第14話 胸熱の少年①
文字数 2,000文字
約3ヶ月を掛けて掘った落とし穴。その前に水森当真は立っていた。
落とし穴は山の斜面にある為、こうして立っているだけでも足が疲れてくる。うだるような暑さの中で、当真はひたすら待っていた。
後ろで佇んでいるヴァルキリーに尋ねてみるが返事はない。
ドス ドス ドス ドス ドス ドス…
そう当真がボヤいていると、山の上の方から複数の足音が聞こえてきた。
当真は嫌な予感を覚えて、山の斜面を見上げる。先頭にいるのはツヴァイだ。軽快な動きで追っ手を翻弄している。それは良いのだが、
重い足音を響かせて、こちらにやって来るのはオーク達だ。何故か6体もいる、落とし穴の定員は3体なのに…当初3人で話し合った内容とずいぶん違う。
そうツヴァイに言われた当真は、腕を組んで考え込む。どうやら当真が最初に思い付いた、オークを一体ずつ仕留めて地道にレベルアップをしていく、という作戦は使えそうにない。
そこで当真は、
と言って彼女達に作戦を提案する。
その時、当真の話を聞いていたツヴァイの瞳がキラリと輝く。
彼女は腕を組み大きく頷く。
ツヴァイは、トントンとつま先で地面を蹴ると、一気に山頂目指して走り出した。そして、あっという間にその後ろ姿が見えなくなる。
当真は落とし穴の上に網を広げると、そこに地面に落ちている枝やむしった草を被せて、カモフラージュを施してゆく。
そう当真が訝しんでいると、サッ! とツヴァイが道から逸れて、木々が生い繁った森の中へと姿を消した。
オーク達は、彼女が消えた事に気付いていない様子だ。というよりも、こっちをロックオンしているように見える。
ドス ドス ドス ドス ドス ドス…
真横に抱えられながら、後ろの様子を見ていた当真。
彼の目に、オーク達の半数が落とし穴に落ちていったのが映った。
ドス ドス ドス…
アインが斜面を跳んで、追って来る残りのオーク達との距離を一気に稼ぐ。彼女はそのまま、グングンとスピードを上げて山を駆け下りていく。
当真が驚いていると、もう落とし穴が見えなくなっていた。当初の予定とはだいぶ違うが、狙い通りに3体のオークを落とし穴に落とす事が出来た。これはこれで、結果オーライというやつだろう。
ドス ドス ドス…
そして距離は開いたが、相変わらずオーク達の大声が聞こえてくる。そんな中、当真は心の中でツヴァイに呼び掛けた。