雪月夜

文字数 402文字

純白の幕が下りる
大地が無垢の色で染められる
天と地に境目がない世界で
月が夜空にぽつんと浮かんでいる

死んだように静まり返った世界で
唯一 生命力を放つそれは
寂寞とした空間の中にあっても
悲壮感なんてものを微塵も感じさせず
やわらかな光の筋を地上に落としている

寂しくはないのか そんな所で

置いて行かれることに怯え
急かされるように息をする
効率性ばかりを求め
善悪の判断は後にする
そうやって生きているうちに
自分の居場所さえ分からなくなり
距離感もつかめなくなっていく
世界と 他者と 自分と

降り積もる雪が周囲の音をかき消していく
世界と距離を置くんだ

月が耳元で囁く
孤独を愛するんだ

夜が肩を抱く
自分を愛するんだ

彼らが口を揃えて言う
孤独を愛するんだ 自分を愛するように
自分を愛せないようでは他者を愛せない
孤独を愛せないようでは世界を愛せない
なぜなら
君達一人一人は
単独の独立した存在でありながら
この世界を構成する一部でもあるのだから 

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