焦り
文字数 1,928文字
まさか……とは言わないが、魔法を晒せ、とか無いとは言えない。ロバートさんもそうだ。王様に会うとはいえ、私とロバートさんは、王様に謁見するに見合う服を持っていない。私は、わかる通りこの世界の人間ではない上、お金も持ち合わせていないし、ロバートさんは、庶民出身の戯曲家だし……。
私とロバートさんは、良い言葉を聞いてしまったかもしれない。
私とロバートさんは、王様との謁見を了承した。その代わり、私とロバートさんの言うことを条件で。何の願いを叶えてもらおうか。今から楽しみになってきた。
しかし、私とロバートさんは、とある問題に引っ掛かってしまった。
私の知っている限りだと……ジャズ? ボサノバ? サンバ?
宮廷音楽とか言われて思い浮かぶものはあまりないし……。
はっきり言ってこれって私たち、大ピンチ?!
これは、かなりの難題だ。私が今までにやって来た音楽よりも難しく感じるのは何故だろうか……。ギルバードさんが呑気に歌っているが……。あっ……これはある意味ヒントかもしれない。
私は、ギルバードさんが歌う旋律をフルートを構え、吹き表してみた。これが新しい音楽になるように。
これなら強制送還とか……されたりしないだろう。私とギルバードさんの関係も保留にしてもらえるだろうし……。一石二鳥でしょ? 私も毎晩あのようなスリルを味わうのも精神的に堪えるし。
その後、ロバートさんと何度か一通りの流れを確認し、ギルバードさんと話を重ね、ようやく日付が変わる頃にお開きとなった。続きは明日という事で……。
長い時間の拘束から解かれたロバートさんは、背伸びをし、口笛を吹きながら自室に戻っていった。残されたのは、私とギルバードさん。昨夜の事があり、とても気まずい。
これは、怪しい。絶対何か隠しているに違いない。私にだって分かる。そこまでバカじゃないから。