第8話 舞い降りた翼…Zwei①
文字数 2,494文字
驚きと共に吐き出した自身の呼気。それが部屋の壁に当たり、跳ね返って自分の耳に届いた。
気が付くと当真は一人、真っ白な部屋の中にいた。
最初、当真はのん気にもそんな事を考えていた。彼は、そのままボーッと天井を見上げて、知らない天井だ…というあの台詞を口に出そうか、出しまいか、と迷っている。
しかし、不意にビクッ! と身体が震えて、大事なことを思い出す。
彼は切羽詰まって、部屋の中を右往左往してしまう。そんな当真に、
「ステータス画面を開きます」
という声が彼の頭の中に響いた。ヴォン…という起動音がして、当真の目の前に青色の画面が浮かび上がる。
その画面の一番上には、水森当真と書かれていた。名前の下にはレベル15。そして、SP0と書かれている。
「知識の注入を開始します」
妙な単語を耳にして、当真は抗議の声を上げる。しかし、聞き入れては貰えなかった。
「終了しました」
そして、当真の口から納得したような声が漏れた。
「これにてレベルアップを終了します」
アナウンスに礼を言うと、彼は大きく息を吐き出す。当真はさっきの知識注入で、このレベルアップのシステムの事や、自分が置かれている状況。そして、現在学園で起きている、大まかな事態を把握することが出来た。
ここが日本ではない事や、自分達が学園ごと異世界へ転移してしまった事。ここには、ゴブリンやオークといった魔物達がいて、人と敵対している事など。
綺麗事は一旦置いておく。今は生きる為に戦わなければいけない。その事を当真は理解し納得していた。
コツコツ…先程の声と共に、後ろから足音が近付いてくる。
コツコツ…その気配は、一旦当真を通り過ぎると、その場でピタリと立ち止まった。
当真はポカンとして、目の前の女性を見つめていた。
吸い込まれそうな青い瞳…透き通るような白い肌…そして、背中まで伸ばされた綺麗な青い髪…彼女はスラリとした、モデルみたいな体形をしている。背は当真より、頭一つ半は高いだろう。
北欧の妖精…そんな言葉が、彼の頭の中に浮かんだ。現実離れした美しさを持つ女性が自分の目の前にいる。しかし、彼女はもう一つだけ、現実離れした要素を持っていた。
それは第一作の発売から、すでに20年以上の時が経過している作品だ。しかし、未だ一部にコアなファンを持つことで知られる、某有名ゲーム。
『ヴァルキリー○ファイル』
彼女はそれに出てくる、主人公のような
フリーズしてしまった当真を見て、彼女は呆れた風な表情を浮かべている。
間抜けと言われて、何となく納得してしまう当真。そう言えば確か、システムから注入された知識の中に、少しだけこの手の話があったはずだ。
当間はレベルアップ時に、召喚士をメイン職業に選択していた。つまり、彼女は自分の
彼女の言葉に、当真はコクンと素直に頷いて見せる。
ニヤ付いている当真を見て、彼女が声を掛けてくる。しかし、相手が話している時に別の事を考えていれば、当然話の内容は頭に入ってこない。
図星を指されて、彼はクリビツギョウテン状態となる。
焦りまくる当真。思春期の少年は、秘密にしているはずの心の内を指摘されると、動揺を隠せなくなるのだ。その様子を見て、やれやれ…と言った感じで彼女は口を開いた。
彼女の言葉に、当真は思い出したように大声を上げる。