第11話 舞い降りた翼…Ainz①
文字数 2,410文字
返事をした次の瞬間、当真の意識と身体は裏山に戻っていた。
目の前で起きた現象に戸惑う当真。そんな彼に向かって、ツヴァイは当たり前のように告げる。
困った当真は、頭の中でそれらしい事を思い浮かべてみるが、
そう言われて、当真は強く春奈先生の姿をイメージする。
当真にとって、おっぱいと春奈先生は分かち難いものだ。だから、彼には他の方法など思い付かない。
そんな当真を見て、ツヴァイがタメ息をついた。そして、彼女の口から衝撃の事実が告げられる。
ツヴァイの言葉を聞いて、当真の心臓がバクン! と大きく脈打った。
サーッと血の気が引く音と共に、身体中に悪寒が走る。その直後、当真は一気に感情を爆発させた。
追い詰められ、切羽詰まった当真は、驚異的な集中力を発揮する。
春奈は痛みを堪え、その場になんとか立ち上がる。先程の攻撃で彼女が受けたダメージは甚大だった。
フラフラと足元が揺れて覚束無い。そして全身を襲う痛みが、彼女の意識を遮断しようとする。
パンッ! と瞬時に自ら左頬を張り飛ばし、彼女はふらつく身体に活を入れる。
意識はハッキリしたが、平衡感覚が回復するのに、まだ時間がかかるだろう。
残してあるSPを全部使っても、多分勝てない。こういう時のために、とストックしていた分だったけど…彼女の奥の手は、この相手には通用しそうにない。
春奈の場合、あくまでSPは力を補正する為の物だ。例え今あるSPを全振りしようとも、レベルアップ時の…あの力の上昇には到底及ばない。
それに、どちらかのスキルにSPを注ぎ込んでも、全体のバランスが悪くなるだけだ。それでは、十分な実力を発揮することは出来ない。
偏りは歪みを生む。戦いにおいて、それは大きな隙となるだろう。これから先の事を考えるならば、なおさら選べない手段だ。
彼女は当初より、生き残る事を念頭に置いてSPを割り振っていた。一度のレベルアップにつき、彼女が得られるSPは5。それを汎用性を重視して、両方のスキルに2ずつ振る。
そして、残りはストックしていた。しかし、相手との力の差がハッキリとしている今の状況。ここで、SPを均等に割り振る事が、勝ちに繋がるかどうかは疑問だった。
だが、一方に全振りをしても、この不利な状況を引っくり返せるとは思えない。しかし、このまま何もしないのでは、ただ座して死を待つのみだ。
短時間だが、爆発的な力を生む
まず、当たらなければ意味が無い。オーラを選んだ場合、そのパワーに振り回されて時間切れ…ということにもなりかねない。
近くまで、ホブゴブリンがやって来ている。
ぐぬぬ…と呟いて、メラメラと闘志を燃やし始める春奈。その右拳が固く、握り締められていた。
渇いた笑い声を上げる春奈。すぐそこまで、ホブゴブリンが迫って来ていた。
絶体絶命のピンチに、彼女は軽く現実逃避をし始めたようだ。
そして、そこに持ち前の明るさが加わると、春奈の思考は変な方向に転がってしまい、彼女はおかしなセリフを連発してしまう。