第8話:サリン事件、政治家の不祥事、金融界の膿とテロ

文字数 2,016文字

 事件から2日後の3月22日に、警視庁はオウム真理教に対する強制捜査を実施し、事件への関与が判明した教団の幹部クラスの信者が逮捕された。その後、林郁夫の自供がきっかけとなって全容が明らかになり、5月16日に教団教祖の麻原彰晃が事件の首謀者として逮捕された。地下鉄サリン事件の逮捕者は、40人近くに及んだ。柴橋純代は、4月1日、沼田市内の産婦人科病院に入院した。そして4月3日、男女の双子の赤ちゃんを出産し柴橋和利と柴橋和代と名付けた。

 出産後は、2人の住む、アパートに、柴橋の母と星崎の母が、1週間交代で来てくれた。元気な泣き声で、乳の飲みも良く、すくすく育ったが、純代さんの食欲も凄かった。旦那さんの柴橋聡も以前にも増して仕事に真剣に取り組んでいた。
田沼里恵は、その様子を見て、私も結婚したいなと、小声でつぶやいた。10月、大和銀行ニューヨーク支店に本社採用嘱託行員となった井口俊英は、変動金利債権の取引で5万ドルの損害を出す。

 損失が発覚して解雇されることを恐れた井口は、損失を取り戻そうとアメリカ国債の簿外取引を行うようになった。
井口は、書類を偽造して損失を社内でも限られた人間しか知らないシステムコードで隠蔽していたため、表面的には利益を出しており、上司の信用も増していった。大和銀行ニューヨーク支店の管理体制は、国債のトレーダーと支店の国債保有高や取引をチェックする人とが同一人物という不備があった。

 支店ナンバー2として実質的に支店業務を統括していた井口の不正は12年も発覚しなかった。1995年には、大和銀行の損失は、当初の2万倍以上に膨張し最終的に11億ドル「約1100億円」に膨れ上がった。1995年7月、井口は遂に不正による巨額損失を、藤田彬ら大和銀行上層部に手紙を送り告白した。事前の知らせに銀行上層部は、この損失に関して日本の大蔵省へ報告した。しかし米連邦捜査局はその手紙を読んでおり井口に面会を求めアメリカで捜査を開始。

 またアメリカ連邦準備制度理事会「FRB」への報告が、大蔵省からの報告から6週間後と後手に回り、アメリカ合衆国連邦政府から隠蔽「いんぺい」と判断される結果となった。大和銀行株主代表訴訟判決文よると大蔵省より事実発表を遅らせるよう指示があったと言われてるが、詳細は不明。しかし、この一連の出来事によりFRBが、かえって大和銀行に厳しい処分を下す結果をもたらした。1996年2月28日、大和銀行は司法取引に応じ16の罪状を認めた。

 当時の米刑法犯の罰金としては、史上最高額といわれる3億4千万ドル(「で約350億円」の罰金を払い大和銀行はアメリカ合衆国から完全撤退という厳罰が下された。1996年4月1日に、三菱銀行と外国為替専門銀行の東京銀行が合併して、日本最大規模の東京三菱銀行が、誕生した。正解の牛若丸と呼ばれた山口敏夫が、東京協和信用組合と安全信用組合という二つの信用組合の元理事長らは、高い金利で多額の預金を集めた。

 その預金を、自分たちが関係するリゾート開発などの関連会社に自己貸し、不良債権化させて回収が不能になった。十分な担保などを取っておらず、自分たちの利益のための融資だったと判断された。元理事長らは、捜査の過程で、山口氏の親族の会社にも不正な貸付があったことが判明し、山口氏は背任や業務上横領容疑などの共犯として逮捕、起訴され懲役3年6カ月の実刑判決が下り12月、背任容疑で逮捕された。その後、偽証など4つの罪に問われ実刑判決を言い渡された

 1996年になると、村沢は、連休になると沼田に帰ってきて、田沼里恵、柴橋聡、柴橋純代と会って飲んだり、ドライブしたりするようになった。そいて、沼田の周辺の自然の素晴らしさ、四季の移ろいを楽しんだ。そして、近い将来、自分が、食べていけるだけの資産ができたら、自然に恵まれた沼田に戻り信用でき、純朴な昔の仲間と余生を一緒に暮らしていきたいと考えるようになった。こうして1997年を迎えた。しかし、まだ日本の金融界の膿は、出きってなかった。

 1997年1月2日、午前0時、3等航海士が、西風20メートル、波高4.5メートルと報告。その後、2日2時、機関出力が低下、操船に困難を生じ3時頃、大音響とともに船体に亀裂が入り2番タンク付近で船体が分断すると同時に機関室に浸水が発生した。メル・ニコブ・バレリー船長は、3時40分に退船を決意し31名の乗組員は荒れる日本海を数隻の筏と救命ボートに分乗した。なおバレリー船長は、自らの意思で救助を拒み、後日、福井県内で遺体で発見された。

 ナホトカは暖房用のC重油を約19000キロリットル積み、12月29日、上海を出港、ペトロパブロフスクへ航行中だった。その後船体は島根県近海で浸水により沈没し、分離した船首部分は漂流を始めた。なお、当時、日本海側では年末寒波が襲来し、台風並みの強風であった。
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