詩? 答え

文字数 702文字

今の時代
路頭に迷う事はそうそうないらしい

旅先で迷っても グーグルマップが解決してくれる
ちょっとした疑問にも ヤフー知恵袋が答えてくれる

孤独に震える夜があっても SNSがあれば大丈夫
もともと不確かなこの人生 仮初の優しさでも構わない

それでも心配性で寂しがり屋な人間は
人工知能を創り出す

昔、留学先のとある国で
目的地が見つからず
スーツケースを引きずりながら
同じ道を右往左往していたら
見かねた現地の人達が声を掛けてくれた

当時 スマホなんて物はなく
分からない事は人に訊くのが当たり前の時代

「どうした?」「何を探してるの?」
気軽に声を掛けてはくれるが
その説明は結構あやふやで
方向音痴のわたしは途方に暮れていた

とうとうどうしようもなくなり
パトカーの前に立つ婦警さんに声を掛ける

その場所は説明しずらい場所にあるのか
少し考えた後で
彼女は自分のパトカーを指差した
「乗りなよ」と

彼女の相棒の婦警さんがもう一人
正面の店からドーナツの箱を抱え出て来ると
「パトカーはタクシーじゃないのよ」なんて言いながら
渋面を作っても 乗せてくれた

車内では自分の大学生活の事など語りながら
十分ほどの運転でそこに到着した

Thank you
その二文字じゃ物足りない
感謝してもしきれない
何とか自分の気持ちを伝えたくて
ハグもしたかったけれど
相手は女性だという事もあり
日本人のわたしは気後れし
考えた末、自分の手を差し出し
彼女の手をきつく握った

握り返してくれる彼女の手はしっかりとしており
そこに彼女の存在はちゃんとあって
その時
欧米の人達が握手を大切にする理由が
何となく分かった

スマホの画面越しじゃ あなたの答えは見つからないよ
それはきっとあなたのすぐそばにある

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