第16話 胸熱の少年③

文字数 2,745文字

(鎧を、胸当てを外せないかな…)

さっきから当真は、アインの胸当ての下に隠された、その乳房の輪郭を推し量ろうと、チラチラと盗み見を繰り返している。
「……」

(レベルアップの時に聞こえてきたアナウンスは、システムの声だよな?)

…この4ヶ月間、少年は毎日のように見ていた。私立水上学園に勤務する若い女性教員達を見続けてきたのだ。

(システムがあるなら、アバターって変更出来るよね?)

そのお陰だろうか。なんとなく雰囲気で、相手のおっぱいの大きさ(ポテンシャル)が分かるようになっていた。

(もう、いっそのこと水着に…ビキニにしたいっ!)

このように、当真はアインのおっぱいについて、先程から真剣に考え続けている。

(ツヴァイもスタイル良さそうだし、こっちはマイクロだっ!)

ツヴァイは、そんな不埒な当真の頭の中を敏感に察知したのか、

「いかがわしいサブ職業を選択したお前には、はっきりと言っておくぞ」

そのアイスブルーの瞳で、真っ直ぐに当真を見詰めて口を開くと、

「我等は人間(ヒト)とは違う存在だ。好色な目で見るなよ」

と言って釘を刺す。そして最後には、まるで彼を追い払う様に、

「近くに沢があったから、さっさとそこへ行け」

とまで言われてしまう。当真を睨むように、険しい顔付きをしているツヴァイ。

(仕方ないな…)

そんな彼女から離れる意味もあり、当真は大人しく回れ右をして沢へと向かった…

「よしっ!」

気合い十分な様子で沢へとやって来た当真。彼はさっそく上半身から裸になる。シャツ等の上着類は行為の邪魔になる為、まず最初に上から脱ぐ。それが彼の流儀なのだ。

「…ん?」

背中に視線を感じて振り返ると、何故かそこにはアインがいた。

「あの、やりにくいんだけど」

「……」

無言で佇むアインに当真は事情を尋ねてみる。

「…ボソッ…ボソッ…」

「あっ、そうなの」

彼女から話を聞いたところ、どうやら守護者であるアインは、対象から離れる事はないらしい。

「しかし、うーん…」

それでは困ると彼は一計を案じた。

「何かあったら、すぐに呼ぶから…召喚前の待機状態に戻る、とかしてくれないかな?」

「…コクリ」

黙って頷いたアインの姿が、当真の目の前で、スーッと消えて見えなくなる。

「ふぅーっ。守ってくれるのは、ありがたいけど…見られてするのは、ちょっとなー」

さすがの当真といえど、そこまでの上級プレイは修めていない。しかし、異性に見られながらプレイすることで、更なる快感を得る。

(いつかボクにも、そんな日が来るのだろうか?)

そんな事を考えながら当真は少しの間、遠い未来へと思いを馳せた。

「すーっ」

やがて当真は大きく深呼吸を開始する。

「はーっ」

落ち着いて周囲の音に耳を傾ける。自然との一体感を得られれば、野外(ここ)でも出来るはずだ。

「すうぅ…」

その為に、事前の準備が重要となるのは言うまでもない。

「はあぁ…」

良い環境で良い作業をしなければ、良い結果は出せないのだ。

チチチ…

小鳥の鳴き声、枝葉の擦れ…山の音が聞こえてくる。

「ふうぅ…」

汚れを知らぬ少年は、生まれたままの姿で自然へと帰ってゆく。

(よしっ…!)

気合いを入れて足を踏み締めると、今回の標的(ターゲット)を選択する当真。

「やっぱり鉄板なのは春奈先生だよな」

間違いの無い存在が彼の頭の中に浮かぶ…しかし、ここは違うチョイスでいきたい。その脳裏をよぎるのは…胸当てに覆い隠されてもなお、その存在感を示していたアインのおっぱいだった。

「でも、やはりここは…起こりを与えてくれたアインだな」

標的(ターゲット)を定めると、当真はすぐさま作業に取り掛かった。

「むぅん…」

(アイン…極端に露出の少ない鎧姿にも関わらず、ボクを起こすとは…)

これは相当、良いものを持っているとみるべきだ。

「アインッ…!」

当真は一心不乱に彼女へ没頭する。

「何とかアバターを変更してっ、アインのおっぱいを見てやるぞっ! うおおーっ!!」

そうして猛る最中、ふと当真の脳裏にツヴァイの顔が浮かぶ。あの怜悧な表情…自分を見る時のあの冷めた感じの目…それを思い出す。次の瞬間、当真の下腹部にピリッ! という新たな刺激が走った。

「アインもいい…けどっ、ツヴァイもっ!」

こちらを見下してくる。ツヴァイの顔がアクセントとなり、当真の右手に更に力が入る。隠れ巨乳のアインと刺すような冷たい眼差しのツヴァイ…

「こうなったらっ、二人ともいっぺんにっ!」

女性教員達とは別に、新しく加わった二つの妄想材料(コレクション)

「くぅ~っ!」

それを使用する事に、当真は爽快な刺激と新鮮さを感じていた。

「うおおおーっ!!」

…そして、山に風が流れる夕暮れ時…辺りの景色が夕陽に染まる中、アインとツヴァイと当真を繋げていた作業。その全ての工程が結実する。

「ふぅーいっ…とても良い出来だったな」

そう言いながら、スッキリとした表情で拠点へと戻ってきた当真。

「ボソリ…」

「ん、どういう意味だ?」

そこで彼が目にしたのは、ツヴァイに耳打ちをして何事かを告げているアインの姿だった。

「…ボソボソ」

「なっ、何だと…」

(二人とも何を話しているんだ?)

「ボソリ、ボソッ…」

「アインと私の名前を叫びながら、ガクガクしていた!?」

二人の様子に嫌な予感を覚えた当真。その動きがピタリと停止する。

「えっ…あれっ?」

ゆらり…とこちらを振り返ったツヴァイは、当真に向けてこう言った。

「アインはな…お前の影に潜っていただけだ」

コツリ…

その怜悧な瞳を向けながら、ツヴァイはゆっくりと当真に近付いてくる。

コツコツ…

「召喚前の状態になど、戻れる訳がないだろう…」

すーっ…と剣を抜くと、彼女はその切っ先を真っ直ぐに当真へと突き付けた。

ヒュンッ!

「貴様は…」

ツヴァイの剣の切っ先に触れた当真の前髪が、パラリ…と地面へ舞い落ちる。

「やってはならぬ事をしたっ!」

その眼差しは、まるで獲物を前にした狩人のように細められていた。彼女はそのまま、ジャリィッ! と足元を踏み締めると狩人さながらに当真(エモノ)の前に立つ。

「禁忌に触れし者よ」

そして彼女より、当真に対する判決が言い渡された。

「しばらくの間、お前の右手を使えなくしてやるっ!」

そう言うとツヴァイは、ジャキッ! と当真に対して剣を振り上げる。

「いっ!?」

それを見た当真は、バッ! と脱兎の如く逃げ出した。

「何処へ行く? 逃げるなっ!」

「うわあぁーっ!」

ビュンッ、シュパッ!

剣を振り回して追い掛けてくるツヴァイ。当真は必死になって彼女から逃げ回る。

ヒュバッ、ビュンッ!

「避けるな! 手元が狂うだろっ!」

「おわっー!」

悲鳴を上げて逃げながらも、二人に向けて当真は苦し紛れにこう叫んでいた。

「もうっ、お前等なんかっ! 絶対にネタにして(使って)やらんわっ!!」
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