第14話 フィリアと……。

文字数 2,042文字

          ※



「……――!?」

 目を覚ますと、俺の胸の中でフィリアが眠っていた。
 どうやら俺たちは繋がったまま眠っていたらしい。
 そして昨夜の記憶がフラッシュバックされていく。

(……そうか。俺は部屋にきたフィリアを……)

 寝ている間も、彼女は俺を優しく抱きしめてくれていたようだ。

「ぁ……ラス、目が覚めたんだ……」

「フィリア……」

「もう平気? 痛いところとか、苦しいところはない……?」

 一晩俺に抱かれ続けたせいで疲弊しているだろうに、フィリアは俺を気遣うような優しい笑みを向けた。

「すまない。……俺よりもお前のほうが……身体は大丈夫か?」

 俺はただ――情欲を発散させる為だけに彼女を抱き続けた。
 強く強く、フィリアを壊してしまうんじゃないかってくらいに。

「うん……あたしは全然平気よ!
 ラスがいっぱいあたしを愛してくれて……それで気持ちよくなってくれて、嬉しかったから……」

「バカ……俺は無理矢理……」

「激しかったけど、優しかったよ、ラス。
 呪いで辛かったはずなのに……あたしのこと、気遣ってくれてるのがわかったもん」

 昨日のことを思い出したのか、フィリアの頬が紅色に染まる。
 そんな彼女を見ているだけで俺の下腹部が熱くなっていく。

「ぁ……ラスのエッチ」

「せ、生理現象だ」

 ニヤッと、意地悪な笑みを浮かべるフィリア。
 硬くなったものが彼女の大切なところに当たっている。

「あたしとエッチなこと、したんでしょ?」

「ぅ……」

 したくない……と言えば嘘になる。
 いや正直に言えば――今直ぐにでもフィリアがほしい。

「ラス……我慢しないでよ。
 あたしも……あなたが欲しいから……」

「っ――フィリア!」

 俺はフィリアを抱きしめた。
 それから、彼女の髪に触れながら互いの唇を味わい――そして俺は彼女の全てを味わい続けた。
 呪い以外で……フィリアを抱いたのはこれが初めてで……彼女を愛おしいと思う気持ちが溢れて……情事が終わった後も、その想いは止まらなかった。



         ※



 俺達は互いを求め合った。
 ベッドで果てたあとも、備え付けのシャワーを浴びている間も……どれだけ抱き続けても、フィリアが愛しいという気持ちは止まらない。
 だが……このままずっと彼女とこうしているわけにはいかない。

「はぁ、フィリ、ア……っ……そろ、そろ、時間が……」

「あんっ……っ――んっ!? ら、らしゅが、ずっ、とぉ……んぁ……も、もとめてくりゅか、りゃ――あぁっ」

 結局、俺たちはどちらも理性が効かなくなってしまっていて……結局、俺たちは汗を流して部屋に戻ったのは、2時間以上もあとのことだった。



        ※



 ――コンコン。
 ノックの音が聞こえた。

「ラス、入るよ」

「ルインが来たのだわ」

 どうやら準備を終えてレナァとルインがやってきたようだ。

「……どうぞ」

 許可のあとに部屋が開く。
 二人がそれほど朝が強くないお陰もあって、今はもう昼に近い時間になっていた。

「ラス様、お腹が空いたのだわ。
 一緒に食事にしましょう」

 バタバタとルインが俺に近付いて来た。
 が、その足が途中で止まる。
 
「ぅえ!? な、なんでそいつが寝てるのかしら!?」

 魔女娘の言う【そいつ】というのは、俺の部屋のベッドで寝ているフィリアのことだ。 ルインの驚愕とは正反対に、レナァは冷静に状況を観察している。

(……魔法で片付けは済ませたが……)

 ずっと性交を続けていた為、男女がまぐわった匂いが部屋に満ちてたが……今はそれもしっかりと消し去ってある。
 しかし、ルインはともかくレナァにはバレているだろう。

「フィリアったら、ラス様の部屋に忍び込んだのね!
 しかもこんなに幸せそうに眠っていて……どんだけ寝坊助なのだわ」

「……まぁ、【色々】とあったみたいだね。
 少し寝かしておいてあげよう」

 溜息の混じりのレナァが、俺にジト目を向ける。
 だが事情を察してくれたのか、フィリアを寝かせておいてやれと言っているのだろう。
(……兄代わりとして……そういうことがあったと年下の幼馴染に知られるのは気恥ずかしいが……」

 しかし今はフィリアを寝かせておいてやりたい。
 俺の為に……彼女はずっと答えてくれていたのだから。

「それがいいのだわ。
 こいつのぶんはあとで持ってきてあげましょう」

「ああ、そしてくれると助かる」

「じゃあ行くとしようか」

 ルインが俺の手を引いて、レナァが俺の服の裾を掴む。

「な、なんだ?」

「このくらい……いいでしょ」

 拗ねたように言うレナァと。

「わたしが、ラス様をエスコートするのだわ」

 元気いっぱいのルインに連れられて、俺は遅い朝食に向かうのだった。
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