分身

文字数 416文字

近所に住む男の子が一人
足早に小学校へ登校していく
昨年までは兄の後をついていくだけの
まだ幼い少年だった

春も夏も秋も冬も
兄は弟を守るように
弟はそんな兄を慕うように
仲良く小学校へ通っていた

たかだか一、二年で
もうそんなに成長したのか
その齢でお互い別々の道を歩むことに決めたなんて

そんなに急がなくてもいいのに

では ゆっくりと歩き
楽しませるだけ価値ある物が
あるというのか この世界に

内を見れば
相変わらず大人は金のことばかり
綺麗に見える物も
裏を返せば汚物でまみれている
外を見れば
自己主張の塊同士が
目を閉じ 耳を閉じ 口を閉じ
好き勝手に暴虐のかぎりを尽くしている
彼らの前では人殺しさえ肯定されるようだ

歴史は繰り返す
この格言はどうやら本物であったらしい

足早に前を行く少年の後姿を見てドキリとする

彼は僕だ

時間に追われるように生き
躓かないよう下ばかり見ている

僕達大人は彼らに一体何を見せているのだろう

自分の分身のような彼の姿を見て無性に悲しくなる時がある

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