【未所持1】「ルールブック未所持」の何がいけないの?
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競技スポーツ、例えば野球やラグビーフットボールには膨大なルールがあるわけだけど、選手一人一人がルールブックを持ってプレイしているわけではないよね。
中島弘が「磯野ー! 野球やろうぜ!」と言うとき、彼が携えているものはバットとグローブであって、公認野球規則ではないわ。
こんな感じで、世の中にあるゲームの多くは、「ルールブックを持っていなくてもプレイできる」のよ。一方、TRPGを「ルールブックを持っていないとプレイできない」ゲームだとするなら、ゲームとして特殊であると認めねばならない。
そういう可能性はある。TRPGのルールブックが「ルールが書かれたもの」だとするならば、ルールを知っている人がプレイする際には必要ないことになる。他のゲームの経験がある人がそう類推してもおかしくはないわ。
TRPGのルールブックは、実は「ルールが書かれたもの」だけではなくて、「ツール」でもあるということね。実際、ランダム表のような、ツールに近い情報が記載されていることもあるからね。
ただ、バットやグローブとは決定的に違う要素があるわ。
ええ。それが一つ目。バットやグローブは容易に複製できないけど、ツールとしてのルールブックにはそれができる。ここで「複製」は別の紙に複写するだけじゃなくて、読んで覚えるとか、そういう広い範囲の複製を含むことに注意してね。
TRPGのルールには、「調整」という働きかけがなされることがある。主にGMが、セッションの進行のためにルールの一部を省略したり、シナリオのために特別なルールを設けたりすることがあるでしょう。このことを「ゴールデンルール」などの名称で記載しているTRPGもある。
ボードゲームにもそういう面がある。ボードゲームのルール説明書って結構曖昧な記述があったりするんだけど、それでも巧みなプレイヤーは、「今回はこういうルールでやってみましょう」と調整していくことができる。そのときのプレイヤー同士で合意ができていれば、ルールは調整できるし、元の「ルールが書かれたもの」の記述は無視されることができる。
その元になるルールだって、「ルールが書かれたもの」を常に手元に置いておかなきゃいけないものなのかしら?
草野球をプレイしたことがある人は少なくないでしょうけど、みんな公認野球規則を読んでルールを覚えたわけではないでしょう。他の人がプレイしている様子を見たり、実際にやってみて場面場面で教わったりしてルールを知っていくのよね。
TRPGだったら、リプレイ文や動画がそれにあたるわけで。
納得がいかない、でも何に納得できないのかがわからない、という顔ね。
じゃあ、ここまでを整理して、いったん休憩にしましょう。
1)一般に、ゲームをプレイするとき、「ルールが書かれたもの」を持ってプレイはしない。
2)TRPGのルールブックには、「ルールが書かれたもの」だけでなく、ツールとしての役割がある。
3)しかし、TRPGのルールは調整可能であり、ツールとしてのルールブックを使用しないよう調整することもできる。