黒い夢の世界

文字数 1,662文字

    気がつくと暗闇が広がる世界に私はいた。とてつもなく漆黒の闇が続く空間。さっき眠りに落ちる前の音楽がずっと頭の中をグルグル回り続けていて、気分が悪い。ロバートさんが作曲した戯曲の良さを黒の音色が全てをのみ込んだ。

    ロバートさんが倒れてしまったのは、多分アリストシア城下で人々が言っていた「夢を持つから悪い」という言葉。

    それに対して、私はどうしたら良いのか分からなくなる。私がロバートさんに、夢を持たせてしまったのがいけないのかな?

    闇に手をかざしても空を切るばかりで何もない。

どうして……もしかして私、また死んでしまうの……
    別に死んでしまったわけではないのは分かっている。

    しかし、ロバートさんが倒れてしまったのは、私のせいだ。私が、ロバートさんに夢を持たせてしまったのがいけないのだ。

ロバートさん……ごめんなさい……
    その時、しゃがれた笑い声が聞こえてきた。その先にいたのは、私が探していたロバートさんの姿があった。
ふはははははははは!!    この男の夢はなかなか美味しそうだ!!    このまま喰ってしまえば我々は強くなれる……
    誰か分からないが、そこにはロバートさんが男に足を掴まれ、暗闇の奥底に引きずり込まれていくのが見えた。
ロ……ロバートさん?!
うっ……ぐぅっ……
女……邪魔するのか?    なら、まずお前の夢から喰ってやる!!
    暗闇の先から暗黒に包まれた焔が飛んでくる。
きゃっ!!
魔法も使えない女……。避けるとはなかなかだな。しかし、次は命は無いぞ!!    『地獄の(ダークネス・ヘル)!!』
(ダメ……もうお仕舞い……。私は、死んでしまうんですね……。神様、助けて……)
    私は、このまま死んでしまう……。その時、私の耳に誰かの声が響いてきた。
詩乃、久しぶりじゃな
あなたは……あの日の神様ですか?!
如何にもそうじゃ。このままだとロバートも詩乃も死ぬじゃろう
そうですよね……。私とロバートさんは、どうなってしまったのですか?
支倉詩乃とロバート・フランツは、「デイドリーム・シンドローム」に堕ちたのじゃ
    私とロバートさんが、「デイドリーム・シンドローム」に堕ちた?

    神様の言っている事が分からない。私は、どうしたら良いのか頭を抱える。

頭を抱えるのは止めるのじゃ!!    「デイドリーム・シンドローム」から逃げられなくなるぞ!!
どうしたらロバートさんを救えるのですか?    私、ロバートさんに夢を持たせてしまったからいけないんです……
それは関係ないのじゃ!!    今から我の言うことをよく聞くのじゃ!!
どうしたら良いの?
音楽を奏でるのじゃ!!
    神様の言葉に私は、目を見開く。音楽でロバートさんが目を覚ますなら私は、フルートを構えるしかない。

    私は、神様の言葉に従い、フルートを探す。その時、私の掌に細長い筒状のものが触れた。

    これだ!!

    私は、それを掴んだ。

    すると、再び暗闇の世界に引き戻される。

もう私は諦めたくないです!!    ロバートさんを助けたいです!!    魔法が使えなくても音楽があります!!    だから、私は奏でます!!    曲名は、戯曲「僕らの革命」
    私は、何時もより力をこめてフルートに息を吹きこんだ。

    何時もより力を感じる。私は、連符にさえ力を入れて、心をこめて戯曲を奏でる。神様に言われた通りに……。

    すると、暗闇に眩い光が辺りに広がり、黒が白に染められていく。

    さっきのしゃがれた残酷な男の声も聞こえなくなっていた。ロバートさんを引き摺る者もいなくなっており、ロバートさんはその場に倒れこんでいた。

    私は、ロバートさんに手を伸ばした。

私は、もう誰も失いたくない……。だから、私はロバートさんを元の世界に連れて帰る……
    私は、倒れていたロバートさんに手を伸ばした。そのまま元の世界に一緒に戻る。私は、射し込んでくる光に眩しく目を閉じた。
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登場人物紹介

支倉 詩乃

    20歳のピチピチの音大生。フルートを専攻しており、世界のコンクールで入賞するなどの快挙を見せる新星のフルート奏者。

    ある日の大学からの帰り道、神の悪戯による災害により異世界に飛ばされることになる。音楽しか出来ない詩乃は、異世界で生き残ることが出来るのか。

ギルバード・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第2王子。24歳。詩乃が異世界に飛ばされて初めて出会う男性。←(しかもベッド上で……)王様や女王様から相手にされない日々を送ってきており、内緒で魔法使いになった青年。兄のジルベルトとは仲が良いみたいで……

ジルベルト・フォン・アリストシア

    アリストシア公国の第1王子。27歳。自警団を設立し、国を守っている青年。魔法の素質もあり、度々魔法を使っている。やんちゃな性格のため、弟たちを困らせる事もある。

ナタリー・フォン・アリストシア

    アリストシア公国のお姫様。25歳。身体が弱いためあまり魔法を使えない。詩乃の事を大切に思い、サポートしてくれる。

詩乃の友人

神の悪戯による災害により死亡する。

神様

    詩乃を異世界に飛ばす気紛れな神。

ハチミツ

    詩乃を手助けするにゃんこ。口がとても悪い。一応、メス。

ロバート・フランツ

    22歳の戯曲家。詩乃の音楽魔法でデイドリーム・シンドロームから目覚める。後の有名な戯曲家。

マイケル・フォン・アリストシア

アリストシア公国の国王

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