迫る黒
文字数 1,681文字
ロバートさんは、私の前に立ち、私がフルートの準備をしているのを見つめている。
仕方がない。ここは、この戯曲を吹いて納得してもらおう。私の実力がどれぐらい本当のものかを……。魔法が使えなくても音楽さえ出来れば良いじゃないか。
私は、譜面を一目確認する。
2日3日吹いていなかったのもあるのだろう。何時もより指が重く感じる。目の前には、笑顔で聴いてくれているロバートさんがいる。連符が続いているけど音楽がこんなに楽しい、と思ったのは久しぶりかもしれない。
その時だった。
ロバートさんが辺りを警戒し始めた。私は、それに気がついたがロバートさんの為にフルートを吹き続けた。
目の色もおかしい。ヘーデル色に染まり、光はない。目も虚ろで虚無を見ているかのようだった。
しかし、良かったなんて言えない。
だって……
私は、ロバートさんの名前を呼び続けるが、起きる気配がなかった。今度は逆に私まで視界がぐらりと揺れた。
視界がいきなり真っ暗になり、目の前が暗転する。私の見ていた世界は黒に塗りつぶされた。