第6話 異世界サバイバル…壊れゆく日常④
文字数 2,028文字
見れば、春奈はすっかり取り囲まれてしまっていた。彼女は現在、グラウンドをグルッと囲むようにして植えられた木々の間を走っていた。その周りでゴブリン達が、ギャーギャーと鳴いている。
ゴブリン達も学習をしたのだろう…力を付けた彼女を相手に、マトモに行っても跳ね返されてしまう。狩りの方法を変えなければいけない。ゴブリン達はその事に気付いたのだ。
現在ゴブリン達は、幾つかの集団に分かれて、春奈を遠巻きに包囲している。そのやり方は、彼女に言わせればただのストーカーだった。
彼女は間延びした声で、ゴブリン達に呼び掛けるが返事はない。どうやら、奴らは聞く耳を持っていないようだ。
やれやれ、といった感じで春奈は頭を振った。この手のやり方をされると、戦いが膠着してしまう。正直、彼女には打開策が思い付かない。
困った彼女は、敵にストーカー行為を止めるように呼び掛けてみた。まあ、それで止めるような相手ではないのは、分かっているけど…。
人はその人生において、3回のモテ期があるという。しかし、春奈は今まで男性とは縁の無い生活を送ってきた。
各集団の存在が
ひとつの集団に付き、大体ゴブリンが4、5匹いる。ざっと気配を探ってみたが、半径500メートル以内に50匹以上いるみたいだ。春奈が動く度に、そいつらがゾロゾロと後を着いてくる。
レベルアップが進んでいくと、様々な機能が解放されるという。きっと、ショップのような機能もあるに違いない。
色々と便利なアイテムが手に入るはずだ。しかし、今は
今のところ、春奈に目立った負傷箇所は無いけれど、大きなダメージを受ければ、あの数には抗し切れなくなる。動くなら今の内に動くべきだ。
ゴブリン達は春奈が押せば下がり、逆に引くと追ってくる。こうなると、彼女は敵を攻めあぐねてしまう。そして時間を追うごとに、形勢はゴブリン側に傾いていく。
春奈の周りに、他の集団がどんどん集まり始めていた。奴らはそのまま数の力で、彼女を飲み込もうとする。
暖簾に腕押し…というコトワザが、春奈の脳裏をよぎる。無理にこのやり方を続ければ、先にこちらがスタミナ切れを起こすだろう。
そう言うと、彼女はゴブリン達を迂回しながら、女子寮を目指してみたが…。
春奈は額に手を当てて、はあ…とタメ息をつく。一方、春奈をホブゴブリンの元に追いやる事に成功したゴブリン達は、
と口々に叫び声を上げていた。
ゴブリン達の叫び声が、彼女にはそんな風に聞こえてくる。