言葉の味付け

文字数 305文字

「君が好きだ」
塩を加えてみる。

「こんなに好きなのに、なぜ君は気づいてくれないんだ!」
分量、間違えた!

「ひどいよ! いつも君ばかり見てるのに!」
さ、砂糖入れてみよう!

「君のことが頭から離れないんだ。その優しい笑顔も、時折見せる拗ねた表情も」
味噌とか入れたら、コクとか出るかな?

「吾輩は貴方をお慕い申しております。この胸の慟哭が聞こえましょうや」
……チガウ。絶対コレジャナイ。

あの日
伝えられずじまいで終わってしまった気持ち。

今でも記憶の彼方
虚空にぶら下っている。

もしまた好きな人ができたら
今度はきちんと伝える事が出来るだろうか。

自分なりの言葉を使って。
自分だけの隠し味を使って。
出来合いの言葉なんかには頼らないで。

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