第30話 鏡の外にある自分

文字数 305文字

私の外にあるものは、
私を照らす鏡に過ぎない。

同じように、
外にある自分、自分、自分を抱えた人、人、人から見れば
私も、彼らを照らす鏡に過ぎない。

「明るくなくっちゃ、私らしくない」
彼女は言う。
「オレらしく、バカみたいに行こう」
彼が言う。

彼らの「私らしく・オレらしく」は
人を介して現れた「自分らしさ」だ。

「明るくない」人がいて
「バカじゃない」人がいて
そこから出てきた「自分らしさ」だ。

これが自分らしい、と思える自分は
人の鏡なくして出てこない。

でも
きっと、あったんだ
人を介する以前に

自分というものは
あったんだ

その頃の自分
もう記憶の外だけど
手つかずだった自分の頃に
鏡のない、そのままの自分であった頃に

帰りたいと思うのだが。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み