第27話 水と砂漠

文字数 237文字

水が砂を食っているのか、
砂が水を飲んでいるのか、
ぼくには分別がつかない。

ただ、見えていた水がなくなったので
砂に沁み込み、
水が消えたように見えた。

すると今度は、
水がほんとうにあったのか、
そんな疑いが頭をもたげた。

見えていたものがなくなった。
しかし、砂が水を吸い込んで、
水は砂と同化しただけのようでもあった。

蜃気楼だ、とも思える。
でも、本当に見えたのは事実だ。

「だから蜃気楼だった」
「だから本当だった」
ふたつの声が地に聞こえ、

「どっちも、同じだよ」
ひとつの声が、天から聞こえた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み