感じる。隣を見るとロバートさんが居眠りをしている。

    もしかして、私たちはさっきの戦いに勝ったの?

    ふあんが心を支配していく中、隣に座っていたロバートさんが大きなくしゃみをしたのを見て、少し安心した。

    そっか、私たちは勝ったんだ……。「デイドリーム・シンドローム」に打ち勝てたんだ。

    しばらくするとロバートさんが目を覚ました。

ごめんね……。何か嫌な夢を見てしまったみたいだ……
大丈夫ですよ、ロバートさん。私も嫌な夢を見てしまいました……
ボクの音楽で人を喜ばせるなんて出来ないと思っていた。でも……
私は、ロバートさんの救いになれるならなりたいです。なので、ロバートさんの戯曲作りに協力します!!
ありがとう、詩乃。ボクは、はっきり言ってあの時怖かったんだ。「デイドリーム・シンドローム」になってしまうなんて思ってなかった。でも、詩乃のフルートのおかげでボクは助かったんだよ。詩乃は、音楽の魔法使いだね
でも、私は魔法は使えないんです
    ロバートさんは、私の手を左手を握ってきた。

    咄嗟の行動に私は、戸惑う事しかできない。

でも、あの光が発動したのは、詩乃の願いから生まれたものなんだよ。だから、詩乃はこれからは魔法使いだね
えっ、でも……あの時は、私も必死だったから……。何が起きたのか覚えてないんです
ボクの記憶も曖昧だが、あれは魔法だったよ
    ロバートさんが言うには、私は必死になりすぎていたのか気づかないうちに魔法が発動していたみたいだ。

    気づかないうちに使っている事なんてあるのだろうか?

    何となく身体が怠く感じるのは事実だけど……。再びロバートさんが私にお願いをしてきた。

じゃあ、もう一回……。詩乃のフルートの音色を聴かせてほしいなぁ
分かりました。ロバートさんのリクエストに答えまして、戯曲「僕たちの革命」をやりますね
    私は、フルートを奏でるために、吹き口に唇を当て、息を吹きこんだ。優しい音色が辺りに広がっていき、草花を揺らした。キラキラが生まれては消えてを繰り返し、戯曲「僕たちの革命」を最後まで吹ききった。

    そこからは、私の記憶が曖昧だ。楽器を片付けた所までの記憶しかない。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
うぅーん
    温かい。太陽の香りがする。徐々に私の意識が浮上する。
あっ、気がついた?    詩乃、体力切れで倒れてしまったんだよ
そうですか……。ありがとうございます、ロバートさん……。私、重たいですよね。一人で歩きますから……
さっき倒れたばかりなのに一人にさせられないよ。だから、ボクが詩乃を家まで送り届けるからね
ごめんなさい、ロバートさん。無理させてしまって……。私の家は、アリストシア城です……
えっ?    今何て言ったの?
アリストシア城までお願いします……
    私は、そのままロバートさんの背中に身体を預け、眠りに落ちたのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
    私の知らない所であったことを聞くのは、後日になる。

    これからは、とても大変な日々が待っているだろう。

    私は、それでもいいと思っている。私は、音楽をこの世界に広め、「デイドリーム・シンドローム」の根絶さえ出来れば良いと。

    物語は、始まったばかり。私は、これからもこの世界で音楽を奏でるつもりだから……。

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登場人物紹介

支倉 詩乃

    20歳のピチピチの音大生。フルートを専攻しており、世界のコンクールで入賞するなどの快挙を見せる新星のフルート奏者。

    ある日の大学からの帰り道、神の悪戯による災害により異世界に飛ばされることになる。音楽しか出来ない詩乃は、異世界で生き残ることが出来るのか。

ギルバード・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第2王子。24歳。詩乃が異世界に飛ばされて初めて出会う男性。←(しかもベッド上で……)王様や女王様から相手にされない日々を送ってきており、内緒で魔法使いになった青年。兄のジルベルトとは仲が良いみたいで……

ジルベルト・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第1王子。27歳。自警団を設立し、国を守っている青年。魔法の素質もあり、度々魔法を使っている。やんちゃな性格のため、弟たちを困らせる事もある。

ナタリー・フォン・アリストシア

    アリストシア公国のお姫様。25歳。身体が弱いためあまり魔法を使えない。詩乃の事を大切に思い、サポートしてくれる。

詩乃の友人

神の悪戯による災害により死亡する。

神様

    詩乃を異世界に飛ばす気紛れな神。

ハチミツ

    詩乃を手助けするにゃんこ。口がとても悪い。一応、メス。

ロバート・フランツ

    22歳の戯曲家。詩乃の音楽魔法でデイドリーム・シンドロームから目覚める。後の有名な戯曲家。

マイケル・フォン・アリストシア

アリストシア公国の国王

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