本を読む

文字数 310文字

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知識をつける
知識の衣を幾重にも重ね着して
口先だけはべらべらとがなりたてる

本当の自分は見せまいと
認めまいとして
知識だけは人一倍つけようと
余分なものまでつけたがる

だが、一人になり
その衣脱いでいくと
案外小さい自分がいた

薄汚れた鏡の前に座ると
一人ぼっちの自分がこちらを見つめ返している

その自分に何か言おうとしてみたものの
口からは何も出てこない
自分を射すくめるようなその視線に
体が麻痺したように動かなくなる

その自分が言う
怖いか? 自分から見つめられるのは
恐ろしいか? 自分に誇れるものが何一つ無いのは
知識だけつけたって 何の足しにもなりゃしない
お前だって 本当は……

その問いかけに 返す言葉もなく
また今日も一人で、本を読む

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