第17話 希望を抱く少年
文字数 2,755文字
バタリと全身を投げ出し地面へ倒れ込む当真。
その様子を2人の女性が、じっと見つめていた。
あきれた表情のツヴァイ。
フルフルと首を振るアイン。彼女も残念そうに、ツヴァイの横で俯いてしまっている。当真が得た最初のスキル…デイリークエスト最初のお題は、腕立て伏せ100回だ。
腕立てには色々な種類があるが、どれを選んでも良いらしい。更に合計で100回やればクエスト達成となる。当真は10回10セットで頑張っている最中だった。
当真は構わず2セット目の腕立て伏せに挑む。
ダメ出しに、いちいち構っている暇はない。当真には達成しなければならない、目標があるのだ。
そうして、少年は一心不乱にデイリークエストに取り組んでゆくのだった…。
サブ職業AV男優…それになるにはなったが…将来はともかくとして、今は使う機会が無い事に彼は思い当たる。
このサブ職業の持つスキルは、その活用法に問題があった。それは、初Hをするところまで辿り着けなければ、威力を発揮しない事だ。
だが、現在の当真はその
これでは、サブ職業AV男優も宝の持ち腐れである。それで、当真は少しやる気を失っていたのだ。
と告白しようと考えた。しかし、ツヴァイに戦わせ…そして、アインに護ってもらう当真。それで、俺TUEEE! も何もない、強いのはアインとツヴァイだ。
これでは女性として、トキメキを覚えたりはしないだろう。召喚士では、格好が付かない。惚れさせて、初Hするのは無理だ。
当真は、そういう結論に至った。では、距離を縮めるために一緒に戦い、地道に好感度を上げてゆく。そうして、告白した場合はどうか?
…やはり無理だ。クラスカースト最下位。よくても、立ち位置がモブの当真では問題にならない。せめて顔立ちが美少年なら、
などと、春奈先生に名簿を見られている始末だ。
しかし、入学してもう4ヶ月近く立つ。なのに、春奈先生から顔と名前が一致されていないとは…当真は、とても印象が薄い生徒のようだ。
さらに問題なのは、上手く告白出来たとしても、
自分に分かるくらいなのだ。社会常識…それは相手の方が、十分に承知していることだろう。例え春奈先生も、当真のことを好きだった、という奇跡が起きたとしても、
と結局は断られてしまうだろう。それが社会のルールだと思う。だが、以前の世界では無理でも…今は違う。
転移を果たした、この世界ならば…異世界という、この特殊な状況下ならば…そういう制約は無くなっているはずだ、と当真は思う。
しかし、大人の女性である春奈先生から見ると、色恋沙汰において当真は問題にならない存在なのだろう。
あるツリーの存在が当真の目に留まる。
それらを擁する素晴らしきツリー。
震える声で当真は呟いた。
当真は、ステータス画面を見つめたまま、動けずにいた…。
そしてその身体がブルブルと震え出す。
その事実に気付いた瞬間に…夢物語だと思っていた自身の願いが、現実のものへと変わっていた。
夢の中でしか叶わなかった行為の数々…それをそのまま、現実に移行して体現することができる。
もはや、
飛び跳ねるように、起き上がった当真。彼はすぐさま腕立て伏せを開始する。
アインは気付いていない。ツヴァイも気付かない。
この腕立て伏せは、来るべき決戦に向けての鍛練なのだ。
その昔…伝説に謳われる都があった。将来への希望を抱き野心に燃える。そんな若者達が等しく目指した場所があった。