第15話 胸熱の少年②
文字数 2,683文字
コツコツ、コツコツ…
そこで、オーク達は互いに相手の肩や頭を踏み付け合いながら、なんとか落とし穴から脱出しようと、穴の中でジタバタしていた。
やがて、一匹のオークが落とし穴を登り彼女の足元へ顔を覗かせる。
即座に放たれた鋭い一撃を顔面に受けて、オークは再び落とし穴へ落ちていった。
疾風のような一撃でオークの顔面に風穴を空け、ツヴァイは敵を落とし穴へと叩き落とす。彼女は落とし穴にゆっくり近付くと、おもむろにその中を覗き込んだ。
一方的にオークを屠ったツヴァイ。彼女はとてもご満悦の様子だ。その顔のニヤニヤが止まらない。
そう言って、チラリと彼女は当真達が逃げた方向へ視線を走らせた。
彼女はソワソワとして待ち切れない。
そう言うと、じっとしていられなくなったのだろう。彼女は落とし穴を離れて斜面を駆け下りていった。
全身に、アインの走る振動が伝わってくる。真横に抱えられた状態の当真は、揺れまくって目が回りそうになっていた。
そこへ、当真達を追ってきたツヴァイが遠くから声を掛けてくる。何が楽しいのか、彼女は能天気にもはしゃいでいた。
落とし穴に落ちて、動けなくなっている三体のオーク。そこを見逃さず、素早く駆け寄ったツヴァイがトドメを刺す。
剣を仕舞い、彼女は嬉しそうに高笑いをしていた。
パカパッパッパッーパッパパーン!
「レベルアップしました」
「レベルアップしました」
そして、当真の頭の中にレベルアップを告げるファンファーレが鳴り響いた。
そう言うとツヴァイは腕を組んで、
と遠い目をする。その横でアインが、
六体のオークを狩り終えて、沢近くの拠点に戻ってきた当真達。三人は今後の方針に付いて話し合っていた。
腕組みをしたまま、ツヴァイはそう言った。種族的にゴブリンよりもオークの方が強い。そんな強力な敵が大勢たむろする裏山に拠点を置く当真にとって、戦力の強化は急務だった。
難しい顔をして話すツヴァイと、その横で黙ってうんうんと頷くアイン。その様子を見ていたら、
言われるままに、当真は2人にSPを振り分けようとするが、
チョイ、チョイチョイチョイ…
何やらアインがアピールをしている。
ツヴァイの言葉にアインは頷いて当真を見る。
SP1を胸当てへ割り振ると、フワッとした光が、胸当てから放たれて消える。
同様にSP1をツヴァイの剣に割り振る。
『ぺたっ』
『ぺたぺたぺたぺた』
上機嫌で話すツヴァイ。アインはその横で、ずっと強化された胸当てを触っている。
『ぺったぺった、ぺたぺた…』
そんな事を考えながら、当真はジーッとアインの胸元を凝視していた。十代真っ盛りの彼は、ある重要な事実に思い当たっていたのだ。