死後の世界

文字数 289文字

朝 肌を刺すような冷気で目を覚ます
外はまだ漆黒の闇の中
人々はまだ各々の夢の中

雪の降り積もる音だけが聞こえる
耳を澄ますと聞こえてくる
彼等の声なき声が

この時間
この瞬間(とき)だけ
この世界は僕達のものだ

空から
歌うように降ってきて
ひらひらと舞いながら
彼等は
人気のない通りを
我が物顔で闊歩する
街を静寂で埋め尽くす

じっとそれを見つめるのは
ひっそりと立ち並ぶ街灯

弱々しい光を放って それらは
一体どこへ我々を導こうというのか
一体どこへ我々を運び遣ろうというのか

表の世界が主導権を握る前の一時(いっとき)
夢現(ゆめうつつ)の狭間で
静かで穏やかな裏の世界を垣間見た気がして
死後の世界もこうであったらと
意識が暖かな微睡(まどろみ)の中へと薄れゆく

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