第29話 無自己

文字数 414文字

自分なんて無いんだよ
自分が自分を意識するのは
意識が意識しているだけで
その意識は、自分の意識ではないんだよ

これを食べて、美味しい、不味い
それは舌がそう感じているだけで
自分が感じているのではないんだよ

痛いもかゆいも
皮膚やその箇所がそう感じるのであって
自分が感じているのではない。

将来の不安も過去の後悔も
頭が考えているだけで
その頭は自分のものではない。

身体の中の臓器と同じで
ひとつひとつ、独立してありながら
つながっているもの。

目、鼻、口、耳…手、足、指…
心も、ぜんぶ、寄せ集めで
自分のものでは、ないんだよ

「もし自分のものだったら
自分の思い通りに動くだろう
心も、こんなに
自分を苦しますことはないだろう」

感じる自分でないものに、
ない自分がとらわれるから

自分があるように思えてしまう。

無、

無そのものになりたいネ
もともと、無だったんだから

そう、その無に
帰るまで
束の間の宿に
今、泊ってる

ひとりにひとつ、
ひとつにひとりの

だいじにしたいネ、今の宿。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み