第5話 ダンジョン探索でのトラブル

文字数 2,773文字

          ※



 転移でサクッと移動して、俺たちはダンジョンの前にやってきていた。


「……人間界にもダンジョンがあるのね」

「モンスターのレベルは、お前の住んでるところに比べたら大したことないけどな」

 ダンジョン――人間界に存在する地下迷宮がそう呼ばれている。
 古の時代から存在しているとされており、人間界に舞い降りた神々の創作物などとも呼ばれているのだが、現代ではモンスターや盗賊たちの巣窟となっている。

「……まぁ、あの辺りは邪神の気に触れて気が狂ってるモンスターも多いからね。
 ラスの友達を探すのよね?」

「ああ」

 フィリアが口にした俺の友達というのは大賢者のことだ。
 冒険者になり立ての頃からの知人と説明したところ『友達』という解釈をされたらしい。
 親しくしている為、わざわざその部分を否定しようとは思わけないけれど。

「入るぞ。
 邪神(おまえ)なら大丈夫だと思うが、油断はするなよ」

「ええ!
 どんな化物が出たとしても、ラスには牙一本も触れさせないわ」

「いや……俺じゃなくて自分の心配をだな……」

「じゃあ行きましょう!
 ダンジョン攻略なんて久しぶりだから、なんだかワクワクするわ~」

 意気揚々とフィリアはダンジョンの中に入っていた。

(……大丈夫だろうか?)

 いざとなったら守ってやるつもりだが……少し不安に思いながらも、俺はフィリアの後を追った。



            ※



「わきゃああああああああああっ!?」

 それは、ダンジョンの探索を初めてから数分程度で起こった悲鳴だった。
 当然、声の主は邪神フィリアだ。
 今、トラップに引っかかって天井に宙摺り状態にされている。

「ら、ラス~、助けて~!」

 ブラブラと揺れながらフィリアは救いを求める。

「わかってる。
 今助けるからあまり暴れ……あ〝!?」

 俺は思わず腹から変な声を出してしまった。
 だって、フィリアの身体を拘束していたのは――。

「え!? こ、こいつ――ベタシュワスライムじゃない!?」

 そう。
 何らかの拘束具ではなく、モンスターだったのだ。
 ちなみにベタシュワスライムの特性は――物を溶かすこと。

「あっ!? ふ、服が……」

 フィリアの美しく豊満な肉体が徐々に晒されていく。
 さらにベタシュワスライムは、まるで意志でもあるのかのように、女性のセックスアピールである部分を包み込んでいく。

「きゃっ……こ、こいつ、変なところ触るんじゃないわよ!」


「ぁっ……」

 彼女の肢体を見ただけで、俺は全身が熱くなり蝕まれるような感覚に襲われた。

(……マズい)

 また邪神の呪いが発動仕掛けているようだ。

(……動けなくなる前にフィリアを助けなくては……)

 モンスターを倒すことは容易だが、フィリアを傷付けるわけにはいかない。
 その為には、スライムだけを上手く消滅させる必要がある。

(……なら)

「――完全削除」

 俺は魔法を消滅させる『魔法』を使った。
 一般的なモンスターに効果はないないが――。

「っ!?」

 ダンジョンに多く存在するモンスターでもあるスライムは魔法生物だ。
 ぷるっと、反射的にスライムが震えたかと思うと一瞬で消滅した。

「きゃっ」

「――っと」

 拘束が解除され落ちて来るフィリアを受け止める。

「ラス~!
 助けてくれるって信じてた」

「ま、待て……まずはその服を……」

 素肌が晒けだされた彼女の姿はあまりにも魅力的で目に毒だ。
 抑えろ。
 精神力で呪いを抑え込め。
 ここはダンジョンだぞ。
 万一……呪いが発動したら――ここで『やる』ことになるんだぞ!?
 もしそんな状態でモンスターが現れたらどうする。

「発情しちゃいそう?」

「だ、大丈夫だ……」

「うそだよ。
 だって……ラス辛そうだもん……」

 不安そうに、フィリアは上目遣いで俺を見つめる。
 だが、もし心配しているのなら早く肌を隠してほしい。
 このまま彼女を抱きしめていたら、本当にどうなるかわからない。
 そう思い俺は腕の中の邪神を下ろす。
 が、それが失敗だった。
 抱き止めて顔だけに目を向けているうちは大丈夫だったが、衣服が解けてしまっているせいで、蠱惑的な肢体が完全に俺の目に映し出されてしまったのだ。

「……ぐっ」

「ラス!?」

 頭がクラクラしてきた。
 熱に浮かされるみたいに視界がぽ~っとしてくる。

「……ごめんね、ラス。
 あたしが呪いなんて掛けたせいで……あ、あたしがなんとかするから……んっ……」

「!?」

 フィリアが俺の唇を奪った。
 彼女の舌が俺の口に侵入して、舌を絡めてくる。

「っ……はぁ……んっ……」

「ぁ……」

 流されるままに俺たちは濃厚なキスを繰り返す。
 次第に抑えきれぬほどに下腹部が熱くなっていく。
 もう完全に思考が定まらない。

「ここも……苦しそうだよ」

 唇を離したフィリアが、俺の下半身に手を伸ばす。
 そしてベルトを外してきた。

「フィリア!!」

「あんっ……」

 俺は彼女を抱きあげた。
 下着が解けてなくなっているフィリアの大切な部分に――……。
 そして――。

「あっ!? あんっ、好き、ラス――好き!
 んっ、んっ、ふあっ……もっと、もっといっぱいしてえっ、もっと、いっぱいイかせてぇっ――んあっ!?」

 パンパンパンパンパン――と、人肌がぶつかり合う音と共に、ダンジョンの中はフィリアの甘い嬌声で満たされたのだった。



        ※



「……らしゅぅ……だいしゅきぃ……」

 蕩けたような顔で、フィリアは俺の腕の中で幸せそうに項垂れている。
 自分の身を呈して、俺を助けようとしてくれたフィリアの想いを嬉しくもあるが……。
(……またやってしまった)

 彼女を抱きしめながら、俺は自責の念に駆られていた。
 しかも今は大賢者の捜索に来たというのに……一体、何をやっているのか。

「……ぁ……い、行かないと、だよね?」

「動けるか?」

「う、うん……あたしだって、あなたほどじゃないけど、強いから」

 なんとか立ち上がろうとするフィリアだが、膝がガクガクになっていた。
 それに服が……そうだ。
 俺は羽織っていたコートを脱いで、彼女に羽織らせる。

「とりあえず……それを着ててくれ」

「うん……ぁ……ラスの、匂いがする」

「く、臭かったか?」

「ううん。大好きな人の匂い」

 そんなフィリアの言葉に再びクラッとしそうになったのだが……これは多分、呪いのせいではないだろう。
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