第18話 委ねられた選択肢

文字数 2,219文字

「解呪神様……と呼べばいいのか?」

「は、はい。
 解呪神のレミアンです。
 レミアンと呼んでいただければと……」

 ペコリと頭を下げるレミアン。
 ルインと同じくらい小柄ながら身体の成長具合はまるで違う。
 身体を少し動かすだけで、二つの暴力が激しく揺れる。

「へぇ……なかなかね」

「ふ、ふん! あんなの、ただの、ただの脂肪……っ、ぐぬぬぬぬ!」

 フィリアとルインの視線は、レミアンの胸に集中している。
 特に魔女っ娘のほうは悔しそうに歯を噛み締めていた。
 ルインも十分に美少女と言っていい容姿だが、そんな彼女と比べても神々たちはずば抜けている。
 容姿に関する欠点など皆無であり、目を奪われるほどに美しい。
 正直、人間が張り合うべき相手ではないだろう。

「とりあえず、こっちも自己紹介からだな」

 話を変えるべく、俺は口を開いた。

「さっきも伝えたが、俺はラス・アーガイルだ」

「あたしは邪神フィリアよ」

「……ルインなのだわ」

 二人も軽く自己紹介を済ませる。

「ラスさん、フィリアさん、ルインさん……。
 と、というかフィリアさん、や、やっぱり邪神さんなんですよね……な、なんでここに来たんですか?」

 おどおどと脅え出すレミアン。
 神と邪神――二つの種族は敵対関係にある。
 その為、レミアンがフィリアを強く警戒してしまうのはおかしいことではない。
 何より……彼女は戦闘が得意なタイプの神様ではない為、万が一にも襲われたらどうしようと考えているのだろう。

「あなた、呪いを解呪する力を持ってるのよね?」

「は、はい……大抵の呪いに関しては……」

「なら、ラス様の呪いを解いてほしいのだわ」

 用件をサクッと説明すると、レミアンは安堵の表情を浮かべた。

「そ、そういうことだったんですか。
 か、解呪したらすぐに帰ってくれますか?」

「勿論だ。
 騒がせて悪かったと思ってる。
 だが……こっちも緊急でな」

「かなり危険な呪いなのですね。
 わかりました。
 では、まずは城までご案内します。
 ベッドもそこにありますから、解呪はそこで行いましょう」

 レミアンがそう口にした瞬間――ブワッ――と、景色が揺らいだ。
 幻術が解除された瞬間、視界の先には見上げるほどに巨大な城がそびえ立っていた。

「ここで直ぐにはできないのか?」

「そうよ、ぱぱっとやっちゃってよ」

「ぱぱっと!? し、しかも、ここで……ですか?
 それはちょっと……恥ずかしいです……」

 何故か解呪神はイヤイヤと頭を振りながら顔を真っ赤に染めていく。

「恥ずかしい?」

 何がだ?
 率直に疑問が浮かんだ。

「解呪って……恥ずかしいことなのかしら?
 魔法でサクッとできるんじゃないのだわ?」

「ま、魔法も使いますけど……そのわたしの身体に流れる神力(しんりょく)を伝える必要があるんです……。
 魔法と神力の相乗効果で呪いを解呪するので……」

 どうにも要領を得ない。
 レミアンにとって、伝えにくいことなのだろうか?

「具体的にはどんな方法なんだ?」

「か……を……す」

 混沌(カオス)?
 まさか、呪いには呪いに対抗するということか?

「カオスってなんなのだわ?」

「あたし知ってるわよ。
 邪神にいる悪魔のことでしょ?」

「ち、違います!
 か……かかかかか身体を――重ねるんです~!」

 どもりまくりなレミアンの声が天上の空に響き渡った。
 そして彼女の全身がお風呂上りのように茹で上がっていく。

「……は?」

 想定外の発言に、間の抜けた声が漏れてしまった。 
 か、身体を重ねるって、つまり――。

「そ、そそそそそそそれって、ラスとあんたが……セ――」

 おい待てフィリア。
 それ以上はいけない。

「へへへへへ変態神なのよ!
 ら、ラス様! こいつから離れたほうがいいのだわ!」

 見目麗しい超絶美女の解呪神が変態扱いされてしまう。

「い、言わないでください~~~~~~~!」

 おい神様、その自覚があったのか。
 そこは「違います~~~~~!」とかじゃないのか!?
 だが……解呪の手段が性交渉なのだとしたら、一部、嫌悪感を持つ者がいたのかもしれない。
 それで責められ続けて臆病になってしまった……とか?

「ほ、他に方法はないのか?」

「の、呪いの強さ次第になりますが……皆さんのよな実力者が、わざわざ天界に来られるほどのものですよね?
 そうなると……」

「あなた、ラスとセックスしたいだけじゃないでしょうね!」

「はっきり言うなっ!」

 フィリアの頭を掌で軽く叩く。

「で、でも……ラスの全部はあたしのだもん!」

 言いながらフィリアが上目遣いを向けてくる。

「フィリアのなんて認めないけど、ラス様が他の女と、その……するのは、イヤなのだわ……」

 ルインの言葉に、フィリアが頭を立てに振る。

「わ、私は構わないのですけど……その場合、呪いは解けないままですけど……?」

 おそるおそる確認を取るレミアン。

「うぅ……そ、それは……」

「な、治ってもらわないと……困るのだわ……」

「で、では、その……解呪します?」

 三人の美少女たちの視線が俺に向く。
 どうやら最後の選択権は俺に委ねられたようだ。
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